こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では、国家公務員の諸手当の内、広域異動手当について詳しく紹介していきたいと思います。
広域異動手当は全国転勤のある国家公務員ならではの手当になりますので、現役の国家公務員の皆さんはもちろん、これから国家公務員になられる方も是非参考にしてもらえればと思います。
本記事の内容は令和5年4月時点のものとなります。
広域異動手当の概要について
広域異動手当とは、官署間の距離等が60㎞以上の広域的な異動等を行った職員に対し、官署間の距離に応じ、異動等の日から3年間支給される手当になります。
では、広域異動手当について「一般職の給与に関する法律(給与法)」や「人事院規則9-121(広域異動手当)」などで定められる下記項目を見ていきたいと思います。
広域異動手当が支給される場合
広域異動手当が支給される場合は「給与法11条の8」で以下のように定められています。
下記距離がいずれも60㎞以上の場合
- 異動前の官署の所在地と異動後の官署の所在地との間の距離
- 異動前の住居と異動後の官署の所在地との間の距離
上記①②のいずれの距離も60㎞以上必要となりますので、どちらかが60㎞以下の場合は支給対象外となります。
東京23区から静岡地検に通勤していた職員が東京高検に異動になった場合
- 官署間の距離 :60㎞以上
- 住居と官署間の距離:60㎞以下
⇒広域異動手当は支給対象外
なお、②については60㎞以下でも通勤に2時間以上かかる場合は60㎞以上に相当すると認められています。
人事院HP「広域異動手当の運用について」参照
距離の算定方法については最も経済的かつ合理的と認められる通常の経路及び方法により算定されますので、直線距離は用いられません。
通常の経路及び方法とは徒歩・船舶・鉄道・バスなどの交通手段(※)のことをいいます。
※自家用車・航空機は除く
そして、広域異動手当の支給期間は、異動等の日から3年を経過する日までとなります。
広域異動手当の支給額・支給割合
広域異動手当の支給額については、以下の計算式で算定されます。
(俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額×支給割合
各項目を見ると、基本給である俸給の他に扶養手当等の他の手当も算定基礎額に含まれることが分かります。
- 扶養手当
配偶者・子・父母等の扶養親族のある職員に支給される手当 - 俸給の特別調整額
管理又は監督の地位にある職員(管理監督職員)に支給される手当
※専門スタッフ職調整手当は省略
そのため、結婚等で扶養親族ができたり管理職になると広域異動手当の支給額が増えることになります。

広域異動手当の支給割合は「給与法11条の8第1項」で異動距離に応じて以下のように定められています。
距離 区分 |
300㎞以上 | 60㎞以上 300㎞未満 |
支給 割合 |
10% | 5% |
60㎞以上から支給対象となり、300㎞以上となると支給割合が5%→10%に増えることになります。
再異動時の広域異動手当の取扱い
広域異動手当の支給期間中に広域異動手当の支給対象となる再異動をする場合がありますが、その場合の広域異動手当の取扱いは以下となっています。
再異動時と当初の広域異動手当の支給割合によって取扱いが異なる。
・再異動時 ≧当初
→再異動時の広域異動手当を支給
・再異動時<当初
→当初の広域異動手当を継続支給
つまり、二つの広域異動手当は併給されず、どちらか支給割合の高い方のみ支給されるということになります。
- 広域異動手当は60㎞以上の異動等を行った職員に対し3年間支給。
- 距離は最も経済的かつ合理的な通常の経路及び方法により算定。
- 支給割合は60㎞以上300㎞未満は5%、300㎞以上は10%。
では、次に、広域異動手当と他の手当との関係について見ていきたいと思います。
他の手当との関係について
広域異動手当の支給割合は他の手当額の算定にも影響しますので、広域異動手当が影響する他の手当について見ていきたいと思います。
支給割合が調整される手当
国家公務員の手当には、広域異動手当と同様に算定基礎額に支給割合を乗じる手当として下記3つの手当があります。
- 地域手当
官署間の距離等が60㎞以上の広域的な異動等を行った職員に支給される手当 - 特地勤務手当に準ずる手当
特地官署等への異動等に伴って住居を移転した職員に支給される手当
- 研究員調整手当
※研究員調整手当の説明は省略
これらの手当は、各種手当の支給割合をそれぞれ調整する手当になりますが、一番馴染み深い地域手当との関係は以下となります。
地域手当と広域異動手当の支給割合の大小によって取扱いは異なる。
- 地域手当 ≧広域異動手当
→地域手当のみ支給 - 地域手当<広域異動手当
→広域異動手当の支給割合の範囲で、地域手当と広域異動手当の両方を支給。
つまり、地域手当と広域異動手当の両方が支給対象となる場合は単純に両方支給されるというわけではなく、支給割合を調整するということになります。
広域異動手当の支給割合:10%
地域手当の支給割合 :10%→0%
- 異動1年目:地域手当 10%
広域異動手当 0% - 異動2年目:地域手当 8%
広域異動手当 2%
- 異動3年目:地域手当 0%
広域異動手当 10%
地域手当との関係については下記記事でも紹介していますので、合わせて見てもらえればと思います。

算定基礎額に加算される手当
国家公務員の手当には、算定基礎額に地域手当等(※)を加算する手当として下記2つの手当があります。
※広域異動手当・研究員調整手当を含む
- 期末手当
民間における賞与等のうち一定率(額)分に相当する手当
- 勤勉手当
民間における賞与等のうち考課査定分に相当する手当
期末・勤勉手当の支給額は、算定基礎額である期末・勤勉手当基礎額にそれぞれの割合を乗じて算定されますが、期末・勤勉手当額には地域手当等の月額が含まれています
- (俸給+専門スタッフ職調整手当+扶養手当※)の月額
- ①に対する地域手当等の月額
- 役職段階別加算額
- 管理職加算額
※勤勉手当基礎額には含まない
そのため、地域手当等の支給割合が大きくなると期末・勤勉手当の支給額が多くなるという関係になります。

時給を算定基礎額とする手当
国家公務員の手当には、「勤務1時間当たりの給与額」を算定の基礎額とする手当として下記3つの手当があります。
- 超過勤務手当
正規の勤務時間を超えて勤務した職員に支給される手当
- 休日給
祝日法による休日等の正規の勤務時間中に勤務した職員に支給される手当
- 夜勤手当
正規の勤務時間として深夜に勤務した職員に支給される手当
超過勤務手当等の支給額は、以下の計算式で算定されます。
勤務1時間当たりの給与額(※)×支給割合×勤務時間数
※(俸給月額+地域手当等の月額)×12/1週間当たりの勤務時間×52
支給割合や手当の対象勤務時間は各手当によって異なりますが、勤務1時間当たりの給与額を算定基礎額とする点は共通しています。
そして、勤務1時間当たりの給与額の算定には地域手当等も含みますので、地域手当等の支給割合が大きくなると超過勤務手当等の支給額が多くなるという関係になります。

- 地域手当 ≧広域異動手当の場合は、地域手当のみ支給される。
- 地域手当<広域異動手当の場合は、広域異動手当の支給割合の範囲で両方支給される。
- 広域異動手当が支給されると、期末・勤勉手当(ボーナス)と超過勤務手当等の単価が増える。
おわりに
今回は、国家公務員の諸手当の内、広域異動手当について説明してきました。
広域異動は大変ですが、その分、広域異動手当によって年収が上がりますので、自身のキャリアを考える際に是非参考にしてもらえればと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。