こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,私が検察事務官として実際に働いていた経験から,どうやったら検察事務官になれるのかについて,詳しく紹介していきたいと思います。
ちなみに,私のプロフィールの詳細については下記記事でご確認いただけますので,是非チェックしてみてください。

検察事務官のなり方
まず,検察事務官のなり方についてですが,簡単に説明すると以下のステップが必要となります。
- 国家公務員採用一般職試験に合格
- 各地方検察庁への官庁訪問・採用面接で内々定を貰う
検察事務官は国家公務員の一種になりますので,まずは国家公務員採用一般職試験(以下「国家一般職試験」)に最終合格しなければなりません。
そして,各地方検察庁への官庁訪問・採用面接を経て内々定を貰うことができると,晴れて検察事務官になることができます。
ちなみに,大学卒業者と高校卒業者の違いは国家一般職試験の違い(大卒程度か高卒程度か)だけになりますので,大卒も高卒も検察事務官への道のりは同じものとなります。
また,毎年どれくらいの人数が地方検察庁に採用されているのかについては,下記記事でまとめていますので,参考にしてもらえればと思います。

では,次に,国家一般職試験について詳しく見ていきたいと思います。
国家一般職試験の概要
国家一般職試験は,昔は国家二種と言われていた公務員試験の一種で,一般的に地方出先機関の職員を採用するための試験となります。
ちなみに,昔は国家一種と言われていた国家総合職試験は,いわゆる霞が関の官僚を採用するための試験となりますが,法務省では検察事務官の採用を行っていませんので,国家総合職として検察事務官になることはできません。
では,国家一般職試験の概要について,受験資格・試験日程・試験科目と配点をそれぞれ見ていきたいと思います。
受験資格
受験資格については,国家一般職試験の受験案内に詳しく掲載されていますが,ざっくり説明すると以下となっています。
- 大卒程度:30歳まで
- 高卒程度:卒業後2年以内まで
※在学生は受験年度に卒業見込み
大卒程度試験であっても,大学卒業が受験資格というわけではありませんので,31歳になるまでは誰でも検察事務官になるチャンスがあります。
試験日程
試験日程についても,国家一般職試験の受験案内に詳しく掲載されていますが,2022年度試験については以下となっています。
試験日程【大卒程度】 | |
3/18~4/4 | 受験申込 |
6/12 | 1次試験【筆記】 |
7/6 | 1次試験合格発表 |
7/8~ | 官庁訪問 |
7/13~7/29 | 2次試験【面接】 |
8/16 | 最終合格発表 |
8/16~ | 採用面接→内々定 |
10/1 | 採用内定 |
4/1 | 採用 |
官庁訪問は1次試験合格発表と2次試験の間にありますので,1次試験後に官庁訪問の準備を進めておく必要があります。
試験日程【高卒程度】 | |
6/20~6/29 | 受験申込 |
9/4 | 1次試験【筆記】 |
10/6 | 1次試験合格発表 |
10/12~10/21 | 2次試験【面接】 |
11/15 | 最終合格発表 |
4/1 | 採用面接を経て採用 |
高卒程度試験については,私自身が受験したことがないため,どのタイミングで採用面接が行われるのか把握ができていないです。
申し訳ございませんが,確認が取れ次第,更新を行います。
試験科目と配点
試験科目と配点についてですが,大卒程度と高卒程度で異なりますが,それぞれ以下となっています。
大卒程度 | 試験科目 | 配点比率 |
1次試験 | 基礎能力試験 (多肢選択式) |
2/9 |
専門試験 (多肢選択式) |
4/9 | |
一般論文試験 | 1/9 | |
2次試験 | 人物試験 | 2/9 |
大卒程度試験では,1次試験の専門試験の配点が高くなっています。
高卒程度 | 試験科目 | 配点比率 |
1次試験 | 基礎能力試験 (多肢選択式) |
4/9 |
適正試験 (多肢選択式) |
2/9 | |
作文試験 | 1/9 | |
2次試験 | 人物試験 | 2/9 |
高卒程度試験では,1次試験の基礎能力試験の配点が高くなっています。
国家一般職試験は,大卒程度・高卒程度で違いはありますが,対策をしないといけない科目が多いため,配点比率を意識した計画づくりが必要となります。
では,次に,一次試験【筆記】について詳しく見ていきたいと思います。
※以下は大卒程度試験についてのみ記載。
一次試験【筆記】対策
一次試験は,基礎能力試験・専門試験・一般論文試験で構成されていますので,各試験の試験科目や問題数などについて詳しく紹介していきます。
基礎能力試験
基礎能力試験についてですが,試験科目と問題数は以下となっています。
試験科目 | 問題数 | ||
一般知能 |
文章理解 | 現代文 | 6 |
英文 | 5 | ||
数的処理 | 判断推理 | 8 | |
数的推理 | 5 | ||
資料解釈 | 3 | ||
一般知識 |
時事 | 3 | |
自然科学 | 物理 | 1 | |
化学 | 1 | ||
生物 | 1 | ||
人文科学 | 日本史 | 1 | |
世界史 | 1 | ||
地理 | 1 | ||
思想 | 1 | ||
社会科学 | 法学 | 1 | |
経済 | 1 | ||
政治 | 1 |
基礎能力試験は全部で40問出題されますが,一般知能問題は5科目で27問と一般知識問題は11科目で13問となっています。
そのため,基礎能力試験の中での優先順位は一般知能問題の方が一般知識問題より高くなりますし,何よりすべての科目を対策することはほぼ不可能ですので,捨て科目は作る必要があるかと思います。
ただ,捨て科目の作り方についてはいくつか注意点がありますが,以下の記事で詳しく紹介していますので,是非参考にしてもらえればと思います。
https://moto-kensatsujimukan.com/liberal-arts-exam/
専門試験
専門試験については,全部で16科目80問出題されますが,その中から8科目40問を選択して回答するという形式となっています。
試験科目については以下となっています。
- 政治学
- 行政学
- 憲法
- 行政法
- 民法(総則及び物権)
- 民法(債権,親族及び相続)
- ミクロ経済学
- マクロ経済学
- 財政学・経済事情
- 経営学
- 国際関係
- 社会学
- 心理学
- 教育学
- 英語(基礎)
- 英語(一般)
専門試験の問題は年度によって科目の難易度にバラつきがありますので,8科目だけを準備するのではなく,余裕を持って多めに科目を準備をする必要があります。
また,専門試験の配点は基礎能力試験の倍と優先順位は高くなりますので,国家一般職試験以外の併願先でも使用する科目を中心に勉強するなど,戦術を立てて対策をしてもらえればと思います。
一般論文試験
一般論文試験は,年度によってテーマが異なりますが,一般的には社会問題に対する意見や解決策を求められる問題となっています。
年度別のテーマは以下となります。
年度 | 出題テーマ |
令和2年度 | 健康寿命の延伸 |
令和元年度 | キャッシュレス化 |
平成30年度 | 生産年齢人口の減少 |
平成29年度 | 観光立国の推進 |
受験年度の出題テーマを予想することは難しいと思いますので,基礎能力試験の時事対策で知識を蓄え,論文の書き方の型を修得するということが大事になります。
一般論文試験の回答には明確な正解がありませんが,ある程度の型でそれなりの字数を書ければ大丈夫かと思いますので,予備校の模試などで練習して対策してもらえればと思います。
では,次に,二次試験【面接】について詳しく見ていきたいと思います。
二次試験【面接】対策
二次試験についてですが,国家一般職試験の最終試験で,形式は面接が1回となります。
面接には事前に面接カードを書いて持っていく必要がありますが,質問は面接カード(以下に掲載)に沿って淡々と行われる印象ですので,普通の受け答えができれば足切り評価にはならないかなと思います。
面接カードの書き方や面接の注意点については,改めて別の記事で紹介いたしますので,また参考にしてもらえればと思います。
では,次に,官庁訪問・採用面接の概要について詳しく見ていきたいと思います。
官庁訪問・採用面接の概要
官庁訪問・採用面接についてですが,検察事務官になるための最大の難関であるため,一番力を入れて対策を練る必要があります。
というのも,地方検察庁から内々定を貰えるかどうかに国家一般職試験の成績は全く関係なく、官庁訪問で気に入られるかどうかが全てだからです。
では,官庁訪問と採用面接の概要についてそれぞれ紹介していきたいと思います。
官庁訪問
各地方検察庁への官庁訪問は,一次試験合格発表後に順次開催されることになります。
官庁訪問で訪問できる地方検察庁は,国家一般職試験区分にある地方検察庁を複数訪問できるため,検察事務官志望者は複数の地方検察庁を訪問することが望ましいです。
2022年度の官庁訪問の日程については,下記記事でまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

また,官庁訪問のやり方(形式・回数など)については各地方検察庁によって異なりますが,一般的な流れとしては,官庁訪問に行き,評価されれば次回の官庁訪問又は採用面接に呼ばれるという形になります。
また,地方検察庁から内々定を貰うタイミングについてすが,官庁訪問のルールでは国家一般職試験の最終合格発表日の午前9時以降から解禁となっていますので,通常は合格発表日に行われる採用面接後に内々定を貰うということになります。
しかし,実際は,官庁訪問の段階で内々定を出す地方検察庁もありますので,注意が必要になりますね。
採用面接
採用面接については,官庁訪問で評価されて呼ばれた人しか参加することができませんが,採用面接=内々定というわけではありませんので,油断は禁物となります。
実際,私が採用された際には,採用面接に呼ばれた人の半分以上は内々定がもらえていませんでしたね。
この採用面接で無事に内々定を貰うことができると,晴れて検察事務官となることができます。
ちなみに,官庁訪問で内々定を貰っている場合の採用面接は,選考に関係ないけど形式上やる場合と,採用面接自体をもうやらない場合があるみたいですね。
では,次に,官庁訪問・採用面接の対策について詳しく見ていきたいと思います。
官庁訪問・採用面接対策
官庁訪問・採用面接対策についてですが,元検察事務官である私が思う重要なポイントは以下の2点になります。
- 検察事務官の理解を深める
- 検察事務官への適正をアピール
検察事務官の仕事への理解を深め,自身が検察事務官に適しているとアピールすることが大事となります。
というのも,一般的に検察事務官の仕事などの詳細は世に知られていませんので,この2点をしっかりアピールできると,面接官も「お!分かっているな!!」と高評価につながりやすくなるからです。
では,具体的にどのように対策をしたらいいのか,見ていきたいと思います。
理解を深める方法
検察事務官への理解を深める方法としては,主に以下の3点があります。
- インターネットで調べる
- 業務説明会に参加する
- 検察事務官に質問する
①については,検察庁に官庁訪問する受験生の全てが行っていることかと思いますが,一点アドバイスをすると,実際に訪問する地方検察庁以外の地方検察庁のホームぺージもチェックすることをお勧めします。
というのも,検察事務官の仕事はどの地方検察庁でも同じですので,色んな地方検察庁のホームページを見ることで理解を深めることができます。
また,私のブログでも,検察事務官の仕事について詳細に記載していますので,是非見て理解を深めてもらえればと思います。

②については,各地方検察庁によって業務説明会の開催時期が異なりますが,多くの地方検察庁が一次試験の合格発表前に業務説明会を開催していますので,是非参加してもらえればと思います。
③については,なかなか周りに検察事務官の知り合いはいないと思いますので,その場合は,元検察事務官である私に聞いてもらえればと思います。
このブログのお問い合わせでもツイッターのDMでも大丈夫ですので,気になることがあればお気軽に質問してもらえればと思います。
適正をアピールする方法
検察事務官への適性をアピールする方法は,上記で深めた検察事務官への理解を面接の質疑応答に上手に落とし込んで答えるということになります。
つまり,検察事務官に求められる能力や姿勢を自分が身につけているんだということをアピールするということです。
では,具体的にどのように面接で答えればいいのかについては,以下の記事で詳しく説明していますので,是非参考にしてもらえればと思います。



また,私の社会人経験を経て検察事務官になった経験から,社会人経験者の面接対策についてもまとめていますので,社会人経験者の方は是非参考にしてもらえればと思います。

ちなみに,2021年度は依頼があれば志望動機や想定質問への回答の添削を行っていました。
2022年度についても,現段階では添削依頼に対応しようと思っていますので,決まり次第ブログかツイッターでご案内させていただきます。
では,最後に,併願先との比較について参考に見ていきたいと思います。
【参考】併願先との比較方法
無事に地方検察庁から内々定を貰った後に直面する問題として,本当に検察事務官でいいのかや,他の内々定先の方がいいのではないのかとの疑問が浮かぶと思います。
併願先と比較する際には,以下の3つの視点から検討するということが需要になります。
- 仕事内容で比較
- 各種制度や給料等で比較
- 転職の容易さ比較
では,3つのポイントについて,それぞれ説明していきたいと思います。
仕事内容で比較
仕事内容で比較についてですが,他の内々定先の仕事も十分に理解しているからこそ内々定を貰えているんだと思います。
しかし,正直,どこの官公庁も業務説明会や採用面接では耳障りのいい話ばかりをしている可能性がありますので,仕事内容で比較検討する際には,マイナス面も考慮した上で進路を選んでもらえればと思います。
ちなみに,私は元検察事務官かつ元市役所職員でもありますので,検察事務官と市役所職員を実体験として比較することができます。
そんな私の実体験から比較した市役所職員の仕事については,下記記事で記載していますので,地方自治体と比較する際は,是非参考にしてもらえればと思います。


各種制度や給料等で比較
各種制度や給料等で比較についてですが,実際に就職するとなると,仕事内容だけでなく各種制度や給料等なども重要な判断材料になってくると思います。
個人的には,内部試験で検察官になることができるなどキャリアプランが充実している点や,公安職俸給表が適用され給料が他に比べて高いなど,検察庁はお勧めの就職先かなと思っています。
同じ国家一般職試験の採用先でも大きく異なってきますので,各種制度や給料等の観点からも是非比較検討してもらえればと思います。
なお,検察庁組織の各種制度や給料等についての詳細は,下記記事でまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。


転職の容易さで比較
あまり公務員受験生が持っていない視点ですが,進路を決める上では転職の容易さも重要になってきます。
転職の容易さは以下の2点で判断できます。
- 受験可能年齢
- 採用人数
受験可能年齢については,国家一般職試験は30歳までしか受験できないのに対し,市役所や県庁などの地方自治体は社会人経験者採用試験を積極的に行っていますので,30代や40代でも転職することが可能となります。
また,採用人数については,政令市役所職員や国税専門官などは採用人数が百人を超えますので,比較的転職が容易と言えると思います。
逆に検察事務官は採用人数が少ないので,将来的に転職が容易な併願先と進路を迷った場合は,まずは検察事務官になることを選んだ方がいいかなと思います。
おわりに
今回は,検察事務官へのなり方について紹介してきました。
特に,官庁訪問対策については,元検察事務官である私の経験を基に記載していますので,検察事務官志望の方は是非繰り返し見て参考にしてもらえればと思います。
今回も最後まで見ていただいてありがとうございました。