こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では、国家公務員の諸手当の内、期末・勤勉手当について詳しく紹介していきたいと思います。
全ての国家公務員にとって嬉しいボーナスになりますので、現役の国家公務員の皆さんはもちろん、これから国家公務員になられる方も是非参考にしてもらえればと思います。
本記事の内容は令和6年1月時点のものとなります。
期末・勤勉手当の概要について
期末・勤勉手当は「一般職の給与に関する法律(給与法)」や「人事院規則9-40(期末手当及び勤勉手当)」などで定められています。
- 期末手当
生活補助金としての性格を有する手当 - 勤勉手当
勤務成績に応じて支給される能力給としての性格を有する手当
手当の性格の違いから期末手当と勤勉手当の算定方法は異なりますが、まずは共通する下記項目について見ていきたいと思います。
基準日・支給対象者
期末・勤勉手当は、給与法で定められる基準日~基準日前1か月以内に在職している職員が支給対象者となります。
- 6月期(夏): 6月1日
- 12月期(冬):12月1日
基準日に在職している職員だけが支給対象者だと勘違いしている人もいると思いますが、実は基準日前1か月以内に退職又は死亡した職員も支給対象者になります。
退職する場合、年度末である3/31まで勤務、4/1から有給消化で退職日が5/1~6/1以降になれば、期末・勤勉手当が支給される。
なお、以下の職員の場合は、基準日に在職していても期末・勤勉手当の支給対象外となります。
- 休職者(無給・刑事・専従)
※公務災害等による休職は除く - 停職者(懲戒処分)
- 非常勤職員
- 派遣職員
国際機関・官民人事交流など - 育児休業をしている職員
※基準日以前6か月以内に勤務した期間がある職員は除く - 休業をしている職員
自己啓発等・配偶者同行
基準日に上記事由に該当する職員は支給対象外となりますが、育児休業をしている職員に対しては、基準日以前6か月以内に勤務した期間応じた期末・勤勉手当が支給されます。
支給日
期末・勤勉手当の支給日は、基準日に応じて以下のように定められています。
基準日 | 支給日 |
6月1日
|
6月30日
|
12月1日
|
12月10日 |
なお、支給日が土日の場合は直近の金曜日が支給日となります。
- 6月期(夏): 6月28日(金)
- 12月期(冬):12月10日(火)
人事院勧告・支給月数
人事院では、毎年、民間企業の月例給とボーナスを調査し、国家公務員と民間企業従業員の給与水準を合わせることを目的とした勧告(人事院勧告)を行っています。
例年8月に勧告が行われますが、期末・勤勉手当については「ボーナス〇か月分」と年間の支給月数が勧告されます。
6月期の期末・勤勉手当はすでに支給されていますので、12月期の期末・勤勉手当で調整することになります。
一般職員 | |
12月期 | |
令和5年度 期末手当 勤勉手当 |
現行1.20月→1.25月 現行1.00月→1.05月 |
令和5年度は年間4.40月分→4.50月分(+0.10月分)と勧告されましたので、12月期の期末・勤勉手当にそれぞれ0.05月分ずつ配分されることになります。
令和6年度以降は年間4.50月分の支給月数を6月期と12月期でそれぞれ配分しますが、令和6年度人事院勧告によっては12月期の支給月数が変動することになります。
一般職員 | ||
6月期 | 12月期 | |
令和6年度以降 期末手当 勤勉手当 |
1.225月 1.025月 |
1.225月 1.025月 |
※令和6年度6月期の支給月数は確定
- 期末・勤勉手当の支給対象者は、基準日(6/1、12/1)~基準日前1か月以内に在職している職員。
- 支給日は6/30と12/10で、土日の場合は直近金曜日に支給。
- 人事院勧告により年間の支給月数が勧告され、12月期の支給月数が調整される。
では、まずは、期末手当の算定方法について見ていきたいと思います。
期末手当の算定方法について
期末手当の支給額は、以下の計算式によって算定されます。
期末手当基礎額×期別支給割合×在職期間別割合
では、計算式を構成する各項目について詳しく見ていきたいと思います。
期末手当基礎額
期末手当基礎額とは、俸給月額に各種手当・加算額を加えたものになります。
- (俸給+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額
- ①に対する地域手当等の月額
- 役職段階別加算額
- 管理職加算額
期末手当基礎額を構成する手当・加算額の内、期末・勤勉手当の算定にのみ用いられる下記項目について見ていきたいと思います。
なお、「地域手当等」には地域手当の他に広域異動手当と研究員調整手当が含まれます。
役職段階別加算額
役職段階別加算額とは、役職に対して加算される調整額になります。
{(俸給+専門スタッフ職調整手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額}×役職段階等に応じて定められた加算割合
役職段階等に応じて定められた加算割合とは、官職の職制上の段階、職務の級等を考慮して「人事院規則9-40別表第一」で定められる下記割合になります。
職務の級 | 加算割合 |
8級以上
|
20%
|
7級・6級
|
15% |
5級・4級 | 10% |
3級 | 5% |
役職段階別加算額を受けられる職員は職務の級が3級以上の職員になりますので、係長級未満の若手職員には関係のない調整額となります。
職務の級が3級に昇格するには、最短でも1級に3年(高卒程度は8年)2級に4年の在級期間(※)が必要。
※「人事院規則9-8別表第六」参照
管理職加算額
管理職加算額とは、管理又は監督の地位にある職員に対して加算される調整額になります。
俸給月額×管理・監督の地位に応じて定められた加算割合
管理・監督の地位に応じて定められた加算割合とは、「人事院規則9-40第4条の4」で定められる下記割合になります。
官職(7級以上) | 加算 割合 |
|
区分 | 検察事務官の役職 | |
指定職 一種 |
最高検事務局長 最高検課長など |
25%
|
二種 | 検事総長秘書官 高検地検事務局長など |
15% |
三種 | 高検地検事務局次長 主席捜査官など |
10% |
管理職加算額を受けられる職員は、職務の級が7級以上で「人事院規則9-17別表第一」で定める俸給の特別調整額の区分が一種~三種に該当する官職になります。
これは本府省室長級以上の官職になりますので、幹部クラスの職員にしか加算されない調整額となります。
期別支給割合
期別支給割合とは、上記「人事院勧告・支給月数」で説明した期末手当の支給月数を割合に変換したもので、「給与法19条の4第2項」で定められています。
一般職員 | ||
6月期 | 12月期 | |
令和5年度 期末手当 勤勉手当 |
1.20月 1.00月 |
1.25月 1.05月 |
令和6年度以降 期末手当 勤勉手当 |
1.225月 1.025月 |
1.225月 1.025月 |
※令和5年度人事院勧告の支給月数を記載
期末手当の期別支給割合は、令和5年度の6月期が120/100、12月期が125/100となり、令和6年度はそれぞれ122.5/100となります。
なお、支給月数は、一般職員、特定管理職員、指定職職員でそれぞれ異なりますので、期別支給割合もそれぞれ異なります。
職務の級7級以上、俸給の特別調整額の区分一種又は二種に該当する職員
本記事では特定管理職員と指定職職員の場合は省略します。
在職期間別割合
在職期間別割合とは、「給与法19条の4第2項」で定められる基準日以前6か月以内の在職期間によって調整するための割合になります。
在職期間 | 割合 |
6か月 | 100% |
5か月以上6か月未満 | 80% |
3か月以上5カ月未満 | 60% |
3か月未満 | 30% |
在職期間が6か月で100%となりますが、新規採用職員(4月採用)6月期は在職期間が2か月なので、在職期間別割合は30%となります。
6月期(夏):12月2日~ 6月1日
12月期(冬): 6月2日~12月1日
なお、在職期間には除算される期間がありますが、事由によって除算される期間の算定は異なります。
全期間を除算する期間
- 停職者の在職期間
- 非常勤職員の在職期間
- 専従休職者の在職期間
2分の1の期間を除算する期間
- 育児休業職員の在職期間
- 自己啓発等休業職員の在職期間
- 配偶者同行休業職員の在職期間
- 休職にされていた期間
※公務災害等による休職は除く - 育児短時間勤務職員の在職期間
※算出率を乗じた期間は除く
では、次に、勤勉手当の算定方法について見ていきたいと思います。
勤勉手当の算定方法について
勤勉手当の支給額は、以下の計算式によって算定されます。
勤勉手当基礎額×期間率×成績率
では、計算式を構成する項目の内、下記項目について詳しく見ていきたいと思います。
勤勉手当基礎額
勤勉手当基礎額とは、俸給月額に各種手当・加算額を加えたものになります。
- (俸給+専門スタッフ職調整手当)の月額
- ①に対する地域手当等の月額
- 役職段階別加算額
- 管理職加算額
期末手当基礎額との違いは、扶養手当があるかないかのみとなります。
なお、役職段階別加算額と管理職加算額は上記「期末手当の算定方法」で説明した内容と同じになります。
期間率
期間率とは、「人事院規則9-40別表第二」で定められる基準日以前6か月以内の勤務期間によって調整するための割合になります。
勤務期間 | 割合 |
6か月
|
100%
|
5か月15日以上6か月未満
|
95% |
5か月以上5か月15日未満
|
90% |
4か月15日以上5か月未満
|
80% |
4か月以上4か月15日未満
|
70% |
3か月15日以上4か月未満
|
60% |
3か月以上3か月15日未満
|
50% |
2か月15日以上3か月未満
|
40% |
2か月以上2か月15日未満
|
30% |
1か月15日以上2か月未満
|
20% |
1か月以上1か月15日未満
|
15% |
15日以上1か月未満
|
10% |
15日未満
|
5% |
勤務期間が6か月で100%となりますが、新規採用職員(4月採用)6月期は勤務期間が2か月なので、期間率は30%となります。
6月期(夏):12月2日~ 6月1日
12月期(冬): 6月2日~12月1日
なお、勤務期間には除算される期間がありますが、期末手当の在職期間とは異なり、事由に該当する期間は全期間が除算されます。
- 停職者の在職期間
- 非常勤職員の在職期間
- 専従休職者の在職期間
- 育児休業職員の在職期間
- 自己啓発等休業職員の在職期間
- 配偶者同行休業職員の在職期間
- 休職にされていた期間
※公務災害等による休職は除く - 育児短時間勤務職員の在職期間
※算出率を乗じた期間は除く - 給与を減額された期間
※欠勤、副業禁止等による減額 - 負傷等による30日超の休職期間
※30日超には週休日等は除く
※公務災害等による休職は除く
- 30日超の介護休暇の期間
※30日超には週休日等は除く
- 30日超の介護時間の期間
- 30日超の育児時間の期間
- 基準日以前6か月の全期間に勤務した日がない場合、全期間
成績率
成績率とは、上記「人事院勧告・支給月数」で説明した勤勉手当の支給月数の総額を職員の勤務成績に応じて配分したもので、「人事院規則9-40第13条」で定められています。
成績区分 | 一般職員 | |
6月期 | 12月期 | |
特に優秀 | 200/100以下 119/100以上 |
210/100以下 124/100以上 |
優秀 | 119/100未満 107.5/100以上 |
124/100未満 112.5/100以上 |
良好(標準) | 96/100 | 101/100 |
良好でない | 87.5/100以下 | 92.5/100以下 |
※令和5年度の成績率
直近(半年分)の業績評価に応じて成績率の成績区分が決定されますが、「非常に優秀」以上が「特に優秀」、「優良」以上が「優秀」の成績区分に割り振られます。
- 卓越して優秀
- 非常に優秀
- 優良
- 良好
- やや不十分
- 不十分
なお、「特に優秀」と「優秀」の成績区分に割り当てられる人数は上限が決まっていますので、業績評価が「非常に優秀」以上でも「良好(標準)」になる可能性はあります。
めったに「特に優秀」や「優秀」の成績区分にはなりませんので、「良好(標準)」がスタンダードだと理解してもらえればと思います。
では、最後に、期末・勤勉手当の算定例を見ていきたいと思います。
期末・勤勉手当の算定例について
期末・勤勉手当の算定例について、下記の場合について見ていきたいと思います。
国家一般職(大卒程度)1年目
- 行政職俸給表(一)1級25号俸
- 俸給月額:196,200円
- 各種手当:地域手当のみ
- 支給月数:4.50月分
- 成績区分:良好(標準)
※令和5年度人事院勧告は考慮しない
6月期の期末・勤勉手当
- 期末手当
(俸給月額+地域手当)×期別支給割合122.5%×在職期間別割合30% - 勤勉手当
(俸給月額+地域手当)×期間率30%×成績率98.5%
支給 割合 |
期末手当 | 勤勉手当 | 合計額 |
20% | 86,524円 | 69,572円 | 156,096円 |
16% | 83,640円 | 67,253円 | 150,893円 |
15% | 82,919円 | 66,673円 | 149,592円 |
12% | 80,755円 | 64,934円 | 145,689円 |
10% | 79,313円 | 63,774円 | 143,087円 |
6% | 76,429円 | 61,455円 | 137,884円 |
3% | 74,266円 | 59,716円 | 133,982円 |
0% | 72,103円 | 57,977円 | 130,080円 |
12月期の期末・勤勉手当
- 期末手当
(俸給月額+地域手当)×期別支給割合122.5%×在職期間別割合100% - 勤勉手当
(俸給月額+地域手当)×期間率100%×成績率98.5%
支給 割合 |
期末手当 | 勤勉手当 | 合計額 |
20% | 288,414円 | 231,908円 | 520,322円 |
16% | 278,800円 | 224,178円 | 502,978円 |
15% | 276,396円 | 222,245円 | 498,641円 |
12% | 269,186円 | 216,447円 | 485,633円 |
10% | 264,379円 | 212,582円 | 476,961円 |
6% | 254,765円 | 204,852円 | 459,617円 |
3% | 247,555円 | 199,054円 | 446,609円 |
0% | 240,345円 | 193,257円 | 433,602円 |
国家一般職(高卒程度)1年目
- 行政職俸給表(一)1級5号俸
- 俸給月額:166,600円
- 各種手当:地域手当のみ
- 支給月数:4.50月分
- 成績区分:良好(標準)
※令和5年度人事院勧告は考慮しない
6月期の期末・勤勉手当
- 期末手当
(俸給月額+地域手当)×期別支給割合122.5%×在職期間別割合30% - 勤勉手当
(俸給月額+地域手当)×期間率30%×成績率98.5%
支給 割合 |
期末手当 | 勤勉手当 | 合計額 |
20% | 73,470円 | 59,076円 | 132,546円 |
16% | 71,021円 | 57,107円 | 128,128円 |
15% | 70,409円 | 56,614円 | 127,023円 |
12% | 68,572円 | 55,137円 | 123,709円 |
10% | 67,348円 | 54,153円 | 121,501円 |
6% | 64,899円 | 52,184円 | 117,083円 |
3% | 63,062円 | 50,707円 | 113,769円 |
0% | 61,225円 | 49,230円 | 110,455円 |
12月期の期末・勤勉手当
- 期末手当
(俸給月額+地域手当)×期別支給割合122.5%×在職期間別割合100% - 勤勉手当
(俸給月額+地域手当)×期間率100%×成績率98.5%
支給 割合 |
期末手当 | 勤勉手当 | 合計額 |
20% | 244,902円 | 196,921円 | 441,823円 |
16% | 236,738円 | 190,357円 | 427,095円 |
15% | 234,697円 | 188,716円 | 423,413円 |
12% | 228,575円 | 183,793円 | 412,368円 |
10% | 224,493円 | 180,511円 | 405,004円 |
6% | 216,330円 | 173,947円 | 390,277円 |
3% | 210,207円 | 169,024円 | 379,231円 |
0% | 204,085円 | 164,101円 | 368,186円 |
公安職(二)俸給表適用1年目
- 公安職俸給表(二)1級24号俸
- 俸給月額:227,800円
- 各種手当:地域手当のみ
- 支給月数:4.50月分
- 成績区分:良好(標準)
※令和5年度人事院勧告は考慮しない
6月期又は12月期の期末・勤勉手当
- 期末手当
(俸給月額+地域手当)×期別支給割合122.5%×在職期間別割合100% - 勤勉手当
(俸給月額+地域手当)×期間率100%×成績率98.5%
※支給月数が同じ:6月期と12月期の期末・勤勉手当額は同額になる。
支給 割合 |
期末手当 |
勤勉手当 |
合計額 |
20% | 334,866円 | 269,259円 | 604,125円 |
16% | 323,703円 | 260,284円 | 583,987円 |
15% | 320,913円 | 258,040円 | 578,953円 |
12% | 312,541円 | 251,308円 | 563,849円 |
10% | 306,960円 | 246,821円 | 553,781円 |
6% | 295,798円 | 237,845円 | 533,643円 |
3% | 287,426円 | 231,114円 | 518,540円 |
0% | 279,055円 | 224,383円 | 503,438円 |
検察事務官が公安職(二)俸給表が適用される時期
- 大卒程度 :採用2年目
- 高卒程度(専門卒):採用4年目
- 高卒程度(高 卒):採用6年目
おわりに
今回は、国家公務員の諸手当の内、期末・勤勉手当について説明してきました。
ボーナスは国家公務員にとって非常に嬉しい手当になりますので、理解した上で自分へのご褒美やライフプランニングに活用してもらえたらと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。