こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,検察事務官の各種手当の内,俸給の特別調整額について紹介していきます。
検察事務官の支給対象者・支給額についてや,他の手当との関係についても詳しく解説していきますので,検察事務官志望の方は是非見て参考にしてくださいね。
また,検察事務官以外の国家公務員すべてに当てはまる内容ですので,他官庁を志望している方も参考にしてもらえればと思います
- 本記事で説明する内容は令和3年4月時点のものとなります。
俸給の特別調整額について
俸給の特別調整額についてですが,民間で言ういわゆる管理職手当のことになります。
では,俸給の特別調整額の支給対象職員・支給額について見ていきたいと思います。
支給対象職員
俸給の特別調整額の支給対象職員は,管理又は監督の地位にある職員(管理監督職員)とされていますが,人事院規則により組織ごとに官職(役職)が指定されています。
検察庁における管理監督職員は以下のとおりとなっています。
組織 | 官職 | 区分 |
最高 検察庁 |
・事務局長 ・課長 |
一種 |
・検事総長秘書官 ・室長 (人事院の定めるものに限る) |
二種 | |
高等 検察庁 |
・事務局長 | 二種 |
・事務局次長 | 三種 | |
・課長 ・検察監査官 |
四種 | |
高等 検察庁 支部 |
・課長 | 四種 |
地方 検察庁 |
・事務局長 | 二種 |
・事務局次長 | 三種 | |
・主席捜査官 | 四種 ※ |
|
・課長 ・次席捜査官 |
四種 | |
・統括捜査官 | 五種 | |
地方 検察庁 支部 |
・課長 ・主席捜査官 |
四種 |
・統括捜査官 | 五種 | |
区 検察庁 |
・課長 (人事院の定めるものに限る) ・統括捜査官 |
五種 |
※人事院が別に定める場合は二種又は三種
官職がたくさんあって分かりづらいかと思いますが,簡単に言うと,課長・統括捜査官以上の役職になると俸給の特別調整額が支給されるということになります。
ちなみに,最高検察庁の事務局長や,東京・福岡・大阪・名古屋・広島高検事務局長は指定職になりますが,指定職には俸給の特別調整額が支給されません。
また,検察官も支給対象外になりますので,副検事も対象外となります。
副検事の詳細については下記記事でご確認いただけます。

支給額
俸給の特別調整額の支給額についても,人事院規則で俸給表ごとに定められています。
公安職(二)俸給表の支給額は以下のとおりとなります。
職務の級 | 区分 | 支給額 |
10級 | 一種 | 139,300円 |
9級 |
一種 | 130,300円 |
二種 | 104,200円 | |
8級 |
一種 | 119,100円 |
二種 | 95,700円 | |
三種 | 83,800円 | |
7級 |
二種 | 90,900円 |
三種 | 79,500円 | |
四種 | 68,100円 | |
6級 |
三種 | 78,200円 |
四種 | 67,100円 | |
五種 | 55,900円 | |
5級 |
四種 | 64,600円 |
五種 | 53,800円 | |
4級 |
四種 | 61,000円 |
五種 | 50,800円 |
上記表を見ると,職務の級が4級以上の職員が支給対象となることが分かりますが,例えば4級の統括捜査官だと,区分は五種なので,支給額は50,800円ということになります。
役職の序列や対応する職務の級については下記記事で確認いただけます。

- 一般職の給与に関する法律
※「第十条の二」参照 - 人事院規則九―一七(俸給の特別調整額)
※「別表第一(第一条関係)」参照
※「別表第二(第二条関係)」参照
では,次に,他の手当との関係について見ていきたいと思います。
他の手当との関係について
俸給の特別調整額と他の手当との関係についてですが,管理監督職員になると支給対象外となる手当や,逆に支給対象となる手当があります。
また,他の手当額の算定の基礎に俸給の特別調整額が含まれている場合もありますので,それぞれ見ていきたいと思います。
支給対象外となる手当
管理監督職員が支給対象外となる手当については,給与法で以下の手当が定められています。
- 超過勤務手当
- 休日給
- 夜勤手当
民間企業では,管理職は残業代が出ませんが,国家公務員も同様で,管理監督職員になると超過勤務手当が支給対象外となります。
休日給と夜勤手当についても超過勤務手当と同様となります。
超過勤務手当の詳細については,下記記事で確認いただけます。
https://moto-kensatsujimukan.com/workstyle-tachiai-overtime/
ただ,管理監督職員とはいえ,仕事上,勤務時間外や休日に仕事をする必要が生じますが,その際は,超過勤務手当とは別に管理職員特別勤務手当が支給されることになります。
管理職員特別勤務手当
管理職員特別勤務手当は,管理監督職員が下記の仕事をした場合に支給されます。
- 週休日・祝日に6時間を超える勤務をした場合
- 週休日・祝日以外の日の午前0時~5時までの間,勤務をした場合
支給額については,人事院規則で定められていますが,①②の場合で支給額が異なるため,それぞれ見ていきたいと思います。
区分 | ①の場合 | ②の場合 |
一種 | 12,000円 | 6,000円 |
二種 | 10,000円 | 5,000円 |
三種 | 8,500円 | 4,300円 |
四種 | 7,000円 | 3,500円 |
五種 | 6,000円 | 3,000円 |
区分については,俸給の特別調整額の区分と同じとなります。
ちなみに,管理監督職員が休日勤務する場合は,振替休日の取得が優先されますし,深夜勤務することもあまり考えられませんので,実際に管理職員特別勤務手当が支給される場面は少ないかと思います。
振替休日の詳細については,下記記事で確認いただけます。

算定の基礎となる手当
俸給の特別調整額が手当額算定の基礎となる手当は,以下の手当となります。
- 地域手当
- 広域異動手当
地域手当と広域異動手当の支給割合は異なりますが,算定式は以下のとおり同じとなります。
俸給,俸給の特別調整額,専門スタッフ職調整手当及び扶養手当の月額の合計額×支給割合
算定式を見ると分かるように,地域手当は俸給だけでなく俸給の特別調整額にも支給割合を乗じるため,地域手当の有る無しで最大20%異なってきますね。
地域手当と広域異動手当の詳細については,下記記事で確認いただけます。

- 一般職の給与に関する法律
※「第十九条の八第二項」参照
※「第十九条の三」参照 - 人事院規則九―九三(管理職員特別勤務手当)
※「第二条,三条」参照
では,最後に,俸給の特別調整額と似ている「俸給の調整額」についても参考に見ていきたいと思います。
【参考】俸給の調整額について
俸給の調整額とは,名前は似ていますが,俸給の特別調整額とは全く異なるものになります。
俸給の調整額とは,給与法によると,以下の官職に対して支給されるものになります。
職務の複雑、困難若しくは責任の度又は勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤労条件が同じ職務の級に属する他の官職に比して著しく特殊な官職
では,俸給の調整額の支給対象や支給額がどのようになっているのか,それぞれ見ていきたいと思います。
支給対象者
どういった官職が俸給の調整額の支給対象者になるのかは,人事院規則で組織ごとに指定されています。
検察庁では,検察官事務取扱検察事務官(通称「検取」)のみが対象と指定されています。
ちなみに,現職の方は検察庁内で検取手当という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが,それがこの俸給の調整額のことになります。
支給額
俸給の調整額の支給額については,組織の官職ごとに定められている調整数を俸給表の職務の級毎に定められている調整基本額に乗じた金額が支給額となります。
俸給の調整額=調整数×調整基本額
検取の調整数は一ですので,単純に職務の級毎の調整基本額が俸給の調整額の支給額となりますね。
職務の級 | 調整基本額 |
1級 | 7,300円 |
2級 | 8,900円 |
3級 | 10,200円 |
4級 | 11,300円 |
5級 | 11,600円 |
6級 | 12,000円 |
7級 | 12,400円 |
8級 | 13,100円 |
9級 | 14,300円 |
10級 | 15,900円 |
例えば,3級の主任捜査官で検取発令を受けると,毎月の俸給に加え,10,200円が俸給の調整額として支給されるということになります。
ちなみに,俸給の特別調整額と違い,超過勤務手当が支給対象外になることはありませんので,安心して残業ができますね。
- 一般職の給与に関する法律
※「第十条」参照
- 人事院規則九―六(俸給の調整額)
※「別表第一 適用区分表(第一条関係)」参照
※「別表第二 調整基本額表(第一条関係)」参照
おわりに
今回は,検察事務官の各種手当の内,俸給の特別調整額について説明してきました。
検察庁志望者の方や内定者の方は,俸給の特別調整額を把握することで,検察事務官の出世のイメージを掴んでもらえればと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。