こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では、国家公務員の地域手当について詳しく紹介していきます。
地域手当は給与額に大きな影響を与える手当になりますので、現職の方はもちろん、内定者や受験生の方も参考にしてもらえればと思います。
本記事の内容は令和6年4月1日時点のものとなります。
※令和6年人事院勧告の俸給改訂を反映
地域手当の概要について
地域手当とは、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給される手当になります。
では、地域手当について「一般職の給与に関する法律(給与法)」や「人事院規則9-49(地域手当)」などで定められる下記項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
地域手当の支給額・支給割合
地域手当の支給額については、以下の計算式で算定されます。
(俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額×支給割合
各項目を見ると、基本給である俸給の他に扶養手当等の他の手当も算定基礎額に含まれることが分かります。
- 扶養手当
配偶者・子・父母等の扶養親族のある職員に支給される手当 - 俸給の特別調整額
管理又は監督の地位にある職員(管理監督職員)に支給される手当
※専門スタッフ職調整手当は省略
そのため、結婚等で扶養親族ができたり管理職になると地域手当の支給額が増えることになります。
そして、俸給や扶養手当等を合わせた算定基礎額に地域手当の支給割合を乗じることで、地域手当の支給額が算定されます。
地域手当の支給割合は「給与法11条の3第2項」で地域手当の級地の区分に応じて定められていますが、主な支給地域の給地と支給割合は以下の通りとなります。
給地 | 主な支給地域 | 支給 割合 |
1級地 | 東京都特別区 | 20% |
2級地 | 大阪市、横浜市 | 16% |
3級地 | さいたま市、千葉市、名古屋市 | 15% |
4級地 | 神戸市 | 12% |
5級地 | 水戸市、大津市、京都市、奈良市、広島市、福岡市 | 10% |
6級地 | 仙台市、宇都宮市、甲府市、岐阜市、静岡市、津市、和歌山市、高松市 | 6% |
7級地 | 札幌市、前橋市、新潟市、富山市、金沢市、福井市、長野市、岡山市、徳島市、長崎市 | 3% |
なお、「人事院規則9-49別表第一」で地域手当の支給対象となる地域と給地が定められていますので、主な支給地域以外の支給割合を確認することができます。
新規採用職員(行(一)1級25号俸)の地域手当額
- 220,000円×20%=44,000円
- 220,000円×16%=35,200円
- 220,000円×15%=33,000円
- 220,000円×12%=26,400円
- 220,000円×10%=22,000円
- 220,000円× 6%=13,200円
- 220,000円× 3%= 6,600円
ちなみに、地域手当の支給割合別の初任給額を下記記事で紹介していますので、合わせて見てもらえればと思います。
地域手当の異動保障
国家公務員だと異動によって地域手当の支給割合が変わる場合がありますが、支給割合が元の官署より低い官署に異動した場合には「異動保障」という制度があります。
支給割合のより低い地域、支給地域外に異動した場合の支給割合
異動1年目:異動前の支給割合100%
異動2年目:異動前の支給割合 80%
異動3年目:異動後の支給割合(※)
※異動保障なし
異動保障は「給与法11条の7」で定められていますが、これは異動によって急激に給与額が下がらないように調整するための保証制度になります。
検察官は2年毎に大規模庁と小規模庁・支部間の異動があるが、異動保障により給与水準は維持される。
なお、支給割合の低い地域に勤務している人も、本省(東京)で勤務することで異動保障の恩恵を受けることができます。
支給割合20%→0%の地域に異動
異動1年目:支給割合20%
異動2年目:支給割合16%(※)
※20%×80%=16%
異動3年目:支給割合 0%
ちなみに、本省勤務は昇給幅が大きくなりますし、本府省業務調整手当の支給もありますので、給与額を上げたい人は是非本省勤務を希望してもらえたらと思います。
- 地域手当額の算定には、俸給の他に扶養手当等の手当も含まれる。
- 支給割合は勤務地域によって3%~20%。
- 異動保障により、異動後2年間は元の支給割合の80%~100%。
では、次に、地域手当と他の手当との関係について見ていきたいと思います。
他の手当との関係について
地域手当の支給額や支給割合は他の手当額の算定にも影響しますので、地域手当が影響する他の手当について見ていきたいと思います。
支給額・割合が減算される手当
国家公務員の手当には、地域手当と同様に算定基礎額に支給割合を乗じる手当として下記3つの手当があります。
- 広域異動手当
官署間の距離等が60㎞以上の広域的な異動等を行った職員に支給される手当 - 特地勤務手当
離島などの生活の著しく不便な地に所在する官署(特地官署)に勤務する職員に支給される手当 - 研究員調整手当
※研究員調整手当の説明は省略
これらの手当は、地域手当の支給額や支給割合を減算して支給額を算定する手当になります。
地域手当の支給割合 :10%→0%
広域異動手当の支給割合:10%
- 異動1年目:地域手当 10%
広域異動手当 0% - 異動2年目:地域手当 8%
広域異動手当 2%
- 異動3年目:広域異動手当10%
これは、支給割合が地域手当<広域異動手当になった場合に広域異動手当の支給割合の範囲でそれぞれ何パーセントの支給割合になるかという話になります。
※特地勤務手当・研究員調整手当も同様
ですので、地域手当との関係は単なる手当間の調整の話になりますので、地域手当がマイナス作用するという話ではありません。
制度として理解してもらえればと思います。
算定基礎額に加算される手当
国家公務員の手当には、算定基礎額に地域手当額を加算する手当として下記2つの手当があります。
- 期末手当
民間における賞与等のうち一定率(額)分に相当する手当
- 勤勉手当
民間における賞与等のうち考課査定分に相当する手当
期末・勤勉手当の支給額は、算定基礎額である期末・勤勉手当基礎額にそれぞれの割合を乗じて算定されますが、期末・勤勉手当額には地域手当等の月額が含まれています。
- (俸給+専門スタッフ職調整手当+扶養手当※)の月額
- ①に対する地域手当等の月額
- 役職段階別加算額
- 管理職加算額
※勤勉手当基礎額には含まない
そのため、地域手当等の支給割合が大きくなると期末・勤勉手当の支給額が多くなるという関係になります。
なお、「地域手当等」には広域異動手当と研究員調整手当が含まれます。
新規採用職員(行(一)1級25号俸)の期末・勤勉手当額(年額)※
- 地域手当20%:758,472円
- 地域手当16%:733,189円
- 地域手当15%:726,868円
- 地域手当12%:707,907円
- 地域手当10%:695,266円
- 地域手当 6%:669,983円
- 地域手当 3%:651,021円
- 地域手当 0%:632,060円
※新規採用職員の6月期の在職期間別割合・期間率は30%で算定
昇給等で俸給月額が増えると地域手当の支給割合の差の影響は大きくなりますので、地域手当の支給割合がいかに重要か理解してもらえたと思います。
時給を算定基礎額とする手当
国家公務員の手当には、「勤務1時間当たりの給与額」を算定の基礎額とする手当として下記3つの手当があります。
- 超過勤務手当
正規の勤務時間を超えて勤務した職員に支給される手当
- 休日給
祝日法による休日等の正規の勤務時間中に勤務した職員に支給される手当
- 夜勤手当
正規の勤務時間として深夜に勤務した職員に支給される手当
超過勤務手当等の支給額は、以下の計算式で算定されます。
勤務1時間当たりの給与額(※)×支給割合×勤務時間数
※(俸給月額+地域手当等の月額)×12/1週間当たりの勤務時間×52
支給割合や手当の対象勤務時間は各手当によって異なりますが、勤務1時間当たりの給与額を算定基礎額とする点は共通しています。
そして、勤務1時間当たりの給与額の算定には地域手当等も含みますので、地域手当等の支給割合が大きくなると超過勤務手当等の支給額が多くなるという関係になります。
新規採用職員(行(一)1級25号俸)の超過勤務手当額(支給割合125%)
- 地域手当20%:1,965円
- 地域手当16%:1,900円
- 地域手当15%:1,884円
- 地域手当12%:1,834円
- 地域手当10%:1,801円
- 地域手当 6%:1,736円
- 地域手当 3%:1,686円
- 地域手当 0%:1,638円
昇給等で俸給月額が増えると地域手当の支給割合の差の影響は大きくなりますので、地域手当の支給割合がいかに重要か理解してもらえたと思います。
- 地域手当は広域異動手当等と調整されるがマイナスにはならない。
- 期末・勤勉手当基礎額は地域手当等を含むので、支給割合が上がるとボーナスも増える。
- 勤務1時間当たりの給与額は地域手当等を含むので、支給割合が上がると超勤等の単価も上がる。
では、最後に、検察庁の地域手当の給地・支給割合について見ていきたいと思います。
検察庁の支給割合について
上記「地域手当の支給額・支給割合」で地域手当の主な支給地域について紹介しましたが、検察庁の支給割合について支部・区検も含めて具体的に紹介したいと思います。
なお、下記表に記載のない地方検察庁・支部等については地域手当の支給対象外地域となります。
札幌高検管内の支給割合
庁 | 本庁・支部 | 級地 | 支給割合 |
札幌地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
仙台高検管内の支給割合
庁 | 本庁・支部 | 級地 | 支給割合 |
仙台地検 | 本庁 | 6級地 | 6% |
東京高検管内の支給割合
庁 | 本庁・支部 | 級地 | 支給割合 |
東京地検 | 本庁 | 1級地 | 20% |
東京区検 道路交通部 |
|||
武蔵野区検 | 2級地 | 16% | |
町田区検 | |||
八王子区検 | 3級地 | 15% | |
立川支部 | 4級地 | 12% | |
横浜地検 | 本庁 | 2級地 | 16% |
分室 | |||
保土ケ谷 区検 |
|||
厚木区検 | |||
川崎支部 | |||
藤沢区検 | 4級地 | 12% | |
相模原支部 | |||
横須賀支部 | 5級地 | 10% | |
小田原支部 | |||
さいたま地検 |
本庁 | 3級地 | 15% |
大宮分室 | |||
川口区検 | 6級地 | 6% |
|
所沢区検 | |||
越谷支部 | |||
川越支部 | |||
熊谷支部 | 7級地 | 3% | |
千葉地検 | 本庁 | 3級地 | 15% |
南町分室 | |||
市川区検 | 5級地 | 10% |
|
佐倉支部 | |||
松戸支部 | |||
木更津支部 | 7級地 | 3% | |
水戸地検 | 本庁 | 5級地 | 10% |
土浦支部 | |||
日立支部 | |||
竜ケ崎支部 | |||
宇都宮 地検 |
本庁 | 6級地 | 6% |
大田原支部 | |||
小山区検 | 7級地 | 3% |
|
栃木支部 | |||
真岡支部 | |||
前橋地検 | 高崎支部 | 6級地 | 6% |
本庁 | 7級地 | 3% | |
太田支部 | |||
静岡地検 | 本庁 | 6級地 | 6% |
沼津支部 | |||
浜松支部 | 7級地 | 3% | |
富士支部 | |||
掛川支部 | |||
甲府地検 | 本庁 | 6級地 | 6% |
長野地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
松本支部 | |||
諏訪支部 | |||
伊那支部 | |||
新潟地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
名古屋高検管内の支給割合
庁 | 本庁・支部 | 級地 | 支給割合 |
名古屋 地検 |
豊田区検 | 2級地 | 16% |
本庁 | 3級地 | 15% | |
名古屋区検交通分室 | |||
安城区検 | 6級地 | 6% | |
岡崎支部 | |||
一宮支部 | 7級地 | 3% | |
半田支部 | |||
豊橋支部 | |||
津地検 | 四日市支部 | 5級地 | 10% |
本庁 | 6級地 | 6% | |
伊賀支部 | 7級地 | 3% | |
岐阜地検 | 本庁 | 6級地 | 6% |
大垣支部 | 7級地 | 3% | |
多治見支部 | |||
福井地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
金沢地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
富山地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
大阪高検管内の支給割合
庁 | 本庁・支部 | 級地 | 支給割合 |
大阪地検 |
本庁 | 2級地 | 16% |
大阪区検 交通分室 |
|||
羽曳野区検 | 4級地 | 12% | |
堺支部 | 5級地 | 10% | |
岸和田支部 | 6級地 | 6% | |
京都地検 | 本庁 | 5級地 | 10% |
日向町区検 | 6級地 | 6% | |
木津区検 | |||
神戸地検 | 本庁 | 4級地 | 12% |
伊丹支部 | 5級地 | 10% | |
尼崎支部 | |||
明石支部 | 6級地 | 6% | |
姫路支部 | 7級地 | 3% | |
奈良地検 | 本庁 | 5級地 | 10% |
葛城支部 | 6級地 | 6% | |
大津地検 | 本庁 | 5級地 | 10% |
彦根支部 | 6級地 | 6% | |
長浜支部 | 7級地 | 3% | |
和歌山 地検 |
本庁 | 6級地 | 6% |
広島高検管内の支給割合
庁 | 本庁・支部 | 級地 | 支給割合 |
広島地検 | 本庁 | 5級地 | 10% |
山口地検 | 周南支部 | 7級地 | 3% |
岡山地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
高松高検管内の支給割合
庁 | 本庁・支部 | 級地 | 支給割合 |
高松地検 | 本庁 | 6級地 | 6% |
徳島地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
阿南支部 |
福岡高検管内の支給割合
庁 | 本庁・支部 | 級地 | 支給割合 |
福岡地検 | 本庁 | 5級地 | 10% |
長崎地検 | 本庁 | 7級地 | 3% |
おわりに
今回は国家公務員の地域手当について紹介してきました。
給与制度は国家公務員として理解しておくべき制度になりますので、理解した上でライフプランニング等に活用してもらえたらと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。