こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では、国家公務員の広域異動手当について詳しく紹介していきます。
全国転勤のある国家公務員ならではの手当になりますので、現職の方はもちろん、内定者や受験生の方も参考にしてもらえればと思います。
本記事の内容は令和6年4月1日時点のものとなります。
広域異動手当の概要について
広域異動手当とは、官署間の距離等が広域的な異動等を行った職員に対して支給される手当になりますが、手当の概要として下記項目を見ていきます。
広域異動手当の支給要件
広域異動手当の支給要件は「広域的な異動等」となりますが、広域的な異動等とは以下の場合と規定されています。
下記距離がいずれも60㎞以上の場合
- 異動前の官署の所在地と異動後の官署の所在地との間の距離
- 異動前の住居と異動後の官署の所在地との間の距離
上記①②のいずれの距離も60㎞以上必要となりますので、どちらかが60㎞以下の場合は支給対象外となります。
異動前の住居と異動後の官署の所在地との距離が60㎞未満の場合でも、通勤に2時間以上かかる場合は60㎞以上に相当すると認められる。
なお、距離は最も経済的かつ合理的と認められる通常の経路及び方法※により算定されますので、直線距離は用いられません。
※徒歩・船舶・鉄道・バスなどの交通手段
広域異動手当の支給額
次に、広域異動手当の支給額についてですが、以下の計算式で算定されます。
(俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額×支給割合
では、算定の基礎となる下記項目について見ていきます。
算定基礎額
算定基礎額については、以下の月額の合計額となります。
- 俸給(俸給の調整額含む)
- 俸給の特別調整額
→管理又は監督の地位にある職員に支給される手当 - 専門スタッフ職調整手当
- 扶養手当
→配偶者・子・父母等の扶養親族のある職員に支給される手当
そのため、管理職や扶養親族がいる職員は広域異動手当の支給額が増えることになります。
支給割合
支給割合については、異動距離に応じて下記表の通りとなります。
距離 区分 |
300㎞以上 | 60㎞以上 300㎞未満 |
支給 割合 |
10% | 5% |
そのため、広域異動の距離は支給要件である60㎞と支給割合が変わる300㎞が基準となります。
なお、広域異動手当の支給割合は地域手当等の支給割合と調整されますが、詳細は「広域異動手当と諸手当の関係について」で後述します。
広域異動手当の支給期間
次に、広域異動手当の支給期間についてですが、広域異動の日から3年を経過するまで支給されます。
なお、広域異動手当の支給期間中に再異動する場合の取扱いは下記となります。
- 再異動10% ≧当初10%
①再異動から3年間:10% - 再異動5%<当初10%
①当初から3年間:10%
②①終了後から再異動から3年経過するまでの間:5%
つまり、広域異動手当の期間が重複している場合、支給割合の高い方のみ支給され、重複していた期間の延長もないということになります。
広域異動手当の関係法規
最後に、広域異動手当の関係法規についてですが、根拠条文を確認されたい方は是非参考にしてください。
- 一般職の給与に関する法律
11条の8
- 一般職の職員の給与に関する法律の運用方針(給実甲第28号)
11条の8、附則6項関係 - 広域異動手当の運用について(給実甲第1033号)
では、次に、広域異動手当と諸手当の関係について見ていきたいと思います。
広域異動手当と諸手当の関係について
広域異動手当と諸手当の関係についてですが、下記手当との関係で整理していきます。
支給割合を調整する手当
広域異動手当と支給割合を調整する手当には以下の手当があります。
- 地域手当
- 特地勤務手当に準ずる手当
- 研究員調整手当
特に地域手当と支給割合を調整する場面がほとんどとなりますが、支給割合の大小で調整されます。
- 地域手当 ≧広域異動手当
→地域手当のみ支給 - 地域手当<広域異動手当
→広域異動手当の支給割合の範囲で、地域手当と広域異動手当の両方を支給。
【例】
広域異動手当の支給割合:10%
地域手当の支給割合 :10%→0%
異動1年目:地域手当 10%
広域異動手当 0%
異動2年目:地域手当 8%
広域異動手当 2%
異動3年目:地域手当 6%※
広域異動手当 4%
※令和6年度人事院勧告を反映
算定基礎となる手当
広域異動手当が算定基礎となる手当には以下の手当があります。
- 期末手当・勤勉手当
- 超過勤務手当・休日給・夜勤手当
まず、期末・勤勉手当はいわゆるボーナスに当たる手当になりますが、その算定基礎額には広域異動手当を含む地域手当等の月額が含まれています。
広域異動手当を含む地域手当等の月額が算定基礎とされています。
- (俸給+専門スタッフ職調整手当+扶養手当※)の月額
- ①に対する地域手当等の月額
- 役職段階別加算額
- 管理職加算額
※勤勉手当基礎額には含まない
そのため、地域手当等の支給割合が増えると期末・勤勉手当の支給額も増えるという関係になります。
次に、超過勤務手当・休日給・夜勤手当は「勤務1時間当たりの給与額」を算定基礎とする手当になりますが、その算定基礎には地域手当等の月額が含まれています。
勤務1時間当たりの給与額※×支給割合×勤務時間数
※(俸給月額+地域手当等の月額)×12/1週間当たりの勤務時間×52
そのため、地域手当等の支給割合が増えると超過勤務手当等の支給額も増えるという関係になります。
おわりに
今回は国家公務員の広域異動手当について紹介してきました。
給与制度は国家公務員として理解しておくべき制度になりますので、理解した上でライフプランニング等に活用してもらえたらと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。