こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では、立会事務官の仕事内容・働き方の概要について詳しく紹介していきたいと思います。
立会事務官は検察事務官の代表的な仕事になりますので、検察事務官志望の方は是非参考にして貰えればと思います。
立会事務官の概要について
まず、立会事務官の概要について、下記項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
任命時期・期間
立会事務官の任命時期ですが、採用2~3年目での任命が一般的となります。
立会事務官への仕事は検察官とペアになって検察官をサポートしなければならない仕事になりますので、採用1年目の新規配属で立会事務官に任命されることはありません。
新規配属先が事件管理の場合、採用半年で立会事務官になることは有り得る。
立会事務官は若手職員しかならないというわけではなく、ジョブローテーションで様々な部門を経て30代や40代でまた立会事務官に任命されることはあります。
立会事務官を経験する期間については、私が所属していた検察庁では通算10年と言われていました。
なお、検察事務官の人事異動については下記記事を参考にして貰えればと思います。
立会研修
立会事務官の仕事は任命されてすぐにできる仕事ではありませんので、新規採用者向けに立会研修を行っている検察庁は多いです。
研修内容は検察庁によって異なりますが、一般的には1週間くらい先輩立会事務官に付きっきりで実際の立会事務官の仕事を学ぶOJT研修になります。
立会研修では取調べにも同席し、供述調書の作成も経験できる。
立会研修の他にもタイピング研修などの自庁研修もありますが、検察庁の研修制度については下記記事を参考にして貰えればと思います。
検察官との関係
検察官との関係ですが、立会事務官になると一人の検察官とペアとなり、基本的にペア期間は1年間となります。
なお、検察官は任官ルートによって以下の二種類に分けられます。
- 検 事
司法試験に合格して任官 - 副検事
検察事務官等が内部試験に合格して任官
初めて立会事務官になるときのペアは副検事が一般的となります。
検察事務官出身の副検事は立会事務官の仕事に精通しているため、新米立会事務官をサポートできる。
そして、立会事務官の経験を積むたびにペアを組む検察官のランクも上がっていきます。
1年目:新任検事
2年目:新任明け検事
3年目: 〃
4年目:A庁検事(※)
5年目: 〃
6年目:A庁明け検事
7年目: 〃
8年目:シニア検事
※A庁とは東京・大阪などの大規模庁
ちなみに、新任検事にはベテランの立会事務官がペアとなり、新任検事に検察庁の事務的な仕事を教えることになります。
執務環境
立会事務官の執務環境ですが、取調べの有無で以下のパターンに分かれています。
- 捜査部、非部制庁
→単独執務室か共同執務室 - 公判部
→大部屋
部制庁の公判部では取調べを行わないので執務室は大部屋となりますが、捜査部や非部制庁では取調べを行ういますので、執務室は単独執務室か共同執務室となります。
共同執務室ではパーテーションで他のペアと区切られている。
→録音録画を行う場合は専用取調室で行う。
取調べの時以外は執務室の扉を開けておくことが基本で部屋の出入りは自由となりますので、検察官・立会事務官ともに他の執務室との交流は盛んとなっています。
ちなみに、他の執務室に行く理由は仕事の質問や相談がメインですが、取調べも事務処理もなく暇なときに同期や先輩・後輩の立会事務官の執務室に雑談をしに行く場合も多々あります。
- 立会事務官には採用2~3年目で任命されることが一般的。
- 採用1年目に立会研修を行う検察庁が一般的。
- 検察官とのペア期間は1年間で、立会経験を積むごとに担当検察官のランクが上がる。
では、次に、立会事務官の仕事内容について見ていきたいと思います。
立会事務官の仕事内容について
立会事務官の仕事内容は大きく分けて以下2種類となりますので、それぞれ見ていきたいと思います。
捜査事務
捜査担当検察官は事件捜査を行い、起訴・不起訴の事件処理を判断しますが、その検察官の捜査活動をサポートする仕事が捜査事務に当たります。
立会事務官の捜査事務は多岐に渡りますが、以下3つの場面における仕事内容について見ていきたいと思います。
取調べ事務
検察庁における事件捜査は取調べがメインとなりますので、立会事務官の取調べ立会いは毎日のようにあります。
具体的な取調べ事務としては、被疑者・参考人の呼出しなどの日程調整、通訳人の手配や証拠品の借り出しなどの事前準備、供述内容をまとめた供述調書の作成などがあります。
なお、取調べ事務の詳細については下記記事をご確認ください。
事件捜査
検察庁では取調べ以外に証拠品の精査や事件現場の確認などの事件捜査も行っています。
証拠品の精査の一例として防犯カメラ映像のチェックがありますが、検察官だけでなく立会事務官も確認し、場合によっては立会事務官が捜査報告書の作成を行います。
また、逃亡している被疑者の所在捜査や独自捜査などもありますが、事件捜査の詳細については下記記事をご確認ください。
事務処理
立会事務官はその名の通り「事務官」になりますので、事務処理がメイン業務になります。
事件配点時には必要事項の各種照会などを行い、事件処理時には決裁準備や事件記録の回付などを行います。
上記以外にも細かい事務仕事はたくさんありますが、事務処理の詳細については下記記事をご確認ください。
公判事務
公判担当検察官は起訴された事件が適正に裁かれるよう公判で立証活動を行いますが、その検察官の公判活動をサポートする仕事が公判事務に当たります。
具体的には、捜査部から回付された起訴状・事件記録・証拠品の精査や整理、被害者や目撃者などの証人テストの日程調整、裁判所に提出する書類の作成などがあります。
なお、捜査部と公判部が分かれている部制庁では、まず捜査部の立会事務官を経験してから公判部の立会事務官を経験することになります。
- 立会事務官の仕事は捜査事務と公判事務。
- 捜査事務は事件捜査から事務処理と仕事内容が多岐に渡る。
- 部制庁ではまず捜査部の立会事務官を経験してから公判部。
では次に、立会事務官の働き方について見ていきたいと思います。
立会事務官の働き方について
立会事務官の働き方については、下記項目についてそれぞれ見ていきたいと思います。
超過勤務(残業)
立会事務官になると超過勤務(残業)が多いと思われがちですが、超過勤務の多寡は担当する事件数と処理件数によって変わります。
立会事務官の仕事量は重大な事件も軽微な事件もさほど変わらないので、担当する事件数が多くなるほど仕事量が多くなり、結果として超過勤務も増えます。
- 事件の重要度
シニア検事>A庁検事>副検事 - 事件の配点数
シニア検事<A庁検事<副検事
一般的に重大な事件を担当するシニア検事の立会事務官より軽微な事件を多く担当する副検事の立会事務官の方が忙しいです。
また、年末や年度末は在宅事件の未済件数をゼロに近づけなければなりませんので、事件の処理件数が増える立会事務官にとっての繁忙期となります。
ちなみに、予定がある場合は他の立会事務官に代わってもらえますので、プライベートが制限されるということはありません。
休日出勤
立会事務官になると休日出勤が多いと思われがちですが、休日出勤する場合はほぼ平日に来庁できない参考人聴取に限られますので、頻度はそう多くありません。
参考人聴取も丸一日かかるなんてことはありませんので、4時間の休日出勤が一般的となります。
- 特別捜査部
事件着手中(被疑者勾留中)は休み無し - 本部係
捜査一課担当の重大事件発生時は現場に臨場する必要あり
ちなみに、休日出勤をしなければならない日に予定が入っていた場合は他の立会事務官に代わってもらえますので、前もって旅行などの予定を入れること問題ありません。
出張勤務
立会事務官になると出張勤務が多いと思われがちですが、出張する場合は限られますので、頻度は年に数回程度となります。
- 参考人等の取調べ
- 専門家からの聴取
- 証拠品の押収手続
出張する場合、立会事務官は旅程の確定やホテルの手配などアテンド業務のような仕事もありますが、詳しくは下記記事をご確認ください。
有給休暇
立会事務官になると有給休暇を取れないと思われがちですが、以下の事情から年次休暇は取りやすく、取る機会も多いです。
- 担当検察官がいないとき※は自由に休暇を取れる。
※振替休日・研修・勉強会など - 取調べが無いときは自由に休暇を取れる。
→取調べがあっても他の立会事務官に応援を頼めるときは休暇取得可能。
担当検察官がいないと立会事務官のやる仕事はほとんどありませんし、検察官がいる日でも取調べや急ぎの事務処理も無ければ休んでも支障がありません。
また、検察官は夏休みを2週間~3週間連続で取得しますので、立会事務官の夏休みも2週間~3週間連続で取得できます。
ちなみに、私は立会事務官を3年経験しましたが、年次休暇を無駄にしたことは一度もありませんでした。
- 超過勤務の多寡は担当する事件数に左右される。
- プライベート予定が入っている時間外勤務や休日出勤が発生しても他の立会事務官に代わってもらえる。
- 立会事務官は比較的自由に休日を取得できる。
→夏休みは2週間~3週間
おわりに
今回は、立会事務官の仕事内容・働き方の概要について紹介してきました。
立会事務官は若手検察事務官が必ず経験する職種になりますので、仕事内容や働き方の実態を理解した上で、是非、検察事務官を志望してもらえればと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。