研修制度

新規採用職員も安心できる!検察事務官の研修制度について

こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。

検察事務官の研修制度については,検察庁のホームページにも記載がありますが,あまりにも簡素に書かれ過ぎていて,実態がよく分からないと思います。

そこで今回は,検察事務官にどのような研修制度が用意されているのか,より詳しく紹介していきたいと思います

来年から検察事務官になる方はもちろん,これから検察事務官を目指す公務員受験生の方も是非見て参考にしてもらえればと思います。

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検察事務官の研修の概要

まず,検察事務官の研修ですが,法務総合研究所(以下「法総研」)いう法務省の機関が取り行っています。

そして,法務総合研所による研修は,大きく分けると以下の二つとなります。

  • 地方研修
    全国8か所にある支所での研修
  • 中央研修
    東京にある本所での研修

地方研修と中央研修の違いですが,基本的には,地方研修は在籍年数に応じた職員が必ず参加する研修であるのに対し,中央研修は全国の地検から選ばれた職員や一定の役職者が参加する研修となっています。

また,研修の実施方法は対象者が一か所に集まる集合研修の形で行われ,研修期間中は,基本的には宿泊施設に泊まり込みとなります。

では,実際にどのような研修があるのか,それぞれ見ていきたいと思います。

地方研修について

検察事務官が受ける地方研修は以下の研修となります。

  • 初等科研修
  • 中等科研修
  • 専修科研修
  • 特別科研修

地方研修は,高等検察庁(以下「高検」)管内を一つの単位として行われるため,研修場所は高検所在地となります。

ちなみに,研修対象者が少ない高検(高松や仙台)は,別の高検と合同で行われることになります。

では,研修の中身について,それぞれ見ていきたいと思います。

初等科研修

まず,初等科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

行政職俸給表(一)の新規採用職員を対象とし,検察事務官として必要な基礎的知識及び技能を習得させて,事務能率及び人格識見の向上を図ることを目的とする。

では,研修の対象者や期間などについて見ていきたいと思います。

  • 研修対象者
    新規採用職員
  • 研修期間
    30日前後
  • 研修開始月
    4月中旬~5月上旬頃
  • 研修目標
    基礎的知識・技能の習得

初等科研修は,大卒程度・高卒程度関係なく,全ての新規採用職員が受ける研修になります。

検察庁の仕事は刑事手続きに関する仕事のため,刑法や刑事訴訟法などの法律知識はもちろん,刑事手続きの流れについても理解する必要がありますが,この初等科研修を受けることによって,基礎的な知識・技能を学ぶことができます

期間もみっちり1か月間ありますので,検察庁の仕事ができるか不安な方も,安心して入庁してもらえればと思います。

ちなみに,高検管内の同期が一堂に会する泊まり込みの研修になりますので,初等科研修期間は楽しい1か月間になりますね。

中等科研修

次に,中等科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

初等科研修を終了後ほぼ5年を経過した者若しくは国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)合格者で採用後ほぼ2年を経過した者を対象とし,検察事務官として必要な比較的高度の知識及び技能を習得させて,事務能力の向上を図るとともに捜査・公判の実務能力を育成し,かつ,人格識見の向上を図ることを目的とする。

では,研修の対象者や期間などについて見ていきたいと思います。

  • 研修対象者
    大卒程度3年目・高卒程度5年目
  • 研修期間
    40日前後
  • 研修開始月
    10月~1月頃
  • 研修目標
    比較的高度の知識・技能の習得

中等科研修は,大卒程度3年目高卒程度5年目の職員が対象になりますので,初等科研修を受けたときと若干顔ぶれが異なります

また,中等科研修には,他官庁で特別司法警察職員として捜査に従事している聴講生(海上保安官や国税査察官など)や,法務省内人事交流制度によって地検に出向している方も参加しています。

そのため,普段聞くことができない他官庁の仕事について話を聞くことができるため,非常に視野が広がる有意義な研修となります。

ちなみに,中等科研修で1位(人数多いと2位も)になると,特昇して2号俸昇給しますので,勉強ガチ勢も増えますね。

専修科研修

次に,専修科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

中等科研修を終了後ほぼ4年ないし7年を経過した者を対象とし,検察事務官として必要な専門的知識及び技能を修得させて,職務の遂行に不可欠な実務的で高度な執務能力を涵養し,かつ,人格識見の向上を図ることを目的とする。

では,研修の対象者や期間などについて見ていきたいと思います。

  • 研修対象者
    大卒程度7年目・高卒程度9年目
  • 研修期間
    40日前後
  • 研修開始月
    9月~1月頃
  • 研修目標
    専門的知識・技能の習得

専修科研修は中等科研修の4年後に行われるため,対象者は中等科研修と同じになります。

専修科研修の対象者は採用7年目と9年目になるため,ある程度,検察庁の仕事に精通しています。

そのため,より専門的な学習が行われ,テストも記述式で問題が出されるようになります。
※専修科研修の詳細については別の記事で紹介予定。

ちなみに,専修科研修で1位(人数多いと2位も)になると,特昇はありませんが,FBIの研修に参加することができます。

特別科研修

最後に,特別科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

専修科研修を終了又は任官後ほぼ10年を経過した検察事務官を対象として,検察行政事務,検務事務及び捜査・公判事務に関し,検察事務官として必要な専門的知識及び技能を修得させて,事務能率及び人格識見の向上を図ることを目的とする。

では,研修の対象者や期間などについて見ていきたいと思います。

  • 研修対象者
    検察官事務取扱検察事務官の発令を受けた者
  • 研修期間
    7日前後
  • 研修開始月
    高検により様々
  • 研修目標
    捜査・公判事務の専門的知識・技能の習得

特別科研修は,全ての検察事務官が受ける研修ではなく,検察官事務取扱検察事務官(通称「検取」)の発令を受けた人が対象の研修になります。
※検察官事務取扱検察事務官の詳細については別の記事で紹介予定

検取とは,軽微な事件について自身で取調べを行い,起訴・不起訴の刑事処分を自ら行う職種になるので,初めて検取発令を受ける人は,この特別科研修で捜査・公判の専門的知識を学ぶことになります。

ちなみに,検取の多くは,副検事試験合格を目指す30歳前後の方が多いですね。

副検事試験の詳しい内容については,以下の記事でご確認いただけます。

国家一般職から法曹に!?副検事の概要となり方について【元検察事務官が徹底解説】こんにちは。 元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。 本記事では、副検事の概要となり方について詳...

では次に,中央研修について見ていきたいと思います。

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中央研修について

検察事務官が受ける可能性がある中央研修は以下の研修となります。

  • 組織間人事交流研修
  • 特別専攻科研修
  • 裁判員裁判担当中核事務官研修
  • 高等科研修
  • 統括捜査科研修
  • 管理課研修
  • 管理研究科研修

中央研修は,全国から研修対象者が一同に集まり,法務省内で研修が行われます。

ちなみに,研修期間中,研修生は,千葉県浦安市にある法務省浦安総合センターに宿泊することになります。

では,研修の中身について,それぞれ見ていきたいと思います。

組織間人事交流研修

まず,組織間人事交流研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

組織間人事交流前に法務省の各組織の所管事務及び各組織間の関連について基礎的知識を習得させるとともに,研修員の相互理解を通じて法務省職員としての一体感を培うことによって,人事交流対象者の士気を高揚させ,法務省内組織人事交流の円滑な導入・運営に資することを目的とする。

では,研修の対象者や期間などについて見ていきたいと思います。

  • 研修対象者
    法務省内組織間人事交流対象者
  • 研修期間
    3日か4日
  • 研修開始月
    3月中旬
  • 研修目標
    法務省内組織間人事交流対象者のフォロー

組織間人事交流研修は,翌年度に法務省内組織間人事交流により他省庁に出向する職員が対象の研修になります。

他省庁に出向する職員は,出向先でどのような仕事をするのか不安であるため,その不安を解消するためにこのような研修が設けられています。

研修内容としては,研修生同士がお互いの職場の仕事内容を教え合ったり出向経験者への質疑応答などがあります。

そのため,出向前の不安をある程度解消することができるため,有意義な研修となります。

組織間人事交流の詳しい内容については,以下の記事でご確認いただけます。

検察事務官の出向について【法務省内組織間人事交流】こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。 今回は,検察事務官の出向の内,「法務省内組...

特別専攻科研修

次に,特別専攻科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

検察官事務取扱検察事務官等で将来検察事務(捜査・公判)に専従する志望を有している者に対し,これに必要な高度の専門的知識及び技能を修得させるとともに,人格識見の向上を図ることを目的とする。

では,研修の対象者や期間などについて見ていきたいと思います。

  • 研修対象者
    副検事を志望する人
  • 研修期間
    17日前後
  • 研修開始月
    12月頃
  • 研修目標
    副検事試験合格に向けた勉強会

特別専攻科研修は,副検事試験を受験予定の職員に対し,試験対策を行う研修となります。

しかし,副検事試験を受験予定者全員が受けられる研修ではなく,検事長から推薦される優秀な職員しか参加することができないため,参加人数は毎年40名程度となっています。

研修内容は,講師である検察官の講義と,ひたすら答練となりますので,勉強合宿みたいな研修となります。

ただ,参加できれば間違いなく学力が向上する研修になりますので,副検事を志望する方は是非とも参加したい研修となります。

副検事試験の詳しい内容については,以下の記事でご確認いただけます。

国家一般職から法曹に!?副検事の概要となり方について【元検察事務官が徹底解説】こんにちは。 元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。 本記事では、副検事の概要となり方について詳...

裁判員裁判対象事件担当中核事務官研修

次に,裁判員裁判対象事件担当中核事務官研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

検察事務官の中核として,裁判員裁判対象事件の捜査・公判等において重要度や裁量性の高い業務を遂行するための専門的知識及び技能を修得させるとともに,人格識見の向上を図ることを目的とする。

では,研修の対象者や期間などについて見ていきたいと思います。

  • 研修対象者
    中核事務官
  • 研修期間
    17日前後
  • 研修開始月
    10月頃
  • 研修目標
    中核事務官としての技能習得

裁判員裁判対象事件担当中核事務官研修とは,名前のとおり,中核事務官となった職員に対する研修となります。

普通の裁判では,警察などの捜査機関が集めた証拠に基づいて犯罪の立証を行いますが,裁判員裁判では,裁判員に分かりやすいように中核事務官が作成した証拠書類に基づいて犯罪の立証を行います

この中核事務官が作成する証拠書類は,「統合捜査報告書」というもので,複数の証拠を組み合わせ,裁判員が一目で見て分かるようにした書類になります。

そのため,この統合捜査報告書を作成するには専門的な知識が必要となりますので,中核事務官になった職員に対して研修を行っています。

ちなみに,中核事務官には,大体30代後半くらいの優秀な事務官がなっていましたね。

高等科研修

次に,高等科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

将来の幹部検察事務官育成のため,高度の知識及び技能を修得させ,管理・指導能力の育成を図るとともに,捜査・公判部門,事務局部門,検務部門,企画調査部門に関する能力と素養を涵養し,かつ,人格識見の向上を図ることを目的とする。

では,研修の対象者や期間などについて見ていきたいと思います。

  • 研修対象者
    将来の幹部候補生
  • 研修期間
    60日前後
  • 研修開始月
    5月と1月
  • 研修目標
    管理指導能力の育成

高等科研修は,将来の幹部候補生しか参加することができない研修で,毎年年2回,各回約70名が参加する研修となります。

この研修では,各法律科目などの講義に加え,管理指導能力の開発講座やグループワークなどを行いますが,全国から幹部候補生として選ばれた優秀な事務官が集まるので,人脈を広げることができます。

検察事務官として出世したい人は是非とも参加したい研修となります。

ちなみに,30代後半から40代前後の優秀な事務官が高等科研修に参加していましたね。

統括捜査科研修

次に,統括捜査科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

捜査に専従する上級の検察事務官として必要な専門的知識及び知能を修得させて,捜査能力を高めるとともに,人格識見の向上を図ることを目的とする。

統括捜査科研修以降については,役職に就いた事務官が参加する研修になりますので,詳しい説明は省略します。

管理科研修

次に,管理科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

課長又はこれに準ずる者として必要な管理,監督等に関する知識及び技能を修得させて,管理能力を高めるとともに,人格識見の向上を図ることを目的とする。

管理研究科研修

最後に,管理科研修についてですが,法総研は以下のように説明しています。

地方検察庁の事務局長又はこれに準ずる者として必要な高度の管理能力を修得させることを目的とする。

では,最後に,その他の研修について見ていきたいと思います。

その他の研修

法総研が主催する研修の他にも各種研修があり,全てを網羅していませんが,以下のようなものがあります。

  • 各検察庁の自庁研修
  • 他省庁主催の研修

私が知り得る限りの研修は以上ですが,その中身について,知り得る限りの情報を紹介したいと思います。

各検察庁の自庁研修

各検察庁では独自の自庁研修を行っていますが,例として以下のような研修がありますので,それぞれ見ていきたいと思います。

  • 立会研修
  • 中間期研修
  • 資格研修

立会研修

検察事務官の代表的な仕事に検察官とペアになって検察官をサポートする立会事務官の仕事がありますが,新規採用職員を対象に立会事務官の仕事を体験する立会研修を行っている検察庁は多いです。

研修期間はだいたい1週間くらいが一般的になります。

研修内容は先輩立会事務官に付きっきりで立会事務官の仕事を学ぶというものですが、取調べにも同席し供述調書の作成も体験できますので、立会事務官の仕事の雰囲気を掴むことができます。

中間期研修

中間期研修は中等科研修に参加した者が翌年と翌々年に必ず受ける研修で、翌年は論述(憲法・民法・刑法・刑訴・検察庁法)の提出翌々年は検務部門での仕事体験となります。

論述課題の提出は点数が付けられるわけではありませんが、検察官から添削され、後日検察官からの解説講義もありますので、しっかり勉強した上で課題を提出する必要があります。

検務部門の仕事体験は、各担当の仕事を1日か2日ほど体験し、全ての検務担当を一通り経験するという研修になります。

資格研修

資格研修は,資格専門予備校などに通って資格取得を目指す研修で,簿記研修外国語研修などがあります。

この研修は公募制となっているため,募集案内が来た際に,志望理由などを記載して申し込むという形になります。

最終的に,簿記なら資格取得外国語研修ならTOEFL何点以上とかを取らなければならないので,勉強に励む必要があります。

他省庁実施の研修

検察事務官は国家公務員なので,人事院や財務省などが実施する研修に参加することができます

財務省実施の研修として「会計事務職員研修」という研修がありますが,この研修は全国の国家公務員(裁判所も含む)や地方自治体の会計事務職員を対象とした研修で,簿記や予算・決算などを学びます

私がいた検察庁では会計課の主任が研修に参加していました。

ちなみに,会計事務員研修でもテストの上位者には特昇がありますが、基準が上位30%とハードルが低いので、研修に参加することができたら是非特昇を狙いたいですね。

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おわりに

今回は,検察事務官の研修制度について紹介しました。

国家公務員のメリットの一つは充実した研修制度ですので,検察庁志望者の方はもちろん,地方公務員志望の方も参考にし,志望先を選んでもらえたらと思います

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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