こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,検察事務官の出向の内,「法務省内組織間人事交流」について紹介していきます。
国家公務員の魅力の一つとして,他官庁へ出向し,色んな経験を積めるということがありますが,法務省内では積極的に人事交流を行っているので,国家公務員志望の方は是非最後までお読みください。
組織間人事交流の概要
まず,組織間人事交流の概要について,対象官庁・対象者・期間・研修について見ていきたいと思います。
対象官庁
対象官庁ですが,法務省内の出先機関や外局が対象官庁となります。
- 検察庁
- 法務局
- 矯正管区
刑務所・拘置所・少年院など - 保護観察所
- 出入国在留管理局
- 公安調査局
上記の官庁間での出向を組織間人事交流と言います。
対象者
組織間人事交流に参加できる対象者ですが,俸給が2級の職員が基本で,3級に昇格したての職員も参加することができます。
ですので,大体30歳前後の職員が対象となります。
ちなみに,他官庁への希望者はもちろんですが,特に希望していなくても出向となる可能性はあります。
期間
出向期間ですが,これは2年間と決まっています。
2年間の期限付きですし,自身の評価にもつながりますので,出向は行ってみてもいいかもしれないですね。
組織間人事交流研修
出向に行くことになった対象者は,出向前の3月中旬に,3日~4日程度,法務省で行われる「組織間人事交流研修」に参加します。
この研修の目的は以下になります。
組織間人事交流前に法務省の各組織の所管事務及び各組織間の関連について基礎的知識を習得させるとともに,研修員の相互理解を通じて法務省職員としての一体感を培うことによって,人事交流対象者の士気を高揚させ,法務省内組織人事交流の円滑な導入・運営に資することを目的とする。
研修では,全国の組織間人事交流対象者が東京に集まり,法務省に通える人以外は千葉県浦安市にある法務省浦安総合センターに宿泊することになりますので,研修員同士でより仲良くなることができます。
研修内容としては,以下のようなことを行っています。
- 出身庁が同じものでチームとなり,他官庁のものに自身の出身庁について説明
- 出向先が同じものでチームとなり,出向先で起こりうる事案について検討・発表
- 出向経験者による体験談講和・質疑応答
- メンタル面に対する講義
出身庁が同じ人がチームとなって自身の出身庁について他官庁の人に説明したり,出向先が同じ人がチームとなって出向先で起こりうる事案について検討・発表したりすることによって,他官庁の仕事に対する相互理解が図られます。
また,出向経験者の体験談を聞いたり質問をすることによって,より出向についてのイメージを持つことができます。
出向は全く違う組織に行くことなので大変不安も大きいでしょうが,出向者に対するフォロー体制ができていることが分かりますね。
また,全国から組織間人事交流対象者が集まるため,人脈が広がりますので,非常に有意義な研修となります。
では,次に,検察庁からの出向について見ていきたいと思います。
検察庁からの出向
検察庁からの出向ですが,業務内容は出向先により異なります。
※出向先の業務については別の記事で紹介予定
出向先に関わらず共通している事項としては,出向先の中等科研修に参加するということです。
中等科研修も出向先によって異なり,検察庁の中等科研修では高検単位で行われますが,保護観察所や出入国在留管理局などは全国単位で行われ,期間は1~2か月程度になります。
そのため,人脈も広がりますし,出向先の業務に対する知識を深めることができます。
この出向先の中等科研修に参加できるということも,組織間人事交流の魅力の一つかと思います。
では,次に,検察庁への出向について見ていきたいと思います。
検察庁への出向
検察庁への出向の場合,出向者が配属される部署はある程度以下のように決まっています。
- 事件担当や徴収担当などの検務部門に配属
中等科研修に参加 - 捜査公判部門の立会事務官に配属
では,出向1年目から見ていきたいと思います。
出向1年目は検務部門
出向1年目ですが,検務部門のいずれかに配属されます。
出向者は,刑事手続きについて全く分からない状態で出向してきているので,検察庁の業務の流れを把握するため,検務部門に配属されますが,配属先は出身庁によって異なります。
一番オーソドックスな配属先は事件担当です。
事件担当は刑事手続きの入口と出口と言われる仕事なので,刑事手続きを学ぶのに一番適している部署と言えます。
事件担当の仕事の詳細については下記記事で確認いただけます。

また,私がいた検察庁への出向者で矯正管区出身の方は徴収担当に配属されていましたね。
※徴収担当の仕事は別の記事で紹介予定
徴収担当の仕事には,罰金未納者に対する労役場収容などがありますので,矯正管区の仕事と類似性があることが理由かもしれないです。
出向1年目では,検務部門の仕事の他に中等科研修に参加することになりますので,中等科研修について見ていきたいと思います。
中等科研修に参加
中等科研修は高検単位で開催され,時期は秋から冬のいずれかの時期で,期間は40日前後となります。
中等科研修の詳細については下記記事で紹介しています。
https://moto-kensatsujimukan.com/training-secondary/
ちなみに,私が参加した中等科研修には法務局出身の方が参加していましたね。
中等科研修に参加している検察事務官は採用3年目(大卒程度)と5年目(高卒程度)と比較的年齢が若いため,出向者の方は比較的馴染みやすいと思いますよ。
宿泊所で飲み会も結構やってましたしね。
では,最後に2年目に配属される立会事務官について見ていきます。
2年目は立会事務官
出向者は,2年目に必ず立会事務官に配属されます。
出向者に会事務官を経験させる理由は,刑事手続きの一連の流れをほぼ理解することができるからです。
立会事務官の仕事の詳細については下記記事で紹介しています。



また,検察官とペアになって捜査をするという仕事は,非常に貴重な体験であるため,出向者の方は立会事務官を経験できて非常に有意義だったと感じてくれていましたね。
法務省内で検察庁以外の官庁の方は,是非検察庁への出向を希望してもらえればと思います。
【参考】出向先にそのまま残れる!?
この話は参考程度に見てもらえればと思いますが,実は,希望すれば出向先にそのまま残るということも可能みたいです。
この制度を「転籍」と言うみたいですが,ほとんどいないので,法務省内の職員でもほとんどの人が知らないですね。
私も検察事務官時代は転籍について知りませんでしたが,このブログの運営に当たり,法務省内の制度等を調べていく内に,偶然,元出入国在留管理局職員の方で出身庁が公安調査庁の方がいることを知り,転籍の制度を知るに至りました。
転籍の条件等は不明ですが,まず間違いなく組織間人事交流によって出向することは必須条件になるかと思います。
ですので,検察庁志望者の方で,もし検察庁から内定をもらえなかった場合,この転籍制度によって検察事務官になることも可能となりますので,法務省内の他官庁に入庁することも選択肢の一つとして考えられますね。
また,法務省内の他官庁職員は副検事試験の受験資格もあるため,併願先としてお勧めです。
副検事試験についての詳細は各記事をご確認ください。

おわりに
今回は,検察事務官の出向の内,法務省内組織間人事交流について紹介しました。
検察庁や法務省内の他官庁を志望する公務員受験生は,法務省内にはこのような制度があると知ったうえで志望先を決めてもらえればと思いますので,是非参考にしてみてください。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。