こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は、検察事務官の人事異動の内、霞が関勤務(法務省・最高検察庁)について詳しく紹介していきたいと思います。
検察事務官として出世するためには霞が関勤務は避けては通れませんので、現役の検察事務官の皆さんはもちろん、検察事務官志望の方も是非参考にしてもらえればと思います。
霞が関勤務の概要について
国家公務員である検察事務官は中央省庁が集まる霞が関で勤務する機会がありますので、霞が関勤務の概要として下記項目を見ていきたいと思います。
霞が関所在の省庁
検察事務官が異動する可能性のある霞が関所在の省庁は下記3つの省庁になります。
法務総合研究所の一部の部署(総務企画部・研修部)は霞が関所在ですが、法務総合研究所については別の記事で紹介します。
では、法務省と最高検察庁についてそれぞれ見ていきたいと思います。
法務省HP「法務省の組織図」参照
法務省
検察庁は法務省の特別の機関になりますので、検察事務官は人事異動によって法務省勤務となる可能性があります。
- 大臣官房
- 民事局
- 刑事局
- 矯正局
- 保護局
- 人権擁護局
- 訟務局
なお、基本的に検察事務官は大臣官房か刑事局のいずれかへの配属となります。
大臣官房では、主として法務行政が円滑に運営されるよう各部局間の総合調整の事務を行います。
- 秘書課
- 人事課
- 会計課
- 国際課
- 施設課
- 厚生管理課
- 司法法制部
刑事局では、刑法・刑事訴訟法などの刑事法制に関する企画及び立案に関すること、検察に関すること、犯罪人の引渡し及び国際捜査共助に関することなどを行います。
法務省における総合職職員の採用形態は「局別採用」
→刑事局での総合職職員の採用はないため、検事と検察事務官(国家一般職)で構成される。
なお、検察事務官は公安職(二)俸給表が適用されますが、法務省勤務になると行政職(一)俸給表が適用されることになります。
最高検察庁
最高検察庁の職員は検事と検察事務官で構成されますので、地検・高検所属の検察事務官は人事異動によって最高検勤務となる可能性があります。
- 事務局
- 総務部
- 監察指導部
- 刑事部
- 公安部
- 公判部
最高検の部局は地検・高検の部局と基本的に同じになります。
そのため、扱う事件が異なるだけで仕事内容は地検・高検の仕事とほとんど同じとなります。
日本の刑事裁判における「三審制」
第一審 :地方・簡易裁判所
第二審(控訴審):高等裁判所
第三審(上告審):最高裁判所
なお、最高検察庁勤務になっても公安職(二)俸給表のままなので、俸給表面は最高検察庁の方が法務省より待遇が良いです。
霞が関への人事異動
法務省や最高検への人事異動ですが、私の知る限り、最短で採用3年目から異動が可能となります。
異動のパターンは以下の2パターンがあります。
- 地検から異動するパターン
- 高検から異動するパターン
一般係員の場合は高検経由での異動がオーソドックスかなと思います。
ちなみに、法務省や最高検には優秀な職員しか異動できないと思われがちですが、異動希望者が少ないので、余程でない限り希望すれば異動できるようです。
霞が関での勤務期間
法務省や最高検での勤務期間ですが、基本的に4年間と決まっていますので、4年経つと原庁である地検か高検に戻ることができます。
なお、4年間という期間はあくまで基本ですので、希望があれば期間の延長や短縮も可能です。
ただ、1年で戻りたいという希望は人事評価上あまりよろしくないみたいですので、霞が関勤務を希望する際は4年間は勤務する覚悟をしておいた方がいいですね。
- 霞が関所在の省庁は法務省・最高検察庁・法務総合研究所(※)。
※総務企画部・研修部のみ - 霞が関への異動は採用3年目から可能。
- 霞が関での勤務期間は4年間。
では、次に、霞が関勤務のメリットについて見ていきたいと思います。
霞が関勤務のメリットについて
霞が関勤務と聞くと大変そうなイメージがあると思いますが、大変さに見合う霞が関勤務のメリットがあります。
特に若手職員にとっては以下2点のメリットが大きいので、それぞれ見ていきたいと思います。
人事評価面のメリット
国家公務員の基本給である俸給は毎年昇給し、地方検察庁の検察事務官は基本的に4号俸ずつ昇給していきます。
特に職務の級が2級以下の若手職員で6号俸以上の昇給はほぼ受けられませんが、霞が関勤務では若手職員でも最低6号俸昇給することができます。
4年間の勤務の中で8号俸昇給する年もあるみたいなので、地方検察庁勤務の同期と俸給に大きな開きが生じることになります。
霞が関勤務4年間で2回ずつ6号俸・8号俸昇給をした場合、4号俸ずつ昇給した同期と12号俸もの差が生じる。
【例】大卒採用10年目4月時点の俸給
・4号俸ずつ昇給:2級25号俸
・霞が関4年勤務:2級37号俸
人事評価面のメリットは若手職員ほど大きいので、出世に興味がある方は若手の内に霞が関勤務を希望してもらえればと思います。
給与面のメリット
国家公務員には様々な諸手当がありますが、霞が関勤務ならではの手当や支給割合が増える手当として以下の手当があります。
これらの手当によって年収が大幅に増える場合もありますので、それぞれ見ていきたいと思います。
本府省業務調整手当
本府省業務調整手当とは本府省の業務に従事する職員に支給される手当になりますので、法務省と最高検察庁は支給対象となります。
法務総合研究所の総務企画部(※)と研究部は本府省業務調整手当の支給対象。
※人事院が定めるものを除く
支給額は俸給表別に定められていますが、行政職(一)と公安職(二)の支給額は以下となります。
職務の級 | 支給額 |
7級以上 | 41,800円 |
6級 | 39,200円 |
5級 | 37,400円 |
4級 | 22,100円 |
3級 | 17,500円 |
2級 | 8,800円 |
1級 | 7,200円 |
本府省業務調整手当は他の手当の支給額に影響しませんので、単純に支給額×12か月分が年収増となります。
地域手当と広域異動手当
地域手当と広域異動手当は霞が関勤務ならではの手当ではありませんが、霞が関勤務を経ることで支給割合が増える手当となります。
- 地域手当
主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給される手当 - 広域異動手当
官署間の距離等が60㎞以上の広域的な異動等を行った職員に対し、官署間の距離に応じ、異動等の日から3年間支給される手当
まず、地域手当ですが、東京地検・高検以外から異動してきた人の支給割合は20%に上がります。
また、地域手当の異動保障によって霞が関から採用庁である原庁に戻った後も恩恵を受けることができます。
支給割合のより低い地域、支給地域外に異動した場合の支給割合
異動1年目:異動前の支給割合100%
異動2年目:異動前の支給割合 80%
異動3年目:異動後の支給割合(※)
※異動保障なし
つまり、霞が関から戻って2年間は高い支給割合の地域手当を受けられるということになります。
次に、広域異動手当ですが、地域手当>広域異動手当の場合は支給されませんので、霞が関勤務中は特にメリットはありません。
広域異動手当の恩恵受けられるのは霞が関から原庁に戻った3年目になります。
支給割合20%→0%の地域に異動
異動距離300㎞以上(10%)
異動1年目:地域手当 20%
異動2年目:地域手当 16%(※)
※20%×80%=16%
異動3年目:広域異動手当10%
つまり、地域手当の支給割合が低い地検・高検に戻る場合は戻って3年目も高い支給割合を受けられるということになります。
なお、地域手当や広域異動手当の支給割合はボーナスや超過勤務手当にも影響します。
霞が関勤務の給与面のメリットは大きいので、お金を稼ぎたい方は霞が関勤務を希望してもらえればと思います。
- 霞が関勤務の職員は、毎年最低でも6号俸昇給(※)できる。
※通常は4号俸昇給 - 地域手当の異動保障により、霞が関から原庁に戻って2年間は高い支給割合を受けられる。
→1年目20%、2年目16% - 広域異動の場合、霞が関から原庁に戻って3年目は5%~10%の広域異動手当を受けられる(※)。
※原庁の地域手当が小さい場合
おわりに
今回は、検察事務官の人事異動の内、霞が関勤務(法務省・最高検察庁)について紹介してきました。
検察事務官の場合、霞が関への異動はそれほど難しくありませんので、やりがいはもちろん、出世や給料アップに興味がある方は是非希望してももらえればと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。