こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では、検察事務官の研修制度の内、初等科研修について詳しく紹介していきたいと思います。
初等科研修は新規採用職員が必ず受講する研修になりますので、検察庁内定者の皆さんはもちろん、検察事務官志望の方も是非参考にしてもらえればと思います。
初等科研修の概要について
初等科研修の概要については、下記項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
初等科研修の対象者
初等科研修の対象者は、新たに検察庁に入庁した新規採用職員が研修対象者となります。
行政職俸給表(一)の新規採用職員を対象とし、検察事務官として必要な基礎的知識及び技能を習得させて、事務能率及び人格識見の向上を図ることを目的とする。
なお、研修対象者に採用試験(高卒・大卒)は関係ありませんので、高卒も大卒も新規採用職員は同じタイミングで同じ研修を受けることになります。
ちなみに、中等科研修以降は高卒と大卒で研修受講のタイミングがずれますので、初等科研修が採用同期全員で受講できる唯一の研修となります。
初等科研修の実施方式
初等科研修は地方研修になりますので、全国8か所の各高等検察庁が実施庁となります。
地方研修:法務総合研究所の支所(※)
※全国8か所の高等検察庁
中央研修:法務総合研究所
なお、研修対象者が少ない場合は複数の高検が合同で実施する場合があります。
- 令和5年度の合同実施
東京・高松、名古屋・広島、
仙台・札幌 - 令和4年度の合同実施。
大阪・高松、仙台・札幌
高松高検と札幌高検は採用人数が少ないのでほぼ100%合同実施となります。
では、初等科研修の実施方式について、下記項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
研修期間
初等科研修の研修期間については実施庁によって異なりますが、令和5年度は下記のスケジュールで実施されています。
実施庁 | 期間 | 日数 |
東京高検 | 4月12日~5月26日 | 45日 |
高松高検 | ||
大阪高検 | 5月8日~6月2日 | 26日 |
名古屋高検 | 5月9日~6月2日 | 25日 |
広島高検 | ||
福岡高検 | 5月15日~6月7日 | 24日 |
仙台高検 | 5月16日~6月9日 | 25日 |
札幌高検 |
概ねゴールデンウィーク明けから研修がスタートしますが、東京高検のみ4月中旬からスタートと早めの開始で日数も長くなります。
研修・宿泊場所
初等科研修は研修員が一か所に集まって講義を受ける集合研修になりますが、研修場所は法務省浦安総合センターか法務総合研修所の各支所となります。
また、検察事務官の集合研修は基本的に全寮制となりますので、研修場所=宿泊施設にもなります。
東京高検:法務省浦安総合センター
東京以外:法務総合研究所○○支所
宿泊施設では一人一部屋が割り振られ、高検管内の同期と共同生活を送ります。
- 食事
各自で用意する必要があるが、食堂が利用できる宿泊施設もある。
- 風呂・シャワー
部屋にユニットバスがある宿泊施設もあるが、無い施設は共同の風呂・シャワーを利用する。
- 洗濯
宿泊施設に備え付けられている洗濯機と乾燥機を利用できる。
共同生活が苦手な人もいると思いますが、同期は今後仕事をしていく中で重要な存在になりますので、積極的に同期との親交を深めてもらえればと思います。
ちなみに、土日祝は外泊願を提出すれば自宅に戻ることもできますので、週末は自身のプライベートを優先させることもできます。
旅費
初等科研修は集合研修になりますので、下記2種類の旅費が支給されることになります。
- 往復旅費
研修場所までの往復交通費 - 研修日額旅費
研修1日当たりに支給される日当
往復旅費の金額は各人で異なりますが、研修日額旅費は1日当たり1,550円となります。
なお、研修期間中に旅費の請求を行いますので、研修期間終了間際か終了後に旅費が一括で支給されることになります。
- 初等科研修の対象者は新規採用職員で、採用同期(高卒・大卒)が一緒に受講する唯一の集合研修。
- 研修期間は1か月弱(4月中旬かGW明けスタート)で全寮制。
- 旅費(往復旅費・研修日額旅費)が支給される。
では次に、初等科研修の研修内容について見ていきたいと思います。
初等科研修の研修内容について
初等科研修の研修内容について下記項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
初等科研修の研修日程
初等科研修の研修日程ですが、1コマ50分の講義を1単位として1日7単位を受講することになります。
- 9:00~ 9:50
- 10:00~10:50
- 11:00~11:50
- 13:10~14:00
- 14:10~15:00
- 15:10~16:00
- 16:10~17:00
実施庁によって研修期間が異なるため受講する総単位数は庁によって異なりますが、研修要綱上は141単位が総単位数とされています。
初等科研修の研修科目
初等科研修では検察事務官として必要な基礎的知識を取得するために様々な講義を受けますが、分類すると以下の4種類の内容となります。
講師は検察官やベテラン検察事務官が担当しますので、高度な講義を受講することができます。
組織に関する科目
まず、組織・服務に関する科目ですが、以下の科目が用意されています。
- 検察の組織
- 裁判制度
- 関係機関概要
※赤字は効果測定あり
検察庁や関係機関といった組織について学ぶことができます。
法律に関する科目
次に、法律に関する科目ですが、以下の科目が用意されています。
- 法学
- 憲法
- 国家公務員法
- 検察庁法
- 民法
- 刑法
- 刑事訴訟法
※赤字は効果測定あり
「法学」では法律の読み方から学ぶことができますので、法律初学者の高卒程度採用者も安心して講義を受けることができます。
実務に関する講義
次に、実務に関する科目ですが、以下の科目が用意されています。
- 捜査・公判実務
- 検務事務手続
- 事件・令状事務
- 証拠品事務
- 執行事務
- 徴収事務
- 記録事務
- 犯歴事務
- 庶務・文書事務
- 人事・会計事務
※赤字は効果測定あり
これらの科目は検察事務官の実務に直結する知識になりますので、初等科研修の科目の中で最も重要な科目となります。
一般教養に関する科目
最後に、一般教養に関する科目ですが、以下のような科目が用意されています。
- 能力開発講座(マナー講座など)
- メンタルヘルス
- 情報セキュリティ
上記科目は一例で、年度や実施庁によって内容が変わりますが、概ね社会人に求められるスキルを学ぶ科目となります。
初等科研修の配布教材
初等科研修では、法務総合研究所が発刊している下記研修教材が配布されます。
教材名 | 科目 |
国家公務員法 | 国家公務員法 |
検察庁法 | 検察庁法 |
関係機関概要 | 関係機関概要 捜査・公判実務 |
文書事務解説 | 文書事務 |
会計事務解説 | 会計事務 |
法学概説 | 法学入門 |
憲法 | 憲法 |
民法Ⅰ(総則) 民法Ⅱ(物権・担保物件) 民法Ⅲ(債権法) 民法Ⅳ(親族法・相続法) |
民法 |
刑法入門 刑法総論 刑法各論その1 刑法各論その2 |
刑法 |
刑事手続概要 刑事訴訟法Ⅰ(捜査) 刑事訴訟法Ⅱ(証拠法) 刑事訴訟法Ⅲ(公判) |
刑事訴訟法 捜査・公判実務 |
立会事務 | 捜査・公判実務 |
検務事務入門 事件事務解説 証拠品事務解説 執行事務解説 徴収事務解説 記録事務解説 犯歴事務解説 |
検務事務全般 |
文書事務解説 | 文書事務 |
会計事務解説 | 会計事務 |
※赤字の教材は実施庁によっては配布なし
講義では、配布教材の他に入庁時に配布される検察講義案と検務事務必携や、講師が独自に用意するレジュメが用いられます。
なお、研修教材は実務や検察事務官等全国一斉考試の勉強にも重宝されます。
初等科研修の効果測定
初等科研修では、研修の成果を確認するために効果測定(テスト)が行われます。
効果測定は科目の区切りごとに行われますので、4回~5回に分けて実施されます。
- 憲法(50点)
- 国家公務員法(30点)
- 検察の組織(20点)
- 裁判制度(30点)
- 検察庁法(30点)
- 関係機関概要(40点)
- 刑法(50点)
- 刑事訴訟法(50点)
- 捜査・公判実務(30点)
- 事件・令状事務(20点)
- 証拠品事務(10点)
- 執行事務(10点)
- 徴収事務(10点)
- 記録・犯歴事務(20点)
※配点は一例
回答方式は〇✕方式が多いですが、空欄穴埋め方式などもありますので、高得点を取るにはしっかり勉強をする必要があります。
勉強方法については、法務総合研究所が発行する研修教材が中心となります。
ちなみに、初等科研修では成績1位を取っても特別昇給がありませんので、勉強より同期との親睦を深める方が大事かなと思います。
- 講義は1コマ50分で1日7コマ。
- 講義修了後に効果測定(テスト)が行われる科目がある。
- 成績1位を取っても初等科研修では特別昇給はない。
おわりに
今回は、検察事務官の研修制度の内、初等科研修について説明してきました。
初等科研修で検察事務官として必要な知識を習得することができますので、内定者の方や検察事務官志望者の方は安心してもらえたらと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。