こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,検察事務官の仕事のうち,立会事務官の出張取調べについて紹介していきます。
出張ってちょっとワクワクしますよね。
内定者の方やこれから検察事務官を目指している方は是非参考にして,立会事務官の仕事をイメージしてもらえればと思います。
なお,立会事務官の取調べ時の仕事については,下記記事でご確認いただけます。

- 本記事で説明する内容は令和3年4月時点のものとなります。
出張取調べの概要について
出張取調べの概要について,どういった場合に行うのか・頻度・場所ついて見ていきたいと思います。
出張取調べを行う場合
まず,出張取調べを行う場合としては,以下のパターンがあります。
- 来庁できない参考人からの事情聴取
- 専門家(医者等)からの事情聴取
など
参考人については,基本的には来庁してもらえるように依頼するのですが,来庁してもらえない場合は直接出向いて聴取させてもらいます。
実際にあった場合としては,事故の目撃者で,その後県外に引っ越したという場合や,窃盗グループの元仲間で,県外の刑務所に収監されている場合などがありましたね。
医者等の専門家については,仕事が忙しく,来庁してもらうことは不可能なので,アポイントを取って病院などの勤務先で聴取させてもらいます。
実際にあった場合として,法医学の権威に事件の意見を聞きに行ったり,被疑者を過去に診断していた精神科医に話を聞きに行ったりがありましたね。
出張取調べを行う頻度
次に,出張取調べを行う頻度ですが,これは配点されている事件によります。
私の立会事務官経験からすると,宿泊を伴う出張は年に1~2回,新幹線を使う長距離の出張は2か月に1回くらいの頻度でありました。
また,事件の重大性が増すからか分かりませんが,副検事の立会事務官をしていたときよりも,検事の立会事務官をしていたときの方が出張が多かったですね。
出張取調べを行う場所
次に,出張取調べを行う場所ですが,主に以下の場所となります。
- 供述人最寄りの検察庁
- 供述人最寄りの警察署・交番
- 供述人の自宅・勤務先
参考人の場合は,どこまで協力してくれるかにもよりますが,①→②→③の順番で取調べ場所を交渉することになりますね。
検察庁だとアクセスがいいのと,取調べに必要な機材が揃っているので,非常に助かります。
では,次に,出張の流れについて見ていきたいと思います。
出張取調べの流れについて
出張取調べの流れは以下のようになっています。
- 参考人等とのアポイント
- 旅行日程の確定
- 旅行命令の決裁
- 交通機関等の予約
- 出張当日
- 出張旅費の請求
では,上記流れについて,それぞれ見ていきたいと思います。
参考人等とのアポイント
参考人等との取調べのアポイント(日程・場所)については,私の立会事務官経験3年では,全て検察官がやっていました。
検察官からの事前相談は特になく,「何月何日にどこどこに取調べに行くことになったから」という風に報告を受ける感じになります。
旅程の確定
出張に行くことが決まると,目的地までどのように行くのかという経路や,宿泊が必要な場合は宿泊先を決めて,旅程を確定させる必要があります。
この旅程の確定は通常,立会事務官がやります。
取調べの日程は検察官がアポイントで決めていますので,絶対にそのアポイントに遅れないように余裕を持った旅程を組む必要があります。
なお,宿泊を伴う出張の場合は,パック商品を使用することが基本ですが,出張取調べの場合,急に決まることがほとんどなので,安価なパック商品を使えないことが多く,その場合はパック商品を使わなくても大丈夫となります。
旅行命令の決裁
旅程が確定すると,出張に行くという旅行命令の決裁を貰う必要があります。
決裁に必要な書類は「出張計画書」,「旅行命令簿」,「旅程表」になりますが,私が働いていた当時はエクセル等で作っていましたが,今は旅費システムで作成するみたいですね。
そのため,使用する交通機関や金額等をシステムに入力することで,必要な書類が出来上がるみたいです。
また,取調べを行う場所が供述人最寄りの検察庁の場合は,その検察庁に取調室の借用依頼をしなければなりませんので,依頼文書を作成し,こちらも決裁を貰う必要があります。
ちなみに,検察官にもよりますが,取調室を借りる場合はお土産を買っていっていましたね。
交通機関等の予約
出張当日までに,確定した旅程通りの交通機関の予約と,宿泊を伴う場合はホテルの予約をする必要があります。
後に説明しますが,出張の際は旅費が支給されますが,出張後(約2週間後くらい)に清算となりますので,まず交通費等は立替となります。
ちなみに,旅費の振込は登録している口座に振り込みとなりますので,検察官の分の交通費をまとめて立替えていると検察官から直接立替分を貰わないといけなくなるため,非常にめんどくさくなります。
そのため,私は,新幹線等の交通機関は乗る便を決めて,出張当日までにそれぞれで買うという方法にしていましたね。
ホテルの場合はまとめて予約しますが,現地払いが可能ですので特に問題はありませんでしたね。
出張当日
出張当日ですが,実際の仕事としては通常の取調べと何ら変わりありませんが,取調べを行うために必要なものを忘れずに持っていく必要があります。
出張に持っていくものとしては以下のものが必要となります。
- 出張用パソコン・プリンター
- 調書用紙
- 移動式録音録画機
- 印鑑・奥書セット
上記必要なものについて,それぞれ見ていきたいと思います。
出張用パソコン・プリンター
出張用パソコンとプリンターは,調書を作成する上で必須ですので,取調べ場所が供述人最寄りの検察庁以外の場合は必ず持っていくことになります。
おそらく,どの検察庁でも出張セットが設けられていると思いますので,そのセットを持っていけば大丈夫ですが,事前に以下の点をチェックしておく必要があります。
- 調書データを出張用パソコンに移しているか
- プリンターが稼働するかどうか
まず,調書データですが,調書にはひな形がありますので、事前に聴取対象者の調書のひな形を作って出張に持っていくことが望ましいです。
次に,プリンターですが,インクの残量を確認し,出張前にテスト印字を行うことが望ましいです。
実際にあった私の場合で,インクの残量は事前にチェックしていたものの,いざ調書を印刷しようとしたときに印刷ができず,めちゃくちゃ焦ったときがありました。
そのときは,ノズルクリーニングを行うことで印刷できましたが,もし印刷ができないと調書を手書きで作成しなければならないため,それ以降はテスト印刷を徹底するようになりましたね。
調書用紙
調書用紙も調書を作成する上で必須になりますので,必ず持っていく必要があります。
ちなみに,供述人最寄りの検察庁で取調べを行う場合,出張用パソコンとプリンターは不要でしたが,調書用紙は必ず持っていかなければなりません。
実は,調書の規格はなぜか地方検察庁によって異なっていますので,自庁で使っている調書データと供述人最寄りの検察庁備え付けの調書用紙が合わないということが起こります。
実際,供述調書を持っていかなくて焦ったことがありましたが,最寄りの検察庁の事件管理の方からその庁で使っている調書データをもらうことで,何とか事なきを得たことがありましたね。
移動式録音録画機
参考人聴取でも録音録画する場合がありますが,取調べ場所が供述人最寄りの検察庁以外の場合は自庁から移動式の録音録画機を持っていく必要があります。
自身の取調室に備え付けられている録音録画機が移動式の場合はそれを取り外して持っていき,違う場合は事件管理で管理している移動式の録音録画機を借りて持っていくことになります。
ちなみに,機材は全て専用のトランクケースに入るようになっていて,コロコロも付いていますが,めちゃくちゃ重たいです。
あと,配線が割と複雑でしたので,私は移動式録音録画機を取り外す前に,一通りスマホで写真を撮り,現場では写真を見ながらセッティングしていましたね。
このように,移動式録音録画機は結構めんどくさいので,できれば供述人最寄りの検察庁で取調べを行いたいですね。
印鑑・奥書セット
印鑑と奥書セットについてですが,調書を作成する際に必要になる場合がありますので,持っていくことが望ましいですね。
印鑑は調書を訂正(誤字など)する際に供述人の前で訂正印を押すときに必要になります。
奥書とは,調書の最後に書く以下のもので,読み方は「おくがき」と言います。
この奥書は手書きではなくスタンプでもよいとされていて,スタンプが取調室に必ず常備されていますので,出張の際は奥書セットを持っていくことが望ましいですね。
ちなみに,奥書の文言を覚えていたら特に持っていく必要はありません。
出張旅費の請求
出張後ですが,出張旅費の請求を行います。
出張旅費の内訳については後述しますが,それぞれの旅費に応じて必要な書類がありますので,全て揃えて請求手続きを行います。
特に訂正等がなければ,総務課・会計課での処理後,約2週間後くらいに出張旅費が登録口座に振り込まれることになります。
以上が出張取調べの一連の流れとなります。
では,最後に,出張旅費について見ていきたいと思います。
出張旅費について
出張旅費については,旅行命令による出張の場合に支給されます。
ちなみに,勤務地から近くの取調べ先に出向く場合は,公用車や交通系ICカードで取調べ先に向かうため,旅行命令による出張ではなく業務命令による外勤となりますので,出張旅費は支給されません。
出張と外勤の違いは,簡単に言えば,新幹線や飛行機等の交通機関を使うか使わないかでイメージしてもらえればいいかと思います。
では,旅行命令による出張の場合に支給される旅費についてですが,旅程により以下の旅費が支給されます。
- 鉄道賃
- 航空賃
- 宿泊料
- 日当
では,上記旅費についてそれぞれ見ていきたいと思います。
鉄道賃
鉄道賃は,鉄道に乗車して旅行する費用に充てる旅費で,旅客運賃・急行料金・座席指定料金をいいます。
旅行命令による場合の多くは新幹線に乗る場合かと思いますが,その場合は,運賃と特急料金(指定座席)分の旅費が支給されるとイメージしてもらえれば大丈夫です。
ちなみに,出張後の旅費請求の際,実際に新幹線に乗ったかどうかの証明書類は特に必要ありませんので,自由席で乗って差額を浮かせるなんてこともできますね。
航空賃
航空賃は,飛行機等に搭乗して旅行する費用に充てる旅費で,実際に支払った旅客運賃が旅費として支給されます。
なお,飛行機等の場合,出張後の旅費請求の際に航空賃の領収書と搭乗半券が必要となります。
そのため,金曜日が出張の場合,新幹線だとそのまま自費で宿泊して遊ぶことができますが,飛行機だと搭乗半券を提出しなければならないので,旅程通りに帰ってこなければならないですね。
ちなみに,出張で自身のマイルを貯めることはダメみたいなので,マイル貯めている人は出張のときは我慢してください。
宿泊料
宿泊料は,旅行中の宿泊費及び宿泊に伴う諸雑費を賄う旅費で,一夜当たりの定額が支給されます。
区分 | 宿泊料(一夜につき) | |
甲地方 | 乙地方 | |
指定職の職務にある者 | 14,800円 | 13,300円 |
7級以上の職務にある者 | 13,100円 | 11,800円 |
6級以上3級以上の職務にある者 | 10,900円 | 9,800円 |
2級以下の職務にある者 | 8,700円 | 7,800円 |
上記表を見ると,職位と宿泊地(甲乙)によって宿泊料に違いがあることが分かります。
甲地とは,東京都特別区,大阪市,名古屋市,横浜市,京都市,神戸市で,乙地とはそれ以外の地域になります。
また,上述していましたが,宿泊を伴う出張の場合は,基本はパック商品を使用しなければなりませんが,立会事務官の出張の場合,急に出張が決まることが多いため,パック商品を使用しなくても大丈夫となります。
なお,パック商品の使用の有無で以下のような違いがあります。
- パック商品を使用した場合
→宿泊料と鉄道賃又は航空賃の上限は実費のパック料金分
→パック商品の領収書必要 - パック商品を使用しなかった場合
→宿泊料が定額のため,実費との差額は利益
→宿泊先の領収書必要
上記のように,パック商品を使用しないほうが得となりますね。
ちなみに,パック商品だと朝食付きのプランは選べませんが,パック商品を使用しない場合は朝食付を選んでも問題ありませんので,私は大抵朝食付きのプランで優雅に出張を楽しんでいましたね。
日当
日当は,目的地内を巡回する場合の交通費及び諸雑費を賄う旅費で,一日当たりの定額が支給されます。
区分 | 日当(一日あたり定額) |
指定職の職務にある者 | 3,000円 |
7級以上の職務にある者 | 2,600円 |
6級以上3級以上の職務にある者 | 2,200円 |
2級以下の職務にある者 | 1,700円 |
この日当の半額については,目的地内巡回交通費相当分として充てられていますが,国内出張においては鉄道賃等を実費支給するため,日当の半額は支給されません。
日当の残り半額については,諸雑費相当分として充てられていますが,宿泊の有無や旅程の距離・時間によって支給割合が変わります。
日当についてはちょっと細かいので,宿泊した場合は上記表の2分の1が支給されると思ってもらって大丈夫です。
- 国家公務員等の旅費に関する法律(e-GAV法令検索)
※「第十六条,十七条~二十一条」参照
※「別表第一 日当、宿泊料及び食卓料」参照
おわりに
今回は,立会事務官の仕事のうち,出張取調べについてしてきました。
立会事務官になるとまず出張取調べには行くことになると思いますが,どんな感じで行くのかや,その際の旅費がどうなっているのか参考にし,立会事務官の仕事のイメージを持ってもらえればと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。