こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,検察事務官志望者が気になる立会事務官の残業について紹介していきたいと思います。
ネット上にはあることないこと書かれていますが,検察事務官の実態を知らない人がイメージで書いたんだろうなという情報ばかりです。
元検察事務官である私の実体験から残業実態のリアルを紹介しますので,是非見て参考にしてもらえればと思います。
立会事務官の残業実態について
立会事務官の残業実態についてですが,どういった場合に残業するのかや,残業時間・支給割合などについて見ていきたいと思います。
なお,立会事務官の仕事については,下記記事でご確認いただけます。



残業する場合
立会事務官が残業する場合は,基本的には以下のパターンとなります。
- 参考人の取調べ
- 勾留請求等の判断待ち
- 事務処理
では,それぞれの残業する場合の詳細について見ていきたいと思います。
参考人の取調べ
基本的に取調べは平日の勤務時間内に行われますが,事件の被害者や目撃者などの参考人の取調べは,参考人の都合を優先しますので,平日の勤務時間外に行われることがあります。
そのため,勤務時間外に参考人の取調べがある場合は,立会事務官は残業となりますが,取調べの時間は大体1時間~2時間程度ですので,待ち時間などを含めると2~3時間の残業となります。
ちなみに,所用で残業ができない日に参考人取調べが入る場合がありますが,その場合は別の立会事務官に応援を頼むことができますので,割と融通が利きますね。
勾留請求等の判断待ち
被疑者が逮捕されている事件では,引き続き身柄拘束を続けるために勾留請求を行いますが,勾留請求書を裁判所に提出した時間や当日の勾留請求数によって裁判所の判断が勤務時間外になることがあります。
立会事務官は基本的に勾留請求の判断の結果が出るまで帰れないので,残業をすることになります。
※勾留請求の事務については,別の記事で紹介予定
- 勾留請求認容後の流れ:
勾留状発付→検察官指揮印押印→被疑者収容(警察) - 勾留請求却下後の流れ:
勾留請求却下の裁判→被疑者釈放手続or準抗告の申立て
無事に勾留請求が認容されると,勾留状の確認後,警察に勾留状を渡して仕事は終わりとなりますが,勾留請求が却下されると,その取消しを求めて準抗告を申立てる場合があるので,また準抗告の判断が出るまで帰れなくなってしまいますね。
勾留請求却下の件数自体はそんなに多くはないので,月に1回あるかないかになります。
ちなみに,勾留請求却下の判断待ちで残業する検察官・立会事務官が多いことから,当番制でその日の勾留請求の判断後の仕事は一組のペアのみが担当するという取組を行っている地検もあるみたいですね。
事務処理
事務処理については,基本的に勤務時間外にまでやらなければならないということはありません。
というのも,事務処理が立て込んでいる場合は取調べ中に作業を行って事務処理を消化することができるからです。
ただ,繁忙期は事件の処理件数が多くなるので,繁忙期だけは事務処理のための残業はありましたね。
- 立会事務官の繁忙期
→検察庁では年度末に向けて在宅事件の未済件数をゼロに近づけるよう事件処理を行うため,在宅事件の取調べと事件処理が増え,忙しくなる。
残業時間と支給割合
立会事務官の残業時間については,担当する検察官や事件数などによって様々ですが,平均すると一日2時間前後になるかなと思います。
ただ,立会事務官は休暇を取りやすく,夏休みも最大3週間取れたりするので,年間平均で残業時間を見るともう少し少なくなるかもしれないですね。


担当する検察官による残業時間の違い
立会事務官の仕事の忙しさは,事件の難易度ではなく,事件の配点数によって違ってきます。
というのも,基本的に立会事務官が行う事務処理は事件によって変わることがないからです。
ですので,担当する検察官が重大な事件を担当する検事よりも,比較的軽微な事件を担当する副検事の方が配点される事件が多くなるため,立会事務官としては副検事を担当する方が忙しくなります。
- 検 事:司法試験に合格して任官した検察官
- 副検事:検察事務官等が内部試験に合格して任官した検察官
ちなみに,私は副検事→A庁検事(任官5年目)→シニア検事の立会事務官を担当しましたが,やはり副検事を担当していたときが一番忙しく,シニア検事を担当していた時は割と暇でしたね。
- 検事の呼び名について
任官1年目 :新任検事
任官2年目 :新任明け
任官3年目 : 〃
任官4年目 :A庁検事
任官5年目 : 〃
任官6年目 :A庁明け
任官7年目 : 〃
任官8年目~:シニア検事
超過勤務手当の支給割合について
残業した場合における超過勤務手当の支給割合についてですが,私が所属していた地検では40%でした。
ちなみに,支給割合は地検によって異なるようですので,気になる人は業務説明会や,入庁後に先輩から聞いてみてもいいかもしれないですね。
では,次に,残業した際に支給される超過勤務手当について見ていきたいと思います。
超過勤務手当について
国家公務員の超過勤務手当については,給与法と人事院規則で支給割合と算定方法が定められています。
では,支給割合と算定方法について,それぞれ見ていきたいと思います。
超過勤務手当の支給割合
超過勤務手当の支給割合は,平日と平日以外,深夜かどうか,月60時間超えたかどうかで割合が以下のように変わります。
- 正規の勤務時間が割り振られた日における勤務
→125% - 上記における勤務以外の勤務
→135% - 午後10時~午前5時の間(深夜)の勤務
→上記+25% - 月60時間を超えた分
→150%(深夜170%)
支給割合が135%となる「上記における勤務以外の勤務」についてですが,これは振替休日に設定した日に勤務した場合などが該当します。
ちなみに,振替休日日に勤務した分の超過勤務手当は100%支給されます。
そのため,特別捜査部勤務になると,この振替休日日の超過勤務手当によって基本給以上の超過勤務手当の支給を受けることもありますね。
特別捜査部の仕事については,下記記事でご確認いただけます。

超過勤務手当額の算定
超過勤務手当額ですが,以下の式によって算定されます。
勤務1時間当たりの給与額×支給割合×勤務時間数
なお,勤務1時間当たりの給与額は,俸給月額と地域手当額の合計を勤務時間数で割って時給換算した金額になります。
そのため,超過勤務手当の単価は地域手当が高い方が当然高くなりますね。
では,実際に超過勤務手当がどれくらいになるのか,実際に計算してみたいと思います。
超過勤務手当額の算定例
【算定例】
・採用2年目
・公安職俸給表(二)1級24号俸
・俸給月額212,300円
・超過勤務時間20時間
地域手当 | 勤務1時間当たりの給与額 | 超過勤務手当額 (1時間) |
超過勤務手当額 (20時間) |
20% | 1,517円 | 1,896円 | 37,920円 |
16% | 1,466円 | 1,832円 | 36,640円 |
15% | 1,453円 | 1,816円 | 36,320円 |
12% | 1,416円 | 1,770円 | 35,400円 |
10% | 1,390円 | 1,737円 | 34,740円 |
6% | 1,340円 | 1,675円 | 33,500円 |
3% | 1,302円 | 1,627円 | 32,540円 |
0% | 1,264円 | 1,580円 | 31,600円 |
実際に超過勤務手当が何割支給されるかは地検によって異なりますが,仮に50%支給されるとした場合,40時間残業すると上記表の超過勤務手当額(20時間)が支給されることになります。
- 一般職の職員の給与に関する法律(e-GAV法令検索)
※「第十六条」参照 - 人事院規則九―九七(超過勤務手当)(e-GAV法令検索)
※「第二条」参照
おわりに
今回は,激務と言われる立会事務官の残業の実態や超過勤務手当について紹介してきました。
検察事務官になると採用2年目以降から立会事務官になる可能性が高いので,検察庁内々定者やこれから検察事務官を目指す方は是非参考にしてもらえればと思います。
今回も最後まで読んでいただき,ありがとうございました。