こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,検察事務官の仕事のうち,立会事務官の捜査について紹介していきます。
検察事務官の捜査=特別捜査部というイメージがあるかもしれませんが,特別捜査部以外でも日々事件捜査を行っていますので,検察事務官志望の方は是非見てくださいね。
立会事務官の捜査以外の仕事については,下記記事でご確認ください。


警察等の送致事件の捜査について
まず,検察庁で扱う事件のほとんどは,警察等から送致される事件となります。
そして,送致された事件の捜査ですが,検察庁での捜査のメインは被疑者や参考人の取調べで,補充捜査が必要な場合は,事件送致をした警察等に補充捜査を指揮するという形で行われます。
なお、検察庁では,取調べ以外にも様々な捜査を行っていますが,代表的なものとして以下の捜査を行っています。
- 事件の証拠品の精査
- 事件現場の確認
- 被疑者の所在捜査
など
では,それぞれの捜査の内容について見ていきたいと思います。
証拠品の精査
事件の証拠品ですが,代表的なものとして以下のものがあります。
- 防犯カメラ等の映像
- メールなどの電子データ
- 銀行の通帳や取引明細
など
こららの証拠品を精査することを,「ブツ読み」といいます。
では,ブツ読みはどのように行っているのかについて,各証拠品ごとに見ていきたいと思います。
防犯カメラ等の映像
防犯カメラ等の映像は客観的事実を明らかにする証拠となりますので,事件捜査では重要な証拠となります。
そのため,警察等の捜査官は,事件現場付近の防犯カメラ等をくまなく探し,映像の提供を受け,全ての映像を確認します。
そして,事件を検察庁に送致する際に,防犯カメラ等の映像が記録されている記録媒体とともに,何時何分に犯行現場が写っているかなどをまとめた捜査報告書も提出します。
検察官は,捜査報告書を確認し,重要と思われる部分の映像を確認し,犯行を立証できるかどうかを判断します。
また,この防犯カメラ等の映像は,取調べの際に被疑者や参考人に見せることもあるので,どのような映像が録画されているのか,立会事務官も把握しておく必要があります。
ちなみに,私が立会事務官をしていたときは,検察官が防犯カメラ等の映像を確認するときに一緒に確認し,意見や感想を述べていましたね。
メールなどの電子データ
電子機器に残る電子データを収集・分析し,証拠性を明らかにする技術や手法のことを「デジタルフォレンジック」と言いますが,削除されたデータも復元することができるため,近年,検察庁でも重視して力を入れている捜査手法の一つとなります。
メールなどの電子データによって,犯行を告白する内容を立証できたり,犯行の動機を立証することができるため,被疑者の携帯電話は必ず解析されます。
そして,解析されたデータは警察等の捜査官が精査し,証拠品と共に精査した内容をまとめた捜査報告書が提出されますので,検察官は内容の確認を行います。
ちなみに,検察官から手分けして確認して欲しいとの指示がなければ,電子データを見るか見ないかは自由ですが,私が立会事務官をしていたときは一通り目を通し,気づいたことがあれば検察官に意見や感想を述べていましたね。
事件現場の確認
次に,事件現場の確認についてですが,検察官と立会事務官だけで確認に行く場合と,警察等が行う現場検証や犯行再現の実況見分に立会う場合があります。
犯行現場の写真や,犯行再現の実況見分の様子も,警察等でまとめて捜査報告書を作成し,検察庁に提出されますが,検察官が,実際に現場を見たり,直接が支持を出しながら実況見分をしないといけないと判断した場合は,立会事務官と共に現場に行くことになります。
ちなみに,場所によっては車を運転して行かなければいけない場合がありますが,車の運転ができない人は車の運転を専門の仕事とする検察技官に依頼したり,タクシーを利用することもできるので安心してもらえればと思います。
検察事務官の運転業務の詳細については,下記記事でご確認いただけます。

被疑者の所在捜査
警察等から送致されてくる事件には,被疑者を身柄拘束している身柄事件と身柄を拘束していない在宅事件がありますが,在宅事件の中には被疑者が検察庁の出頭に応じない場合があります。
ただ単に出頭に応じない場合は,最悪,逮捕するだけの話になりますが,中には逃亡したり,連絡せずにどこかに行ってしまう場合がありますので,その場合は被疑者の所在捜査を行います。
所在捜査の方法ですが,基本的に以下の機関や会社への捜査関係事項照会によって捜索しますので,所在捜査は立会事務官がメインとなります。
- 市役所
- 公安委員会
- 電気・ガス・水道会社
- 携帯電話会社
- 金融機関
など
所在捜査は,照会文書を送っては確認しを繰り返す地道な捜査になりますので,根気がいる作業になります。
ただ,その分,被疑者の所在を突き止めたときの喜びは大きいです。
ちなみに,所在を発見した後は,逃亡の恐れがある場合は逮捕・勾留しますし,逃亡の恐れが無い場合は連絡して検察庁に呼出すことになりますね。
- 検察庁での捜査は取調べだけでなく,証拠品の精査や現場確認を行っている。
→立会事務官も一緒に捜査。 - 在宅被疑者の所在捜査は立会事務官がメインで行う。
では,次に,検察庁の独自捜査について見ていきたいと思います。
検察庁の独自捜査事件について
検察庁で扱う事件のほとんどは警察等から送致される事件と説明しましたが,検察庁のみ捜査を行う事件もあり,その事件のことを「独自捜査事件」と言います。
では,独自捜査をどういった場合に行うかや,事件に着手するための捜査などについて見ていきたいと思います。
独自捜査を行う場合
検察庁で行われる独自捜査ですが,基本は特別捜査部や特別刑事部で行う捜査になります。
しかし,特別捜査部や特別刑事部以外でも,以下の場合に独自捜査を行うことがあります。
- 警察等の送致事件で余罪が発覚した場合。
など
事件の捜査をしていると,別の犯罪,「余罪」を発見する場合があります。
その場合,事件を送致してきた警察署に捜査をさせるか,検察庁で独自に捜査を行いかのいずれかになりますが,決裁官が元特捜部経験者だと独自捜査になりやすいように思います。
私も二件ほど独自捜査に従事しましたが,自身で証拠を集めていき,犯罪を立件できる証拠が集まったら事件に着手しますので,とてもやりがいのある仕事でしたね。
ちなみに,被疑者を逮捕することを事件着手と言います。
なお,特別捜査部の仕事については,下記記事でご確認ください。

事件着手に向けての捜査
事件着手は,犯罪を立件する証拠が固まってから行いますので,事件着手に向けての捜査が行われます。
普段は警察等が行っている捜査を全て検察庁で行わなければならないため,捜査に関する専門的な知識が必要になりますが,基本的には各種機関や会社に捜査関係事項照会を行い,証拠を集めていくという形になります。
ちなみに,独自捜査で扱う事件は詐欺などの財産犯の事件が多いので,金融機関への照会が重要になってきます。
私が担当した独自捜査事件も詐欺事件だったので,銀行や保険会社といったあらゆる金融機関に照会をしまくりましたね。
ちなみに,照会先や照会方法については最高検察庁でまとめたファイルがありますので,照会方法が分からないといったことはないですね。
事件着手
証拠が固まったらいよいよ事件に着手することになりますが,事件着手には逮捕状・捜索差押令状の請求や,逮捕・捜索のための人員確保が必要となります。
ちなみに,捜索差押のことを「ガサ」と言います。
逮捕状・捜索差押令状の請求
逮捕や捜索差押を行うには,裁判所から令状を発行してもらう必要があります。
そのため,各種請求書と,逮捕・捜索差押が必要である理由を示す疎明資料を準備する必要がありますが,これらについては令状担当がチェックをしてくれます。
※令状担当の仕事については別の記事で紹介予定。
そして,裁判所から令状が発付されると,事件着手に向けて人員を確保する必要がありますので,事件管理や他の立会事務官に応援を頼むことになります。
逮捕状・捜索差押令状の執行
基本的に,被疑者宅の捜索差押(ガサ)と被疑者の逮捕は同日に行われますが,順番としてはガサをしてから被疑者を検察庁に連れていき,逮捕・勾留という流れになります。
ガサでは,あらかじめ令状に記載した捜索差押する物品を捜索し,差押えることになりますが,具体的には以下のようなものを捜索します。
- スマホ・パソコン等の電子機器
- 銀行の預金通帳・キャッシュカード
- 手帳・日記
など
捜索し終わった後は,家の中の図面を書き,差押える物品がどこにあったかや,差押える物品の目録を作成します。
ガサ後は,被疑者を検察庁まで連行して逮捕・勾留手続きを行い,勾留状発付後は拘置所に連れて行って収容するという流れとなります。
ちなみに,この後は通常の事件と同じ手続きとなります。
- 特別捜査部や特別刑事部以外でも独自捜査を行う。
- 証拠集めから逮捕・捜索差押まで検察庁職員だけで行う。
検察庁の独自捜査事件の数は少ないですが,一度経験をすることで捜査についての理解が深まりますので,日ごろの事件捜査から余罪がないか目を光らせてもらえればと思います。
ちなみに,若手検察事務官は応援要員として声がかかるかもしれませんので,その場合はいい経験だと思って楽しんでもらえればと思います。
おわりに
今回は,立会事務官の捜査について紹介しました。
検察庁では取調べ以外でも様々な捜査を行っていますので,検察庁志望者の方や内定者の方は,この記事によって検察庁で働くイメージを少しでも掴んでいただければ幸いです。
今回も最後まで読んでいただき,ありがとうございました。