こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では国家公務員の超過勤務手当について詳しく紹介していきます。
国家公務員にとって身近な手当となりますので、現職の方はもちろん、内定者や受験生の方も参考にしてもらえればと思います。
本記事の内容は令和6年4月1日時点のものとなります。
※令和6年人事院勧告の俸給改訂を反映
超過勤務手当の概要について
超過勤務手当とは正規の勤務時間を超えて勤務した職員に支給される手当になりますが、手当の概要として下記項目を見ていきます。
超過勤務手当の支給要件
国家公務員に割り振られる勤務時間のことを「正規の勤務時間」といいますが、正規の勤務時間を超える勤務に対して超過勤務手当が支給されます。
勤務日 :月曜日~金曜日の5日間
勤務時間:1日7時間45分
1週間当たり38時間45分
※休憩時間を除く
休憩時間:60分
つまり、勤務時間が8時30分~17時15分の場合、8時30分より前と17時15分より後の勤務が正規の勤務時間を超える勤務となります。
また、週休日(土日)や休日(祝日・年末年始)勤務も正規の勤務時間を超える勤務となる場合があります。
- 週休日、休日に命じられた勤務時間を超える勤務
- 週休日の振替を行わない週休日の勤務
- 振り替えた週休日に行う勤務
なお、国家公務員の最高幹部である指定職や俸給の特別調整額の支給対象となる管理監督職員は超過勤務手当の支給対象外となります。
超過勤務手当の支給額
次に、超過勤務手当の支給額についてですが、以下の計算式で算定されます。
勤務1時間当たりの給与額×支給割合×勤務時間数
では、算定の基礎となる下記項目について見ていきます。
なお、超過勤務手当の算定で端数が生じる場合がありますが、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げる端数処理を行うこととなります。
勤務1時間当たりの給与額
まず、勤務1時間当たりの給与額ですが、以下の計算式で算定されます。
(俸給の月額(※1)+地域手当等の月額)×12/1週間当たりの勤務時間(※2)×52
※1:俸給月額+俸給の調整額
※2:通常38時間45分
なお、俸給の月額には俸給の調整額、地域手当等には広域異動手当と研究員調整手当が含まれます。
支給割合
次に、支給割合ですが、超過勤務を行った日、時間帯、時間数によって以下となります。
勤務日 | 支給割合 | |
平日 | 通常 | 125/100 |
深夜 | 150/100 | |
週休日 休日 |
通常 | 135/100 |
深夜 | 160/100 | |
60時間超 (※) |
通常 | 150/100 |
深夜 | 175/100 |
※支給割合の引上げ分(25%)の支給に代えて超勤代休時間を指定可能
勤務時間数
最後に、勤務時間数ですが、一の給与期間(月単位)の全時間数によって計算します。
なお、支給割合の異なる勤務時間がある場合、支給割合毎に集計しますが、1時間未満の端数がある場合は30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げます。
ちなみに、超過勤務を命じられた勤務時間が対象となりますので、任意に在庁していた勤務時間などは超過勤務手当の対象外となります。
出張勤務における超過勤務は、明確な勤務証明がない限り支給対象外。
→出張中の移動時間も支給対象外
超過勤務手当の関係法規
最後に、超過勤務手当の関係法規についてですが、根拠条文を確認されたい方は是非参考にしてください。
- 一般職の給与に関する法律
16条、18条の2、19条、19条の8、19条の9 - 一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律
13条、13条の2
- 人事院規則9―97(超過勤務手当)
- 人事院規則9-7(俸給等の支給)
11条、12条、13条 - 人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)
16条、16条の2、16条の2の2、16条の3
- 一般職の職員の給与に関する法律の運用方針(給実甲第28号)
16条、17条、18条、19条、19条の9関係 - 人事院規則9―7(俸給等の支給)の運用について(給実甲第65号)
13条関係 - 超勤代休時間の指定及び超過勤務手当の支給の取扱いについて(平成22給3-27)
- 職員の勤務時間、休日及び休暇の運用について(平成6職職ー328)
第11
では、次に、超過勤務手当の算定例について見ていきたいと思います。
超過勤務手当の算定例について
超過勤務手当と休日給の算定例について、下記の場合について見ていきたいと思います。
国家総合職(大卒程度)1年目
国家総合職(大卒程度)1年目の超過勤務手当額は以下の計算式で算定されます。
勤務1時間当たりの給与額
[{230,000+(230,000×地域手当の支給割合)}×12]÷(38時間45分×52)
超過勤務手当額
勤務1時間当たりの給与額×支給割合×勤務時間
地域手当 | 勤務1時間当たりの給与額 | 超過勤務手当 (125%) |
20% | 1,644円 | 2,055円 |
16% | 1,589円 | 1,986円 |
15% | 1,575円 | 1,969円 |
12% | 1,534円 | 1,918円 |
10% | 1,507円 | 1,884円 |
6% | 1,452円 | 1,815円 |
3% | 1,411円 | 1,764円 |
0% | 1,370円 | 1,713円 |
国家一般職(大卒程度)1年目
国家一般職(大卒程度)1年目の超過勤務手当額は以下の計算式で算定されます。
勤務1時間当たりの給与額
[{220,000+(220,000×地域手当の支給割合)}×12]÷(38時間45分×52)
超過勤務手当額
勤務1時間当たりの給与額×支給割合×勤務時間
地域手当 | 勤務1時間当たりの給与額 | 超過勤務手当 (125%) |
20% | 1,572円 | 1,965円 |
16% | 1,520円 | 1,900円 |
15% | 1,507円 | 1,884円 |
12% | 1,467円 | 1,834円 |
10% | 1,441円 | 1,801円 |
6% | 1,389円 | 1,736円 |
3% | 1,349円 | 1,686円 |
0% | 1,310円 | 1,638円 |
国家一般職(高卒程度)1年目
国家一般職(高卒程度)1年目の超過勤務手当額は以下の計算式で算定されます。
勤務1時間当たりの給与額
[{188,000+(188,000×地域手当の支給割合)}×12]÷(38時間45分×52)
超過勤務手当額
勤務1時間当たりの給与額×支給割合×勤務時間
地域手当 | 勤務1時間当たりの給与額 | 超過勤務手当 (125%) |
20% | 1,344円 | 1,680円 |
16% | 1,299円 | 1,624円 |
15% | 1,288円 | 1,610円 |
12% | 1,254円 | 1,568円 |
10% | 1,232円 | 1,540円 |
6% | 1,187円 | 1,484円 |
3% | 1,153円 | 1,441円 |
0% | 1,120円 | 1,400円 |
では、最後に、超過勤務手当と諸手当の関係について見ていきたいと思います。
超過勤務手当と諸手当の関係について
超過勤務手当と諸手当の関係についてですが、下記手当との関係で整理していきます。
休日給との関係
休日給の支給対象となる勤務日に割り振られた勤務時間を超える勤務を行う場合もありますが、支給関係で疑義が生じるかと思います。
その場合、休日に割り振られた勤務時間に対しては休日給、割り振られた勤務時間を超える勤務に対しては超過勤務手当が併給されることになります。
週休日:日曜日及び土曜日
休 日:①祝日法による休日
②年末年始の休日
→12月29日~1月3日
※祝日法による休日を除く
ちなみに、同じ休みの日でも週休日の勤務は休日給の支給対象にはなりません。
夜勤手当との関係
超過勤務が夜勤手当の支給対象となる深夜(午後10時~午前5時)に及んだ場合にどちらの手当が支給されるか疑義が生じるかと思います。
しかし、超過勤務手当が正規の勤務時間を超える勤務であるのに対し、夜勤手当は正規の勤務時間の勤務になります。
深夜に正規の勤務時間を割り振る勤務形態を交代制勤務等という。
→刑務官、航空管制官、税関職員など
そのため、超過勤務が深夜に及んだとしても支給される手当は超過勤務手当のみとなります。
宿日直手当との関係
宿日直手当と超過勤務手当は正規の勤務時間以外の勤務という点で似ていますが、対象となる勤務が異なります。
超過勤務手当は正規の勤務時間を超える通常勤務であるのに対し、宿日直手当は正規の勤務時間以外の当直等の勤務になります。
宿日直勤務とは本来業務になじまない勤務密度の薄い勤務。
そのため、超過勤務手当と宿日直手当の両方の支給要件に該当することはありませんので、両手当が併給されることはありません。
管理職員特別勤務手当との関係
超過勤務手当の支給対象外である管理監督職員等も時間外勤務を行わなければならない場合がありますが、その場合管理職員特別勤務手当が支給されます。
- 週休日等の勤務
→臨時又は緊急の必要その他の公務の運営の必要による勤務 - ①以外の日の深夜(午前0時~5時)勤務
→災害への対処その他の臨時又は緊急の必要による勤務
なお、明白な臨時の又は緊急性を有する業務のための勤務の場合のみが支給対象となりますので、超過勤務手当より対象勤務は狭くなります。
おわりに
今回は国家公務員の超過勤務手当について紹介してきました。
給与制度は国家公務員として理解しておくべき制度になりますので、理解した上でライフプランニング等に活用してもらえたらと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。