こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では検察事務官の役職の序列について詳しく紹介していきます。
外部の人間からはなかなか理解しづらいものになりますので、現職の方はもちろん、内定者や受験生の方も参考にしてもらえればと思います。
本記事の内容は令和6年4月1日時点のものとなります。
検察事務官の役職の概要について
検察事務官の役職ですが、主任や係長といった一般的な国家公務員の役職から○○捜査官といった検察庁特有の役職まで幅広く存在します。
また、所属部門によって使用される役職名が異なりますが、代表的な役職の序列は以下の通りとなります。
事務局部門 | 捜査公判部門 | 検務部門 |
事務局長 | 主席捜査官 | |
事務局次長 | 次席捜査官 | 検務管理官 |
課長 | 統括捜査官 |
統括検務官 |
課長補佐 | ||
係長 |
||
上席 主任捜査官 |
上席 検務専門官 |
|
主任 | 主任捜査官 | 検務専門官 |
一般職員 |
では、検察事務官の役職の序列を理解するために概要として下記項目を見ていきたいと思います。
検察事務官の級別標準職務表
国家公務員の職務の級は職務の複雑・困難・責任の度合いに応じて決定されますが、基準となる標準的な職務の内容は「級別標準職務表」によって定められています。
地方検察庁の級別標準職務表
職務の級 | 標準的な職務 |
1級 | ・定型的な業務を行う職務 |
2級 | ・主任捜査官の職務 |
3級 | ・係長の職務 ・相当困難な業務を処理する主任捜査官の職務 |
4級 | ・統括捜査官の職務 ・特に困難な業務を分掌する係の長の職務 ・特に困難な業務を処理する主任捜査官の職務 |
5級 | ・課の長の職務 ・困難な業務を処理する統括捜査官の職務 |
6級 | ・主席捜査官の職務 ・困難な業務を所管する課の長の職務 ・特に困難な業務を処理する統括捜査官の職務 |
7級 | ・地方検察庁事務局の長の職務 ・困難な業務を処理する主席捜査官の職務 |
8級 | ・特に規模の大きい地方検察庁事務局の長の職務 ・特に困難な業務を処理する主席捜査官の職務 |
9級 | ・きわめて規模の大きい地方検察庁事務局の長の職務 |
高等検察庁の級別標準職務表
職務の級 | 標準的な職務 |
1級 | ・定型的な業務を行う職務 |
3級 | ・係長の職務 |
4級 | ・課長補佐の職務 ・困難な業務を分掌する係の長の職務 |
5級 | ・困難な業務を処理する課長補佐の職務 |
6級 | ・課長の職務 |
7級 | ・特に困難な業務を所管する課の長の職務 |
9級 | ・相当の規模を有する高等検察庁事務局の長の職務 |
10級 | ・特に規模の大きい高等検察庁事務局の長の職務 |
最高検察庁の級別標準職務表
職務の級 | 標準的な職務 |
1級 | ・定型的な業務を行う職務 |
3級 | ・係長の職務 |
4級 | ・困難な業務を分掌する係の長の職務 |
5級 | ・課長補佐の職務 |
6級 | ・困難な業務を処理する課長補佐の職務 |
8級 | ・課長の職務 |
検察事務官の級別定数
検察事務官の役職と職務の級の関係については人事院勧告による「級別定数」でも確認することができます。
地方検察庁の級別定数
役職 | 職務の級 |
一般職員 | 1級、2級 |
主任 | 2級、3級 |
主任捜査官 (上席含む) |
2級~4級 |
検務専門官 (上席含む) |
2級~5級 |
係長 | 3級、4級 |
課長補佐 区検課長 |
4級、5級 |
支部課長 統括捜査官 統括検務官 |
4級~6級 |
地検課長 | 5級、6級 |
事務局次長 次席捜査官 検務管理官 |
6級、7級 |
主席捜査官 | 6級~8級 |
事務局長 | 7級~9級 |
高等検察庁の級別定数
役職 | 職務の級 |
一般職員 | 1級、2級 |
主任 | 2級、3級 |
係長 | 3級、4級 |
課長補佐 支部課長 |
4級、5級 |
課長 | 6級、7級 |
事務局次長 | 7級、8級 |
事務局長 |
8級、9級 |
事務局長 (大阪・名古屋・広島) |
指定職1号 |
事務局長 (東京・福岡・仙台) |
指定職2号 |
最高検察庁の級別定数
役職 | 職務の級 |
一般職員 | 1級、2級 |
主任 | 2級、3級 |
係長 | 3級、4級 |
課長補佐 | 5級~7級 |
室長 | 8級 |
課長 | 8級、9級 |
事務局長 | 指定職2号 |
検察事務官の級別平均年齢
人事院は毎年「国家公務員給与等実態調査」を行っていますが、調査結果には「適用俸給表別級別平均年齢」があります。
令和5年度の調査結果によると、公安職(二)俸給表の級別平均年齢※は以下の通りとなります。
※検察事務官以外も含む
職務の級 | 平均年齢 |
1級 | 24.9歳 |
2級 | 31.7歳 |
3級 | 41.0歳 |
4級 | 50.1歳 |
5級 | 52.2歳 |
6級 | 54.0歳 |
7級 | 54.7歳 |
8級 | 56.0歳 |
9級 | 57.8歳 |
10級 | 58.8歳 |
検察事務官の指定職
国家公務員の最高幹部のことを指定職といいますが、国家一般職ながら検察事務官には指定職ポストが存在します。
号俸 | 代表官職 | 俸給月額 |
1号 | 本府省の局次長、部長、審議官、外局の次長 |
708,000円 |
2号 | 763,000円 | |
3号 | 820,000円 | |
4号 | 本府省の局長 |
898,000円 |
5号 | 968,000円 | |
6号 | 外局の長官 | 1,038,000円 |
7号 | 内閣府審議官等 | 1,110,000円 |
8号 | 事務次官 | 1,178,000円 |
検察事務官の指定職は最高検事務局長と高検事務局長になりますが、指定職号俸は1号又は2号になります。
2号:最高検事務局長
東京・福岡・仙台高検事務局長
1号:大阪・名古屋・広島高検事務局長
検察事務官の役職と諸手当の関係について
国家公務員は役職によって支給される手当・役職加算がある手当がありますので、検察事務官の役職と諸手当の関係について見ていきたいと思います。
俸給の特別調整額
俸給の特別調整額とは国家公務員の管理職である管理監督職員に支給される手当になりますが、検察事務官で管理監督職員に該当する役職は以下となります。
組織 | 官職 | 区分 |
最高 検察庁 |
・事務局長 ・課長 |
一種 |
・検事総長秘書官 ・室長(人事院の定めるものに限る) |
二種 | |
高等 検察庁 |
・事務局長 | 二種 |
・事務局次長 | 三種 | |
・課長 ・検察監査官 |
四種 | |
高等 検察庁 支部 |
・課長 | 四種 |
地方 検察庁 |
・事務局長 | 二種 |
・事務局次長 | 三種 | |
・主席捜査官 | 四種 (※) |
|
・課長 ・次席捜査官 |
四種 | |
・統括捜査官 | 五種 | |
地方 検察庁 支部 |
・課長 ・主席捜査官 |
四種 |
・統括捜査官 | 五種 | |
区 検察庁 |
・課長(人事院の定めるものに限る) ・統括捜査官 |
五種 |
※人事院が別に定める場合は二種又は三種
つまり、統括捜査官以上の役職から俸給の特別調整額の支給対象となりますが、支給額は職務の級と区分によって決まります。
職務の級 | 区分 | 支給額 |
10級 | 一種 | 139,300円 |
9級 |
一種 | 130,300円 |
二種 | 104,200円 | |
8級 |
一種 | 119,100円 |
二種 | 95,700円 | |
三種 | 83,800円 | |
7級 |
二種 | 90,900円 |
三種 | 79,500円 | |
四種 | 68,100円 | |
6級 |
三種 | 78,200円 |
四種 | 67,100円 | |
五種 | 55,900円 | |
5級 |
四種 | 64,600円 |
五種 | 53,800円 | |
4級 |
四種 | 61,000円 |
五種 | 50,800円 |
ちなみに、管理監督職員になると時間外手当である超過勤務手当・休日給・夜勤手当が支給対象外となりますが、代わりに管理職員特別勤務手当が支給されるようになります。
期末・勤勉手当
期末手当と勤勉手当は国家公務員のボーナスに当たりますが、役職によって手当の基礎額に加算があります。
- 期末手当
{(俸給+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額+役職段階別加算額+管理職加算額}×期別支給割合×在職期間別割合 - 勤勉手当
{(俸給+専門スタッフ職調整手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額+役職段階別加算額+管理職加算額}×期間率×成績率
期末・勤勉手当額は算定基礎額に成績率等を乗じて算定します。
そのため、算定基礎額への役職者の加算は期末・勤勉手当額に大きな影響を与えます。
役職段階別加算額
役職段階別加算額は以下で算定されます。
{(俸給+専門スタッフ職調整手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額}×役職段階等に応じて定められた加算割合(5%~20%)
職務の級 | 加算割合 |
8級以上
|
20%
|
7級・6級
|
15% |
5級・4級 | 10% |
3級 | 5% |
管理職加算額
管理職加算額は以下で算定されます。
俸給月額×管理・監督の地位に応じて定められた加算割合(10%~25%)
官職(7級以上) | 加算 割合 |
|
区分 | 検察事務官の役職 | |
指定職 一種 |
最高検事務局長 最高検課長など |
25%
|
二種 | 検事総長秘書官 高検地検事務局長など |
15% |
三種 | 高検地検事務局次長 主席捜査官など |
10% |
俸給の調整額
職務の複雑、困難若しくは責任の度又は勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤労条件が同じ職務の級に属する他の官職に比して著しく特殊な官職に対しては俸給の調整が行われます。
検察事務官の場合は「検察官事務取扱検察事務官(通称「検取」)」が俸給の調整額の支給対象となります。
調整基本額×調整数
職務の級 | 公安職(二) |
1級 | 7,300円 |
2級 | 8,900円 |
3級 | 10,200円 |
4級 | 11,300円 |
5級 | 11,600円 |
6級 | 12,000円 |
7級 | 12,400円 |
8級 | 13,100円 |
9級 | 14,300円 |
10級 | 15,900円 |
検取の調整数は1となりますので、俸給の調整額は上記表の金額となります。
おわりに
今回は検察事務官の役職の序列について紹介してきました。
検察事務官にとっては必須の知識となりますので、理解した上でキャリア形成や組織内コミュニケーション等に活かしてもらえたらと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。