全国一斉考試

平成26年度検察事務官等全国一斉考試【問題・解答・解説】

こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。

今回は,検察事務官等全国一斉考試について,平成26年度の問題・解答・解説を紹介します。

一斉考試は法務総合研究所(法務省の施設等機関)が作成しているため,解説はめちゃくちゃ詳しく説明されています。

そのため,解答・解説を見るだけでも勉強になりますので,現役の若手検察事務官はもちろん,入庁前の内定者の方も参考にしてもらえればと思います

試験科目

憲法・検察庁法
・民法(総則・債権)
・刑法
・刑事訴訟法
・検察事務(執行事務)

なお,一斉考試の概要については以下の記事をご確認ください。

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また,違う年度の問題・解答・解説や成績・結果については以下の記事からご確認いただけます。

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検察事務官等全国一斉考試【年度別成績・結果一覧】こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。 本記事は,検察事務官等全国一斉考試について...
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憲法・検察庁法

第1問

基本的人権に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 憲法14条1項が定める法の下の平等は,法の執行・適用の平等のみを意味するのではなく,法の内容の平等をも意味し,行政権・司法権のみならず,立法権をも拘束する。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・五訂憲法80ページ,研修772号49ページ)。

⑵ 自己の容ぼう・姿態を承諾なしにみだりに撮影されない自由は,憲法13条によって保障されるが,この自由も公共の福祉のために必要がある場合には,相当の制限を受ける。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・五訂憲法74,75ページ。最判昭44.12.24刑集23・12・1625)。

⑶ 憲法26条1項は,全ての国民に教育を受ける権利を保障しており,人種,信条,性別,社会的身分又は門地によって,教育上差別することは許されないが,学力の違いに応じて異なった取扱いをすることは許される。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・五訂憲法164ページ)。

⑷ 憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は,権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き,我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり,政治活動の自由についても,我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものを除き,その保障が及ぶ。

解答・解説

() そのとおり(最判昭53.10.4民集32・7・1223(マクリーン事件判決))。

⑸ 憲法14条1項が定める法の下の平等は,選挙人の資格について,人種,信条,性別,社会的身分,門地等による差別を受けず平等に取り扱われるという普通選挙を要請しているが,選挙人の投票価値の平等までは要請していない。

解答・解説

(×) 憲法は,投票価値の平等も要求している(研修教材・五訂憲法203ページ。最判昭51.4.14民集30・3・223)。

第2問

精神的自由権に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 憲法21条2項前段が禁止する検閲とは,行政権が主体となって,思想内容等の表現物を対象とし,その全部又は一部の発表の禁止を目的として,対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に,発表前にその内容を審査した上,不適当と認めるものの発表を禁止することをその特質として備えるものを指し,このような検閲は,公共の福祉を理由とするものであっても認められない。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・五訂憲法121~123ページ。最判昭59.12.12民集38・12・1308)。

⑵ 信教の自由のうち,内心における信仰の自由の保障は絶対的であり,公共の福祉による制約を受けない。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・五訂憲法99ページ)。

⑶ 憲法20条3項は,「国及びその機関は,宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と規定しているので,国立あるいは公立学校においては,特定の宗教のための宗教教育や宗教的活動をすることができない。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・五訂憲法102ページ)。

⑷ 戸別訪問を一律に禁止する公職選挙法の規定は,政治的な表現活動に対する直接的な制約となり,表現の自由を保障した憲法21条1項に違反する。

解答・解説

(×) 最判昭56.6.15刑集35・4・205は,「戸別訪問を一律に禁止している公職選挙法138条1項の規定は,合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず,憲法21条に違反するものではない。」と判示している(研修教材・五訂憲法120ページ)。

⑸ 憲法21条1項は,言論の自由を無制限に保障しているものではないので,他人の行為に関して根拠もなく虚偽の事実を公表し,その名誉を毀損することは許されない。

解答・解説

() そのとおり(最判昭31.7.4民集10・7・785)。

第3問

国会に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 両議院は,それぞれその総議員の半数以上の出席がなければ,議事を開き議決することができない。

解答・解説

(×) 両議員は,各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ,議事を開き議決することができない(憲法56条1項)。

⑵ 法律案について参議院で衆議院と異なった議決をした場合には,衆議院は,両議院の協議会を開かなければならない。

解答・解説

(×) 法律案について両議院の議決が異なった場合,両院協議会を開催するかどうかは,衆議院の判断に委ねられている(憲法59条3項)。

⑶ 参議院が衆議院の可決した予算を受け取った後,国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しない場合には,衆議院の議決を国会の議決とする。

解答・解説

() そのとおり(憲法60条2項)。

⑷ 参議院の緊急集会で採られた措置は,臨時のものであって,次の国会開会の後10日以内に衆議院の同意がない場合には,その効力を失う。

解答・解説

() そのとおり(憲法54条3項。研修教材・五訂憲法219ページ)。

⑸ 両議院の議員には,議院で行った演説,討論又は表決について,院外で責任を問われないという免責特権が保障されているが,議事堂外において議院の活動として職務上行った行為は,その対象とならない。

解答・解説

(×) 「議院で行った」とは,議院の活動として職務上行ったという意味であるから,議事堂外であっても,議院の活動と見られるものは,これに含まれる(憲法51条。研修教材・五訂憲法216ページ)。

第4問

内閣に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 内閣は,最高裁判所の長たる裁判官を指名し,その長たる裁判官以外の全ての裁判官を任命する権限を有している。

解答・解説

() そのとおり(憲法6条2項,79条1項,80条1項)。

⑵ 内閣は内閣総理大臣及びその他の国務大臣で組織されるが,必ずその全員が文民でなければならない。

解答・解説

() そのとおり(憲法66条2項)。

⑶ 内閣は,法律の規定を実施するために,政令を制定することができるが,特にその法律の委任がある場合を除き,その政令に罰則を設けることができない。

解答・解説

() そのとおり(憲法73条6号)。

⑷ 内閣は,衆議院で不信任の決議案を可決し,又は信任の決議案を否決したときは,10日以内に衆議院が解散されない限り,総辞職をしなければならない。

解答・解説

() そのとおり(憲法69条)。

⑸ 内閣が総辞職をしたときは,内閣総理大臣によりあらかじめ指定された国務大臣が,内閣に代わってその職務を行う。

解答・解説

(×) 内閣が総辞職したとき,国会は,「他のすべての案件に先だって」,速やかに,新たな内閣総理大臣を指名することとなり(憲法67条1項),総辞職した内閣は,新たに内閣総理大臣が指名されるまで,引き続きその職務を行う(研修教材・五訂憲法234ページ)。

第5問

検察庁法に関する次の記述のうち,正しいものには〇の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 検察官の犯罪捜査権は,検察庁法4条にそもそもの根拠があり,同法6条はそれを確認するとともに,同法5条による事物管轄の制限を解いたものであると解されている。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・六訂検察庁法13,39ページ)。

⑵ 証人尋問が,甲地方裁判所からの嘱託により乙地方裁判所によって行われることになった場合,甲地方裁判所に対応する甲地方検察庁の検察官から証人尋問を嘱託された乙地方裁判所に対応する乙地方検察庁の検察官は,乙地方裁判所で行われる証人尋問に立ち会うことができる。

解答・解説

() 甲地方検察庁の検察官から乙地方検察庁の検察官に嘱託された証人尋問立会は,乙地方検察庁に対応する乙地方裁判所の管轄に属する事項なので,乙地方検察庁の検察官はこれに応じて立ち会うことができる(研修教材・六訂検察庁法44,45ページ)。

⑶ 甲地方裁判所乙支部において審理・判決された事件について,これに関与しなかった甲地方検察庁所属の検察官は,甲地方検察庁乙支部の検察官事務取扱ではなく,甲地方検察庁本庁の検察官の資格において控訴の申立てをすることはできない。

解答・解説

(×) 検察庁の支部を設け,対応裁判所支部の管轄区域等に応じて,検察事務を行わせるのは,単にその検察庁の中での事務の分配にすぎない。よって,甲地方検察庁本庁の検察官であっても,甲地方裁判所乙支部において審理・判決された事件について,控訴の申立てをすることができる(研修教材・六訂検察庁法52~56ページ)。

⑷ 高等検察庁又は地方検察庁の支部に勤務すべき検事は,その支部の属する高等検察庁又は地方検察庁の検事の中から,検事長が命ずるものとされている。

解答・解説

(×) 法務大臣が,高等検察庁又は地方検察庁の検事の中から,高等検察庁又は地方検察庁の支部に勤務すべき者を命ずる(検察庁法17条)。

⑸ 地方検察庁支部の支部長の権限は,当該支部の庁務の掌理と支部勤務職員の指揮監督の範囲に限られることはなく,当然に,その支部に併置された区検察庁の事務にも及ぶ。

解答・解説

(×) 地方検察庁支部の支部長の権限は,当然には,その支部に併置された区検察庁その他の支部管内区検察庁の事務に及ぶものではない(研修教材・六訂検察庁法59ページ)。

民法(総則・債権)

第6問

人に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 出生した自然人は,例外なく権利能力を取得し,死亡によってのみこれを失う。

解答・解説

() 民法3条1項。「私権の享有は,出生に始まる。」(研修教材・七訂民法I(総則)13,14ページ)全ての自然人は,出生によって権利能力を取得する。自然人の権利能力は,死亡によってのみ消滅する。

⑵ 意思能力がない者がした法律行為は無効であるが,取引の安全を図るため,その無効は善意の第三者に対抗することができない。

解答・解説

(×) 研修教材・七訂民法I(総則)16ページ。意思能力を欠く人の意思表示は無効である。民法に明文の規定はないが,このように解されている(大判明38.5.11民録11・706)。

⑶ 成年被後見人は,精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者であるので,日用品を購入した場合であってもその法律行為を取り消すことができる。

解答・解説

(×) 民法7条,9条。研修教材・民法I(総則)25,26ページ。自己決定の尊重,ノーマライゼーション,取引の安全を考慮したもの。

⑷ 保佐人は,被保佐人が,保佐人の同意を得なければならないのに,その同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないで法律行為をした場合には,その法律行為を取り消すことができる。

解答・解説

() 民法13条4項。

⑸ 家庭裁判所が被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権のみを付与した場合には,被補助人は当該行為を単独ですることができない。

解答・解説

(×) 民法876条の9第1項で補助人に特定の行為について代理権が付与されても,被補助人が単独でこの行為をすることは妨げられない。本人の行為と代理人の行為が競合・抵触することはあり得るが,これは一般の代理でも生じることである。

第7問

意思表示に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 法人の代表者が,自己の利益を図る目的で代表権を行使した場合には,無権代理行為として原則無効となる。

解答・解説

(×) 研修教材・七訂民法I(総則)93ページ。民法93条ただし書を類推適用するのが判例(最判昭38.9.5民集17・18・909等)。

⑵ Aは甲土地を所有し,A名義の所有権登記をしていた。BがAに無断で甲土地の所有権登記をA名義からB名義に変更して甲土地をCに売却し,C名義の所有権登記をした。B名義の所有権登記という外形を信頼して取引関係に入った者を保護する必要があるので,Cが善意無過失であれば,民法94条2項が類推適用され,AはCに所有権登記の抹消を請求できない。

解答・解説

(×) 研修教材・七訂民法I(総則)94ページ。設問のような場合,Aが権利を失ういわれはない。Bは全くの無権利者であるので,たとえ登記を信頼しても,登記に公信力がない以上Cが所有権を取得することはない。

⑶ Aが通謀虚偽表示によってA所有の甲建物をBに譲渡し,Bがこれを善意無過失のCに譲渡した場合,Cが所有権登記を具備していなくても,AはCの所有権登記がないことを主張してCの所有権を否定することはできない。

解答・解説

() 研修教材・七訂民法I(総則)94,95ページ。CとAの関係は対抗問題ではない(最判昭44.5.27民集23・6・998)。

⑷ 意思表示の動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり,もし錯誤がなかったならば表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場合には,法律行為の要素の錯誤としてその意思表示は無効になるが,その動機の表示は黙示的なものであってもよい。

解答・解説

() 研修教材・七訂民法I(総則)102,103ページ。最判平1.9.14裁判集民事157・555。

⑸ Aの強迫により,Bが甲土地をAに売却して所有権登記を移転した。Aは,善意の第三者Cに甲土地を転売し,C名義に所有権登記を移転した。Bは,自己の意思表示を取り消し,Cに対して甲土地の所有権を主張できる。

解答・解説

() 民法96条3項の反対解釈として,強迫の場合には善意の第三者にも対抗できる。

第8問

債権の効力に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 債権者は,債務者がその責めに帰すべき事由によって債務を履行しない場合,債務者に対し,相当の期間を定めてその履行の催告をし,その期間内に履行がないときは,契約の解除をすることができる。催告において,期間を定めないときや,期間を定めてもその期間が不相当であるときにも,その後相当期間を経過することにより催告は有効となり,契約の解除をすることができる。

解答・解説

() そのとおり(民法541条)。なお,判例は,履行遅滞についても,債務者の責めに帰すべき事由のあることを要するとしている(大判大10.11.22民録27・1978。研修教材・七訂民法Ⅲ(債権法)49ページ)。

⑵ 金銭の給付を目的とする債務の債務者は,不可抗力により,支払期日に支払をすることができなかったときには,履行遅滞の責任を負わない。

解答・解説

(×) 金銭の給付を目的とする債務の不履行に対する損害賠償については,債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができない(民法419条3項。研修教材・七訂民法Ⅲ(債権法)52,53ページ)。

⑶ 裁判所は,債務の不履行に関して債権者に過失があったときは,これを考慮して,損害賠償の責任及びその額を定める。

解答・解説

() そのとおり(民法418条)。

⑷ 債務者は,債務の履行について確定期限がある場合は,原則として,その期限が経過したときから遅滞の責任を負うが,その債務の履行について債権者の協力が必要であるときは,その確定期限に債権者が必要な協力をしなければ,遅滞の責任を負わない。

解答・解説

() そのとおり(大判昭和5.4.19法律新聞3184号16ページ。研修791号65ページ)。

⑸ 債権者が,損害賠償として,その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは,債務者は,その物又は権利について当然に債権者に代位する。

解答・解説

() そのとおり(民法422条)。

第9問

債権譲渡に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 債権は,同一性を維持しながら譲受人に移転するので,特約のない限り,その債権に附従する利息債権や保証債権も当然に譲受人に移転する。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・七訂民法Ⅲ(債権法)107ページ)。

⑵ AのBに対する100万円の金銭債権について,Bは,Aに対し,80万円を弁済した。その後,AがCに対し,同債権を譲渡した際,BがCに対し,異議をとどめないでその譲渡を承諾した。Bは,Cから100万円の弁済を請求されたのに対し,80万円については弁済を拒絶することができる。

解答・解説

(×) 債務者が異議をとどめないで債権譲渡の承諾をしたときは,譲渡人に対抗することができた事由があっても,これをもって譲受人に対抗することができない(民法468条1項)。したがって,Bは,80万円が弁済済みであることをCに対抗できない(研修教材・七訂民法Ⅲ(債権法)111~113ページ)。

⑶ AはBに対する債権をCに譲渡し,CはBに対して債権譲渡の通知をした。この場合,Bは,A又はCに対し,債権譲渡の承諾をしていれば,Cによる弁済の請求を拒絶することができない。

解答・解説

() 債務者に対する対抗要件は,譲渡人から債務者に対する通知又は債務者の承諾である(民法467条1項)。この通知は,譲渡人からなす必要があり,譲受人から通知しても,対抗要件としての通知の効力は認められない(最判昭46.3.25判時628・44。研修教材・七訂民法Ⅲ(債権法)110ページ)。本問では,譲受人Cによる通知に対抗要件としての通知の効力はないが,債務者Bが譲渡人A又は譲受人Cに対し承諾をしているので,BはCによる弁済の請求を拒絶できない。

⑷ Aは,Bに対する債権について,Bとの間で譲渡禁止の特約を結んだ後,その特約につき悪意のCに対し,同債権を譲渡した。この場合,Bは,Cに対し,同債権の譲渡の無効を主張できる。

解答・解説

() 債権は,原則として譲渡性を有しているが(民法466条1項本文),当事者が反対の意思表示をすることにより,譲渡性を奪うことができる(同条2項本文)。このような譲渡禁止の特約は,物権的効力を有すると解されているが,善意の第三者に対抗できないとされている(同項ただし書)。したがって,Bは,悪意のCに対し,同債権の譲渡の無効を主張できる(研修教材・七訂民法Ⅲ(債権法)108,109ページ)。

⑸ Aは,Bに対する債権をC及びDに二重譲渡し,Bに対し,各譲渡について確定日付のある通知をした。この場合,C及びDの優劣は,確定日付の先後によって決する。

解答・解説

(×) 債権が二重譲渡されて,いずれも債務者への確定日付のある証書で通知がなされた場合における譲受人相互間の優劣は,同通知の確定日付の先後ではなく,確定日付ある通知が債務者に到達した日時の先後で決すべきであるとするのが判例である(最判昭49.3.7民集28・2・174。研修教材・七訂民法Ⅲ(債権法)113ページ)。

第10問

賃貸借に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ Aが絵画をBに貸すことを約し,BがAに対価として賃料を支払うことを約した。この場合,AがBに絵画を引き渡していなくても,AとBの間に賃貸借契約が成立する。

解答・解説

() 諾成契約である。研修教材・七訂民法Ⅲ(債権)185,186ページ。

⑵ Aが絵画をBに賃貸して引き渡したときは,Aがその絵画をCに売却してもBはPCに賃借権を対抗できる。

解答・解説

(×) 売買は賃貸借を破る。研修教材・七訂民法Ⅲ(債権)195ページ。

⑶ Aは,Bから甲土地を賃借して賃借権登記をした。CがA及びBに無断で甲土地に建物を築造した場合,AはCに対し,賃借権に基づく建物収去・土地明渡しを請求することができる。

解答・解説

() 登記その他の対抗要件を備えた不動産賃借権には賃借権に基づく妨害排除請求権が認められる。研修教材・七訂民法Ⅲ(債権)195,196ページ,最判昭28.12.18民集7・12・1515。

⑷ 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失し,残存する部分のみでは賃借人が賃借した目的を達することができないときは,賃借人は,その賃貸借契約の解除をすることができる。

解答・解説

() 民法611条1項,2項。研修教材・七訂民Ⅲ(債権)195ページ。

⑸ 賃貸借契約における敷金契約は,授受された敷金をもって,賃料債権等の賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することとなるべき一切の債権を担保することを目的とする契約であるが,賃貸借契約の終了による敷金の返還と賃借目的物の明渡しは,公平の観点から,特段の事情がない限り同時履行の関係に立つ。

解答・解説

(×) 敷金返還請求権の発生時期は明渡し時であるので,同時履行の関係に立たない。研修教材・七訂民法Ⅲ(債権)201ページ。最判昭49.9.2民集28・6・1152。

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刑法

第11問

不作為犯に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 真正不作為犯とは,不作為の形式で規定された構成要件を不作為によって実現する犯罪をいい,不真正不作為犯とは,作為の形式で規定された構成要件を不作為によって実現する犯罪をいう。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・六訂刑法総論79ページ)。

⑵ 因果関係とは,行為と結果との間にある一定の原因・結果の関係をいうところ,不作為は,何もしないことであり,いわば「無」であるので,不作為犯では,行為と結果との因果関係を観念することはできない。

解答・解説

(×) 不作為犯にも因果関係は必要である。不作為犯の因果関係は,不作為者が期待された必要な作為をしたならば,結果が発生しなかったと認められる関係があることである(研修教材・六訂刑法総論88ページ)。

⑶ Aは,川原を散歩していた際,偶然,見知らぬ幼児Bが川で溺れて助けを求めているのを見付けた。AはBを救助できるだけの泳力を持っていたが,子どもが嫌いだったので,Bが溺死すればよいと考えてBを放置したため,Bは溺死した。Aには,殺人罪が成立する。

解答・解説

(×) 不真正不作為犯に実行行為性が認められるためには,法律上の作為義務違反が必要である(研修教材・六訂刑法総論81,82ページ)。

⑷ Aは,自己が親権者となっている息子B(3歳)が内縁の夫Cから暴行を加えられているのを認識しながら,これを阻止せず放置した。BがCの暴行に基づく硬膜下出血等により死亡した場合,AがCの暴行を阻止することが可能かつ容易であったとしても,Aに傷害致死罪の幇助犯が成立する余地はない。

解答・解説

(×) 本問と同様の事案において,不作為による傷害致死罪の幇助犯の成立を認めた裁判例がある(研修教材・六訂刑法総論83ページ。札幌高判平12.3.16判時1711・170)。

⑸ Aは,勤務先の自席で木製机の下に火鉢を置いて残業をしていたが,その後,火鉢を置いたまま,自席を離れて別室で2時間弱の仮眠を取った。仮眠を終えたAが自席に戻ったところ,火鉢の炭火が木製机に引火して,木製机が燃えていた。Aは,容易に消火し得る状態であったのに何の措置も講じないまま勤務先を立ち去ったため,勤務先建物が全焼した。この場合,Aに既発の火力を積極的に利用して建物を焼損させる意思がない限り,放火罪は成立しない。

解答・解説

(×) 本問と同様の事案において,既発の火力を積極的に利用する意思がなくても,焼損の認容があれば放火罪が成立するとした最高裁判例がある(研修教材・六訂刑法総論87,88ページ。最判昭33.9.9刑集12・13・2882)。

第12問

正当防衛に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 時計店を経営するAは,閉店後,その日に撮影された店内の防犯カメラの映像を見て,Bが腕時計1個を万引きしたことに気付いた。翌日,Aは,同腕時計を左腕に付けて同店付近を歩いていたBを見付けたことから,Bに体当たりして転倒させ,Bから同腕時計1個を奪い返した。Aの行為は,正当防衛となる。

解答・解説

(×) 正当防衛における急迫とは,法益侵害が現に存在するか,目前に差し迫っていることをいい,過去の侵害や将来の侵害に対しては正当防衛は認められない(研修教材・六訂刑法総論118,119ページ。最判昭46.11.16刑集25・8・996)。

⑵ 暴力団X組の組員であるAは,飲食店で飲食していたところ,対立する暴力団Y組の組員Bから木刀で襲撃を受け,一旦は追い払った。しかし,Aは,Bがまた襲撃してくるに違いないと考え,その機会を利用して徹底的にBを痛めつけてやろうと思い,鉄パイプを準備して待ち構えていたところ,案の定,Bが木刀を持って襲撃してきたので,Bを鉄パイプで殴打した。Aの行為は,正当防衛となる。

解答・解説

(×) 予期された侵害を避けなかったというにとどまらず,その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,もはや侵害の急迫性の要件を充たさない(研修教材・六訂刑法総論120ページ。最判昭46.11.16刑集25・8・996,最決昭52.7.21刑集31・4・747)。

⑶ Aは,ささいなことからBと口論となり,Bから頭髪をつかまれたので,Bの手を振りほどくために両手でBの胸を突いた。すると,Bはあお向けに転倒し,地面に頭部を打ち付けて約2か月間の加療を要する傷害を負った。Aの行為が正当防衛となる余地はない。

解答・解説

(×) 刑法36条1項にいう「やむを得ずにした行為」とは,急迫不正の侵害に対する反撃行為が,自己又は他人の権利を防衛する手段として必要最小限度のものであること,すなわち反撃行為が侵害に対する防衛手段として相当性を有するものであることを意味するのであって,反撃行為が右の限度を超えず,侵害に対する防衛手段として相当性を有する以上,その反撃行為により生じた結果がたまたま侵害されようとした法益より大であっても,その反撃行為が正当防衛行為でなくなるものではない(研修教材・六訂刑法総論127ページ。最判昭44.12.4刑集23・12・1573)。

⑷ Aは,Bと口論になり,Bから顔面を平手で十数回殴られた。さらに,Aは,Bがいきなり金属バットを振り上げて殴りかかってきたので,自分の身を守る気持ちとBに対する憎悪の気持ちから,Bの胸部を両手で突いてBを転倒させた。Aの行為は,正当防衛となる。

解答・解説

() 急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するためにした行為と認められる限り,たとえ,同時に侵害者に対し憎悪や怒りの念を抱き攻撃的な意思に出たものであっても,その行為は防衛のための行為に当たる(研修教材・六訂刑法総論127ページ。最判昭60.9.12刑集39・6・275)。

⑸ Aは,深夜,1人で歩いていた女性Bが,見知らぬCからいきなり抱きつかれて悲鳴を上げたので,Bを助けるために,Cの腕を引っ張ってBから引き離すとともに,Cを路上に転倒させた。Cによる侵害行為は,Bに対するものであって,Aに対するものではないので,Aの行為は,正当防衛とならない。

解答・解説

(×) 防衛行為は,侵害を受けた本人だけでなく,第三者でもこれを行うことができる(研修教材・六訂刑法総論123ページ)。

第13問

犯人蔵匿及び犯人隠避の罪に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 刑法103条の「罰金以上の刑に当たる罪を犯した」とは,その犯した罪につき,言い渡された裁判が確定することを必要とするものではない。

解答・解説

() 大判大4.12.16刑録21・2103。「刑法第百三條ニ所謂罰金以上ノ刑ニ該ル罪ヲ犯シタル者トハ其犯シタル罪ニ付言渡サレタル裁判ノ確定スルコトヲ必要トスルモノニアラス」として,その犯した罪が裁判で確定することを要しないとしている。

⑵ Aは,殺人罪を犯して逃走中の友人Bを,その事情を知りながら,自宅にかくまった。その時点で,警察は,当該殺人事件を把握しておらず,捜査を開始していなかった。この場合,Aには,犯人蔵匿罪は成立しない。

解答・解説

(×) 最判昭28.10.2刑集7・10・1879。「真に罰金以上の刑にあたる罪を犯した者であることを知りながら,官憲の発見,逮捕を免れるように,これをかくまった場合には,その犯罪がすでに捜査官憲に発覚して捜査が始まっているかどうかに関係なく,犯人蔵匿罪が成立するものと解すべきである。」としている(研修教材・改訂刑法各論(その2)191ページ)。

⑶ Aは,Bが不法残留者であることを認識した上でBを自宅にかくまったが,不法残留に対する罪の刑が罰金以上であることを知らなかった。この場合においても,Aには,犯人蔵匿罪が成立する。

解答・解説

() 最決昭29.9.30刑集8・9・1575。蔵匿者は,被蔵匿者が犯した犯罪についての各刑罰法規の法定刑を正確に認識している必要はない。飽くまで,素人的認識があれば足り,被蔵匿者がその法定刑に罰金以上の刑を含む犯罪類型を犯した者である認識さえあれば故意は存在する(上記最決同旨)ので誤り(研修教材・改訂刑法各論(その2)192ページ)。

⑷ 傷害罪の真犯人Aが既に逮捕・勾留された後に,Bが,Aの身代わりとなるため捜査機関に出頭し,自分が犯人である旨の虚偽の陳述をした。この場合,Bには,犯人隠避罪が成立する。

解答・解説

() 最決平元.5.1刑集43・5・405。「刑法103条は,捜査,審判及び刑の執行等広義における刑事司法の作用を妨害する者を処罰しようとする趣旨の規定であって,同条にいう『罪ヲ犯シタル者』には,犯人として逮捕勾留されている者も含まれ,かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たると解すべきである。」(研修教材・改訂刑法各論(その2)191ページ)。

⑸ 窃盗罪を犯したAは,友人Bを教唆して,自分を友人B宅にかくまわせた。この場合,そもそも犯人自身が逃げ隠れする行為は不可罰であるので,Aには,犯人隠避罪の教唆犯は成立しない。

解答・解説

() 最決平元.5.1刑集43・5・405。「刑法103条は,捜査,審判及び刑の執行等広義における刑事司法の作用を妨害する者を処罰しようとする趣旨の規定であって,同条にいう『罪ヲ犯シタル者』には,犯人として逮捕勾留されている者も含まれ,かかる者をして現になされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為も同条にいう『隠避』に当たると解すべきである。」(研修教材・改訂刑法各論(その2)191ページ)。

第14問

放火の罪に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ Aは,Bが居住している木造家屋を焼損する意思で,同家屋に隣接する木造物置小屋に放火した。たとえ同家屋に延焼しなかった場合でも,Aには,現住建造物等放火未遂罪が成立する。

解答・解説

() そのとおり(大判大12.11.12大集2・781。研修教材・改訂刑法各論(その2)8,9,15ページ)。

⑵ Aは,Bが居住している木造家屋を焼損する意思で,同家屋のカーテンに放火した。火に気付いたBは,カーテンの火を消し止めたが,カーテンが既に独立して燃えていれば,Aには,現住建造物等放火既遂罪が成立する。

解答・解説

(×) カーテンは,取り外しが自由であることから建造物の一部分とはいえず,カーテンが独立燃焼した場合であっても,建物そのものを焼損したことにはならないので,現住建造物等放火の未遂罪が成立するにすぎない(最判昭25.12.14刑集4・12・2548,研修教材・改訂刑法各論(その2)12ページ)。

⑶ Aは,空家となっている別荘にBが所有者及び管理者に無断で入り込んで寝ていることを知らずに,同別荘に放火してこれを焼損させた。この場合,Aには,現住建造物等放火罪が成立する。

解答・解説

(×) 刑法108 条における「現に人がいる」とは,放火の当時,犯人以外の者が建物内にいることであるが,Aには,「現に人がいる」ことについての認識がないから,本罪は成立しない(研修教材・改訂刑法各論(その2)14ページ)。

⑷ Aは,保険金をだまし取る目的で,火災保険を掛けた自己所有の倉庫に放火してこれを焼損させた。同倉庫が人家のない山中にあって,公共の危険を生じなかった場合でも,Aには,非現住建造物等放火罪が成立する。

解答・解説

() 自己所有の倉庫であっても,保険が掛けられている場合は,他人の物を焼損した者の例によるので(刑法115条),公共の危険発生は要件とならない(研修教材・改訂刑法各論(その2)18ページ)。

⑸ Aは,他人の家屋内に人の死体があることを知りながら,同死体を焼損する目的で同家屋に放火して同家屋及び同死体を焼損させた。この場合,Aに対して成立する死体損壊罪は放火罪に吸収される。

解答・解説

(×) 死体損壊罪と放火罪は保護法益を異にするから,両罪が成立し,観念的競合の関係に立つ(大判大12.8.21大集2・681。研修教材・改訂刑法各論(その2)16ページ)。

第15問

傷害の罪に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ Aは,保険金をだまし取る目的で,交通事故を装って,あらかじめ承諾を得たBに,故意に自己の運転する自動車を衝突させてBに全治約2か月間を要する腰椎骨折の傷害を負わせた。この場合,傷害につきBの承諾があるので,Aには,傷害罪は成立しない。

解答・解説

(×) 被害者の承諾がある場合に傷害罪が成立するか否かについて,通説は,被害者の承諾は無条件に違法性を阻却するものではなく,承諾が公序良俗に反し,又は社会的相当性の範囲を超える場合は違法であり,傷害罪が成立するとしている。最決昭55.11.13刑集34・6・396は,本問と類似の事案について,被害者の承諾があっても違法性は阻却しない旨判示している(研修教材・改訂刑法各論(その1)21,22ページ)。

⑵ Aは,隣家に居住するBに精神的ストレスによる障害を生じさせようと考え,約1年半にわたり,連日,自宅から,B方に向けてラジオの音声や目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けた。その結果,Bは精神的ストレスを生じ,慢性頭痛症になった。この場合,暴行を手段としていないので,Aには,傷害罪は成立しない。

解答・解説

(×) 傷害を生じさせる方法は,暴行を手段とする場合に限らず,無形的手段による場合もあり得る(研修教材・改訂刑法各論(その1)20ページ,最決平17年3月29日刑集59・2・54)。

⑶ Aは,Bの胸部を両手で押す暴行を加えた。Bはバランスを崩してその場に転倒し,路面に頭部を強打して脳挫傷の傷害を負い,その翌日,同傷害が原因で死亡した。Aに暴行の故意しかなかった場合でも,Aには,傷害致死罪が成立する。

解答・解説

() 傷害の故意については,傷害罪は傷害の故意犯であると同時に,暴行の結果的加重犯でもあるので,暴行の故意で足りるとする説(結果的加重犯説)が通説・判例(最判昭25.11.9刑集4・11・2239)である。このような考え方を前提とすれば,本問のように暴行により傷害の結果が発生し,その傷害から死亡の結果が発生した場合であっても,傷害罪の結果的加重犯としての傷害致死罪(刑法205条)が成立することになる(研修教材・改訂刑法各論(その1)20,23ページ)。

⑷ Aは,Bの頭部を拳で殴る暴行を加えた。Bは,意識を失ってその場に倒れた。Aが立ち去った直後,たまたま通りかかったCは,その場に倒れているBの頭部を足で蹴る暴行を加えた。Bは硬膜下血腫の傷害を負ったが,同傷害は,A又はCの暴行によるものであることは判明したものの,A又はCのいずれの暴行によって生じたかは不明であった。A及びCには,Bに対して暴行を加えることについて意思の連絡がなくても,いずれも傷害罪が成立する。

解答・解説

() 「同時傷害の特例(刑法207条)が適用されるには,2人以上の者の暴行が,同一機会に行われた場合に限られるが,本問の場合は,A及びCの各暴行は場所的・時間的に近接しており,同一機会に行われたと認められるので,A及びCは,Bに対して暴行を加える共謀がなくても,いずれもBに対する傷害罪が成立する(研修教材・改訂刑法各論(その1)26~28ページ)。

⑸ A及びBは,意思の連絡なく,Cに対し,ほぼ同時に,順次,石を投げつけ,その石をそれぞれCの頭部に命中させる暴行を加えた。Cは脳挫傷の傷害を負い,その翌日,同傷害により死亡した。同傷害は,A又はBの暴行によるものであることは判明したものの,A又はBのいずれの暴行によって生じたかは不明であった。A及びBには,傷害致死罪は成立しない。

解答・解説

(×) 判例(最判昭26.9.20刑集5・10・1937)は,傷害致死罪についても刑法207条の適用を認めている(研修教材・改訂刑法各論(その1)26~28ページ)。

刑事訴訟法

第16問

緊急逮捕に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 加重逃走罪の法定刑は,3月以上5年以下の懲役であるが,幇助犯の刑は,正犯の刑を減軽するので,加重逃走罪の幇助犯である被疑者を緊急逮捕することはできない。

解答・解説

(×) 緊急逮捕が認められる罪は,限定されているが,「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」とは,その罪の法定刑のこと(研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)121ページ)であって,処断刑ではない。

⑵ 緊急逮捕の要件としての罪を犯したことを疑うに足りる「充分な理由」が認められるには,通常逮捕における「相当な理由」よりも高度の嫌疑があることを要する。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)121ページ)。

⑶ 逮捕者は,緊急逮捕するに当たって,被疑者に対し,被疑事実の要旨のみを告げれば足りる。

解答・解説

(×) 緊急逮捕に当たっては,逮捕者は,被疑者に対し,所定の罪を犯した嫌疑が十分であること及び急速を要する事情のあることを伝えなければならない(刑事訴訟法210条1項,研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)122ページ)。

⑷ 被疑者を緊急逮捕する場合において,必要があるときは,令状がなくても逮捕の現場で差押え・捜索・検証をすることができる。

解答・解説

() そのとおり。刑事訴訟法220条1項。

⑸ 司法警察員は,被疑者を緊急逮捕した場合,留置の必要があると思料するときは,逮捕状が発付された時から48時間以内に書類及び証拠物と共に被疑者を検察官に送致する手続をしなければならない。

解答・解説

(×) 検察官送致の時間制限(48時間以内)の起算時は,被疑者が身体を拘束された時であり(刑事訴訟法203条1項,211条),逮捕状が発付された時ではない。

第17問

捜索・差押えに関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 捜査機関は,Aの自宅における捜索差押許可状の執行中,Aの同居の親族に対しても,許可を得ないでAの自宅に立ち入ることを禁止することができる。

解答・解説

() 何人に対しても,許可を得ないでその場所に出入りすることを禁止することができる(刑事訴訟法222条1項本文前段,112条1項)ので,Aの同居の親族に対しても,許可を得ないで Aの自宅に出入りすることを禁止することができる。

⑵ 捜索差押許可状には,罪名の記載が必要であるところ,罪名として法令名だけがない表示されたのでは被疑事実の内容が判別しにくい特別法違反については,「○○法違反」のほか,適用法条まで示すことが必要である。

解答・解説

(×) 「捜索差押許可状に被疑事実の罪名を適用法条を示して記載することは憲法の要求するところではなく,捜索する場所及び押収する物以外の記載事項はすべて刑訴法の規定に委ねられており,刑訴法219条により右許可状に罪名を記載するに当たっては,適用法条まで示す必要はない」(最大決昭33.7.29刑集12・12・2776)。

⑶ 捜査機関は,差し押さえるべき物がパソコンであるとき,当該パソコンと社内LANで接続しており,当該パソコンで作成された文書ファイルを保管するために使用されているファイルサーバからその文書ファイルのデータを当該パソコンにコピーした上,当該パソコンを差し押さえることができる。

解答・解説

() 刑事訴訟法218条1項,99条2項(平成23年改正により明文化)。

⑷ 捜査機関は,令状に夜間でも執行することができる旨の記載がなくても,旅館,飲食店その他夜間でも公衆が出入りすることができる場所については,公開した時間内であれば,捜索差押許可状の執行のため,日の出前,日没後にも入ることができる。

解答・解説

() 刑事訴訟法117条2号に夜間執行の記載の原則(刑事訴訟法116条1項,222条3項)の例外が規定されている。

⑸ 捜索差押許可状の効力が及ぶのは令状呈示の時点で捜索すべき場所に存在する物品に限られ,令状呈示後に搬入された物品に及ぶ余地はない。

解答・解説

(×) 最決平19.2.8刑集61・1・1は,本肢と同旨の弁護人の上告趣意に対し,「警察官は,このような荷物についても上記許可状に基づき捜索できるものと解するのが相当である。」旨判示している。

第18問

証人尋問に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 劇場における演技が公然わいせつ行為に当たるかどうかを判断する資料としてこれを観覧した証人を取り調べる場合,証人が観覧によって生じた感想を述べさせることは,意見を求めるものであって,許されない。

解答・解説

(×) 「本件のような演技が公然猥褻の行為に当たるかどうかを判断する資料としてこれを観覧した証人を取り調べる場合,証人が観覧によって生じた感想を述べることは,事案の性質上証人の実験した事実のうちに当然包含されるのであって,これを証人の意見又は根拠のない想像ということはできない(最判昭29.3.2裁判集93.・9)。」研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)106ページ。

⑵ 証人尋問に際しては,証人に宣誓をさせなければならないが,宣誓は,必ずしも証人尋問の前にさせる必要はない。

解答・解説

(×) 宣誓は,尋問前に,これをさせなければならない(刑事訴訟規則117条)。

⑶ 裁判所は,証人を尋問する場合において,証人が被告人の面前では圧迫を受けて十分な供述をすることができないと認めるときには,弁護人が出頭している場合に限り,検察官及び弁護人の意見を聴き,その供述中,被告人を退任させることができるが,この場合には,証人の供述が終了した後に被告人を再び入廷させ,被告人に証言の要旨を知らせ,その証人を尋問する機会を与えなければならない。

解答・解説

() そのとおり(刑事訴訟法304条の2。研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)108ページ)。

⑷ 証人として尋問するには,その者に証言能力があることが必要であるが,証言能力の有無は,証言を求める事項や,心身の発達状況などを考慮し,具体的事情に即して決められるので,4歳の子供でも証言能力が認められる場合がある。

解答・解説

() 研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)102ページ。

⑸ 検察官が請求した証人につき,弁護人による反対尋問の後,検察官は,裁判長の許可を受けることなく,再主尋問を行うことができるが,再主尋問は,反対尋問に現れた事項及びこれに関連する事項について行うものであるので,再主尋問の機会に自己の主張を支持する新たな事項について尋問する場合には,裁判長の許可を受けなければならない。

解答・解説

() そのとおり(刑事訴訟規則199条の7,199条の5第1項。研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)104ページ)。

第19問

証拠に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 検察官が請求した書証について,証拠とすることに同意する権利があるのは被告人であって,たとえ弁護人が同意の意見を述べたとしても,被告人が不同意とすれば,同意の効果は生じない。

解答・解説

() そのとおり(刑事訴訟法326条1項。研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)179ページ)。なお,最判昭27.12.19刑集6・11・1329参照。

⑵ 任意性が認められない被告人の自白を内容とする供述調書であっても,被告人の法廷における供述の証明力を争うためであれば,証拠とすることができる。

解答・解説

(×) 任意性のない自白は,絶対的に証拠能力が認められない(東高判昭26.17.27高集4・13・1715。研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)186ページ)。

⑶ 犯行の状況等を撮影したいわゆる現場写真は,非供述証拠であって,当該写真自体又はその他の証拠により事件との関連性を認め得る限り証拠能力を具備し,現場写真に証拠能力が認められるためには,必ずしも撮影者等の証言を必要としない。

解答・解説

() 最決昭59.12.21刑集38・12・3071(研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)193ページ)。

⑷ 目撃者の供述を録取した警察官調書は,その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであり,かつ,特に信用すべき情況の下にされたものであるときは,弁護人の同意がなくても,証拠能力が認められる。

解答・解説

(×) 刑事訴訟法321条1項3号。研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)149~152ページ。

⑸ 裁判所は,検察官が請求し,弁護人が同意した書証については,検察官の証拠調べの請求を却下することができない。

解答・解説

(×) 裁判所は,証拠能力のない証拠の取調べ請求,立証趣旨が不明確な証拠の取調べ請求,取調べの必要性のない証拠の取調べ請求などについては,証拠調べ請求を却下することができる(研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)99ページ)。

第20問

公判手続に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 公訴提起後であっても,第1回公判期日までは,勾留に関する処分は,受訴裁判所ではなく,裁判官がこれを行う。

解答・解説

() 刑事訴訟法280条1項,刑事訴訟規則187条(研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)14ページ)。

⑵ 被告人質問の時期については制限がないので,冒頭手続のいわゆる罪状認否の段階で,被告人質問を行うことも許される。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)86,125ページ)。

⑶ 被告人は,検察官による冒頭陳述が終わった後であっても,証拠調べを請求する前であれば,管轄違いの申立てをすることができる。

解答・解説

(×) 刑事訴訟法331条2項は,管轄違いの申立ては,「被告事件につき証拠調を開始した後は,これをすることはできない。」としていることから,証拠調べ手続である冒頭陳述が終了した後には申立てを行うことはできない(研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)86ページ)。

⑷ 被害者が,公判期日において,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を書面又は口頭で陳述した場合,この陳述は,飽くまでも意見の陳述にすぎないので,裁判所は,量刑上の資料とすることができない。

解答・解説

(×) 刑事訴訟法292条の2第9項。研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)127ページ。

⑸ 被告人に対して判決を宣告するに際しては,必要的弁護事件であっても,弁護人が在廷する必要はない。

解答・解説

() そのとおり(刑事訴訟法289条1項。研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)130ページ)。

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検察事務(執行事務)

第21問

裁判の把握に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 執行担当事務官は,公判担当事務官から判決の宣告又は決定による終局裁判の結果について通知があったときは,当該終局裁判の結果の内容について正確を期するため,裁判所に照会しなければならない。

解答・解説

() そのとおり(執行事務規程(以下「規程」という。)3条。研修792号54ページ)。

⑵ 執行担当事務官は,免訴や公訴棄却等の刑の執行を要しない裁判については,検察総合情報管理システム(以下「検察システム」という。)により管理する必要はない。

解答・解説

(×) 執行担当事務官が検察システムにより管理すべき裁判結果は,公訴提起のあった事件(略式手続又は交通事件即決裁判手続を除く。)についてなされた判決及び終局裁判の決定であり,死刑や自由刑に限らず罰金又は科料の裁判も含まれるし,更には無罪,免訴又は公訴棄却等の刑の執行を要しない裁判も含まれる(研修792号55ページ)。

⑶ 執行担当事務官は,被告人が上訴の放棄又は取下げの申立てをした旨の通知があったときは,検察システムによりその内容を管理しなければならないが,検察官が上訴の放棄又は取下げの申立てをしたときは,検察システムにより管理する必要はない。

解答・解説

(×) 検察官が上訴の取下げの申立てをした場合については,特に規程で定められていないが,この場合も検察システムにより管理する必要がある(規程5条1.項。研修792号58ページ)。

⑷ 執行担当事務官は,裁判所から裁判書の謄本又は抄本の送付があったときは,当該裁判書の内容について正確を期するため,検察システムにより管理している終局裁判の結果と対照しなければならない。

解答・解説

() そのとおり(規程4条。研修792号58ページ)。

⑸ 訴訟記録が上訴裁判所に送付された後,被告人が上訴の取下げをしたことにより裁判が確定した場合には,最高検察庁又は高等検察庁の検察官が下級裁判所の裁判の執行を指揮することになるので,その検察官が属する検察庁の執行担当事務官が,検察システムにより,上訴の取下げがあった旨及びその裁判の主文の要旨を管理することとなる。

解答・解説

() そのとおり(規程5条2項。研修792号58,59ページ)。

第22問

裁判の確定に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 刑事施設にいる被告人が上訴提起期間内に上訴申立ての書面を刑事施設の長又はその代理者に提出したときは,その書面が上訴提起期間内に原裁判所に到達しなくても,上訴提起期間内に上訴したものとみなされる。

解答・解説

() そのとおり(刑事訴訟法366条,刑事訴訟規則228条。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説2ページ,研修792号60ページ)。

⑵ 上訴の申立ては裁判の告知の当日からすることができるので,第一審裁判所の判決に対しては,判決宣告の日に控訴することができ,その場合の控訴提起期間は判決宣告の日から起算して14日間となる。

解答・解説

(×) 上訴提起期間の計算に当たっては,刑事訴訟法55条1項により,裁判の告知の当日(判決の日)は含まれず,その翌日から起算することとなる(九訂特別研修資料・執行事務解説3ページ,研修792号61ページ)。

⑶ 上訴権は,上訴提起期間の経過又は上訴の放棄若しくは取下げによって消滅するが,法定刑が死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪については,上訴の放棄は許されない。

解答・解説

(×) 上訴の放棄が許されないのは,法定刑ではなく,死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する判決の場合である(刑事訴訟法360条の2。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説3,4ページ,研修794号42ページ)。

⑷ 上訴の放棄及び取下げは,いずれも公判廷において口頭で申し立てることができる。

解答・解説

(×) 上訴の取下げの申立てについては,公判廷において口頭での申立てができるが(刑事訴訟規則224条ただし書。九訂特別研修資料・執行事務解説5ページ,研修794号44ページ),上訴の放棄の申立てについては,原裁判所に対し書面で行わなければならず,口頭での申立てはできない(刑事訴訟法360条の3,刑事訴訟規則223条。九訂特別研修資料・執行事務解説3,4ページ,研修794号42ページ)。

⑸ 上訴の取下げをした者は,その事件について更に上訴することはできないので,被告人の上訴の取下げが上訴提起期間の経過後であれば,検察官の上訴がなされていない限りその取下げの日に裁判は確定する。

解答・解説

() そのとおり(刑事訴訟法361条。九訂特別研修資料・執行事務解説5ページ,研修794号41,44ページ)。

第23問

裁判の執行に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 裁判は,確定した後これを執行するのが原則であるが,例外として,確定前でも執行できる場合があり,その例として,仮納付の裁判の執行が挙げられる。

解答・解説

() そのとおり(刑事訴訟法471条,348条3項。九訂特別研修資料・執行事務解説8ページ,研修794号47ページ)。

⑵ 検察官は,警察署の留置施設において窃盗の罪により勾留中の被告人(他に逮捕中又は勾留中の罪はない。)に対して実刑判決が言い渡された場合,同判決の確定後,その留置施設に係る留置業務を管理する者に対し,刑の執行指揮をすることができる。

解答・解説

(×) 単に受刑者としての地位を有する者は留置施設に留置できないこととされている(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律15条1項1号)ため,本問のような場合には,当該留置施設に係る留置業務を管理する者(警察署にあっては警察署長。同法16条1項)に対し,刑の執行指揮をすることはできない。本問の場合には,実刑判決言渡し後,速やかに刑事施設の担当者と協議して刑事施設に移送した上,同判決の確定後,刑事施設の長に対し刑の執行指揮を行う必要がある(九訂特別研修資料第2号・執行事務解説17ページ,研修796号60ページ)。

⑶ 勾留中の被告人について,上訴申立期間と勾留期間が同時に満了する場合やその他やむを得ない事由がある場合には,判決確定に先立ち,判決確定の上執行すべき旨を明らかにして刑の執行を指揮することになる。この場合には,上訴申立ての有無について特に注意し,その申立てがあったときは,直ちに執行指揮を取り消さなければならない。

解答・解説

() そのとおり(規程17条2項。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説66ページ,研修796号59ページ)。

⑷ 有期刑の執行中に無期刑の執行を指揮する場合において,刑法51条1項ただし書の適用があるときは,無期刑を指揮するとともに,有期刑については,刑執行取止指揮書によりその執行を取りやめる旨を指揮する。

解答・解説

() そのとおり(規程16条2号ただし書。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説63ページ,研修796号64ページ)。

⑸ 窃盗の罪により懲役10年の刑に処せられて服役中の者に対し,この罪と併合罪の関係にある恐喝の罪により懲役8年の刑が確定した。この事例の場合,執行指揮書に現在執行中の刑に引き続いて執行されたい旨を付記して記載する執行すべき刑期は,懲役8年となる。

解答・解説

(×) 両刑に係る罪が併合罪の関係にある場合における有期の懲役又は禁錮の執行は,その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを超えることはできないとされている(刑法51条2項)。本問の場合,併合罪の関係にある窃盗罪と恐喝罪は,共に法定刑の長期が10年であることから,その2分の1である5年を加えた懲役15年を超えて執行することができないことになる。したがって,執行すべき刑期は,懲役8年のうち5年となる(研修796号64ページ)。

第24問

執行指揮書に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 自由刑の執行指揮をする場合には,執行指揮書によらなくても,裁判書の原本,謄本若しくは抄本又は裁判を記載した調書の謄本若しくは抄本に認印して,これをすることができる。

解答・解説

(×) 自由刑の執行指揮は,必ず書面(執行指揮書)で行い,これに裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本を添えなければならない(刑事訴訟法473条,規程19条。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説67ページ,研修796号53ページ)。

⑵ 公判廷において宣告された刑と判決書に記載された刑が異なる場合には,執行指揮書の「執行すべき刑名刑期」欄には,判決書に記載された刑名刑期を記載する。

解答・解説

(×) 判決は,公判廷における宣告と同時に効力を発生するから,執行指揮書の「執行すべき刑名刑期」欄には,公判廷で宣告された刑名刑期を記載する(刑訴法342条。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説54,68ページ,研修796号55ページ)。

⑶ 刑の執行猶予の言渡しが取り消され,その刑の執行指揮をする場合は,執行指揮書の「確定の日」欄には,原裁判(執行猶予の言渡しをした裁判)の確定日を記載する。

解答・解説

() そのとおり(九訂特別研修資料第2号・執行事務解説69ページ,研修796号55ページ)。

⑷ 刑の執行指揮をするために収容状を執行した場合において,収容状を執行した日と刑事施設に収容する日が異なるときは,執行指揮書の「刑の起算日」欄には,現実に刑事施設に収容する日を記載する。

解答・解説

(×) 収容状を執行した日を記載する(九訂特別研修資料第2号・執行事務解説69ページ,研修796号63ページ)。

⑸ 自由刑の実刑判決が確定した全ての者について,その刑の執行指揮をする場合には,捜査及び公判の過程で判明した処遇上参考になると思われる事項が記載された「処遇上の参考事項調査票」を執行指揮書に添付する。

解答・解説

() そのとおり(平26.1.8刑総13号刑事局長通達。研修796号56ページ)。

第25問

未決勾留日数の本刑通算(算入)に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 裁定算入又は法定通算の対象となる未決勾留日数には,鑑定留置中の日数及び少年鑑別所に収容中の日数は含まれるが,逮捕中の日数は含まれない。

解答・解説

() そのとおり(本刑通算の対象となる未決勾留日数は,勾留された日から判決確定の前日までの間に実際に拘禁された日数であり,逮捕中の日数は含まれない(刑事訴訟法167条6項,少年法53条。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説21ページ,研修797号51,52ページ))。

⑵ 未決勾留日数が通算(算入)される本刑は宣告刑をいうが,刑のうち,性質上勾留日数を通算するという観念に沿わない死刑及び没収は除かれる。

解答・解説

() そのとおり(九訂特別研修資料第2号・執行事務解説23ページ,研修797号53ページ)。

⑶ 第一審裁判所の判決で刑の執行猶予の言渡しがあり,刑事訴訟法345条の規定により勾留状が失効して釈放された場合における判決言渡しの日は,上訴提起期間中の未決勾留日数として,法定通算できる。

解答・解説

(×) 刑の執行猶予等の裁判の告知により勾留状が失効して釈放された場合における判決言渡しの日は,上訴の提起期間中勾留されたものと認められないので,法定通算しない(昭25.3.20検務7115号検務局長通達。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説28ページ,研修797号52ページ)

⑷ 懲役刑(実刑)の判決宣告の日に当該事件で勾留されている場合において,判決宣告の日は,その日に被告人が上訴の申立てをしなければ法定通算の対象となり,その日に被告人が上訴の申立てをすれば,上訴審において原判決が破棄されない限り裁定算入の対象となる。

解答・解説

() そのとおり(刑事訴訟法495条1項,2項2号。九訂特別研修資料第2号・執行事務解説25,28ページ,研修797号52ページ)。上訴裁判所は,被告人の上訴を棄却する場合においても,その審級における未決勾留日数を本刑に算入することができる(最判昭32.3.28刑集11・3・1306)。

⑸ 勾留中の被告人について,平成27年2月12日(木)に第一審裁判所で実刑判決の言渡しがあり,被告人は,同月16日(月)に控訴の申立てをしたが,同月19日(木)に控訴の取下げをした。検察官は,上訴の放棄も控訴の申立てもせずに同判決は確定した。この場合における本刑に通算すべき法定未決勾留日数は13日となる。

解答・解説

(×) 被告人のみが控訴を申し立てて,上訴提起期間内に控訴を取り下げているので,当該裁判は自然確定となり,その確定日は2月27日(金)となる。したがって,判決言渡しの日である2月12日から被告人の控訴申立ての日の前日である2月15日までの4日と,控訴取下げの日である2月19日から上訴提起期間の満了日である2月26日までの8日を合わせた12日が通算すべき法定未 決勾留日数となる(九訂特別研修資料第2号・執行事務解説28ページ,研修797号59,60ページ)。

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