こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
本記事では、検察事務官の研修制度の内、中等科研修について詳しく紹介していきたいと思います。
中等科研修は検察事務官が必ず受講する研修になりますので、検察庁内定者の皆さんはもちろん、検察事務官志望の方も是非参考にしてもらえればと思います。
中等科研修の概要について
中等科研修の概要については、下記項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
中等科研修の対象者
中等科研修の対象者は、大卒程度は採用3年目、高卒程度は採用5年目の職員が研修対象者となります。
初等科研修を終了後ほぼ5年を経過した者若しくは国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)合格者で採用後ほぼ2年を経過した者を対象とし、検察事務官として必要な比較的高度の知識及び技能を習得させて、事務能力の向上を図るとともに捜査・公判の実務能力を育成し、かつ、人格識見の向上を図ることを目的とする。
中等科研修では、検察事務官の他に他官庁からの聴講生や法務省内人事交流による出向者も研修に参加します。
- 特別司法警察員
地方厚生局麻薬取締部・海上保安庁・陸上自衛隊など - 犯則事件の調査を担当する職員
国税局・税関・証券取引等監視委員会など - 法務省内組織間人事交流者
法務局・保護観察所・出入国在留管理庁・矯正管区など
ちなみに、聴講生や出向者は30代から40代と年上の職員が多いですが、他官庁の話を聞ける貴重な機会になりますので、積極的に話しかけてもらえればと思います。
中等科研修の実施方式
中等科研修は地方研修になりますので、全国8か所の各高等検察庁が実施庁となります。
地方研修:法務総合研究所の支所(※)
※全国8か所の高等検察庁
中央研修:法務総合研究所
なお、研修対象者が少ない場合は複数の高検が合同で実施する場合があります。
- 令和5年度の合同実施
名古屋・高松、広島・高松、
仙台・札幌 - 令和4年度の合同実施。
名古屋・高松、広島・福岡
仙台・札幌
高松高検と札幌高検は採用人数が少ないのでほぼ100%合同実施となります。
では、中等科研修の実施方式について、下記項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
研修期間
中等科研修の研修期間については実施庁によって異なりますが、令和5年度は下記のスケジュールで実施されています。
実施庁 | 期間 | 日数 |
東京高検 |
5月30日~7月14日 | 46日 |
11月6日~12月22日 | 47日 | |
大阪高検 | 11月6日~12月8日 | 33日 |
名古屋高検 | 11月2日~12月8日 |
37日 |
高松高検 | ||
広島高検 | 11月7日~12月8日 |
32日 |
高松高検 | ||
福岡高検 | 11月1日~12月6日 | 36日 |
仙台高検 | 9月15日~10月25日 |
41日 |
札幌高検 |
東京高検では研修対象者が多いので、例年、前後半の2回に研修員を分けて中等科研修を実施しています。
研修・宿泊場所
中等科研修は研修員が一か所に集まって講義を受ける集合研修になりますが、研修場所は法務省浦安総合センターか法務総合研修所の各支所となります。
また、検察事務官の集合研修は基本的に全寮制となりますので、研修場所=宿泊施設にもなります。
東京高検:法務省浦安総合センター
東京以外:法務総合研究所○○支所
宿泊施設では一人一部屋が割り振られ、高検管内の同期と共同生活を送ります。
- 食事
各自で用意する必要があるが、食堂が利用できる宿泊施設もある。
- 風呂・シャワー
部屋にユニットバスがある宿泊施設もあるが、無い施設は共同の風呂・シャワーを利用する。
- 洗濯
宿泊施設に備え付けられている洗濯機と乾燥機を利用できる。
共同生活が苦手な人もいると思いますが、同期は今後仕事をしていく中で重要な存在になりますので、積極的に同期との親交を深めてもらえればと思います。
ちなみに、土日祝は外泊願を提出すれば自宅に戻ることもできますので、週末は自身のプライベートを優先させることもできます。
旅費
中等科研修は集合研修になりますので、下記2種類の旅費が支給されることになります。
- 往復旅費
研修場所までの往復交通費 - 研修日額旅費
研修1日当たりに支給される日当
往復旅費の金額は各人で異なりますが、研修日額旅費は1日当たり1,550円となります。
なお、研修期間中に旅費の請求を行いますので、研修期間終了間際か終了後に旅費が一括で支給されることになります。
- 中等科研修の対象者は大卒3年目・高卒5年目の職員で、他官庁からの聴講生・出向者も参加。
- 研修期間は1か月強~1か月半と初等科研修よりも長い。
- 旅費(往復旅費・研修日額旅費)が支給される。
では次に、中等科研修の研修内容について見ていきたいと思います。
中等科研修の研修内容について
中等科研修の研修内容について下記項目をそれぞれ見ていきたいと思います。
中等科研修の研修日程
中等科研修の研修日程ですが、1コマ50分の講義を1単位として1日7単位を受講することになります。
- 9:00~ 9:50
- 10:00~10:50
- 11:00~11:50
- 13:10~14:00
- 14:10~15:00
- 15:10~16:00
- 16:10~17:00
実施庁によって研修期間が異なるため受講する総単位数は庁によって異なりますが、研修要綱上は182単位が総単位数とされています。
中等科研修の研修科目
中等科研修では検察事務官として必要な高度な知識を取得するために様々な講義を受けますが、分類すると以下の3種類の内容となります。
講師は検察官やベテラン検察事務官が担当しますので、高度な講義を受講することができます。
法律に関する科目
まず、法律に関する科目ですが、以下の科目が用意されています。
- 憲法
- 検察庁法
- 国家公務員法
- 国家公務員倫理法
- 民事法
- 刑法(総論・各論)
- 刑事訴訟法(捜査・公判・証拠)
※赤字は効果測定あり
初等科研修では入門として基礎的な学習でしたが、中等科研修からはより専門的な内容となります。
実務に関する講義
次に、実務に関する科目ですが、以下の科目が用意されています。
- 捜査実務
- 公判実務
- 事件・令状事務
- 証拠品事務
- 執行事務
- 徴収事務
- 記録事務
- 犯歴事務
- 文書事務
- 人事事務
- 会計事務
※赤字は効果測定あり
捜査実務では模擬取調べ演習、公判実務では模擬被害者対応演習など、より実践的な講義が実施されます。
一般教養に関する科目
最後に、一般教養に関する科目ですが、以下のような科目が用意されています。
- 能力開発講座
コミュニケーション講座など - 情報セキュリティ
中等科研修では法律・実務科目の割合がほとんどになりますので、一般教養科目の単位数は少なくなります。
中等科研修の使用教材
中等科研修では、科目ごとに下記教材を使用して講義が実施されます。
科目 | 教材 |
講義全般 | 検察講義案 |
憲法 | 憲法 |
国家公務員法・ 倫理法 |
国家公務員法 |
検察庁法 | 検察庁法 |
民事法 | 民法Ⅰ(総則) 民法Ⅱ(物権・担保物件) 民法Ⅲ(債権法) 民法Ⅳ(親族法・相続法) |
刑法 | 刑法総論 刑法各論(その1) 刑法各論(その2) |
刑事訴訟法 | 刑事訴訟法Ⅰ(捜査) 刑事訴訟法Ⅱ(証拠法) 刑事訴訟法Ⅲ(公判) |
捜査・公判実務 | 立会事務 |
検務事務全般 | 検務事務必携 |
事件・令状事務 | 事件事務解説 |
証拠品事務 | 証拠品事務解説 |
執行事務 | 執行事務解説 |
徴収事務 | 徴収事務解説 |
記録・犯歴事務 | 記録事務解説 犯歴事務解説 |
事務局事務 | 会計事務解説 文書事務解説 |
※赤字教材は法務総合研究所発刊の研修教材
使用教材のほとんどは入庁時と初等科研修時に配布されていますが、高検によっては民法・刑法・刑事訴訟法の研修教材は中等科研修時に配布されます。
なお、研修教材は実務や検察事務官等全国一斉考試の勉強にも重宝されます。
中等科研修の効果測定
中等科研修では、研修の成果を確認するために効果測定(テスト)が行われます。
効果測定は科目の区切りごとに行われ、9回に分けて実施されます。
そのため、毎週2~3回、効果測定がありますので、研修期間中はテスト勉強にかなりの時間を割く必要があります。
- 憲法(50)
- 検察庁法(30)
- 国家公務員法・
国家公務員倫理法(20) - 民事法(100)
- 刑法総論(100)
- 刑法各論(100)
- 刑事訴訟法(100)
- 捜査実務(100)
- 公判実務(100)
- 事件・令状事務(50)
- 証拠品事務(50)
- 執行事務(50)
- 徴収事務(50)
- 記録・犯歴事務(40)
- 文書事務(30)
- 会計事務(30)
※配点は一例
回答方式については初等科研修と同様、〇✕方式や空欄穴埋め方式となります。
勉強方法については、法務総合研究所が発行する研修教材が中心となります。
なお、成績優秀者(1位か2位)には特別昇給(2号俸昇給)がありますので、本気で勉強する研修員も多いです。
- 模擬取調べや模擬被害者対応演習など実践的な講義が実施される。
- 効果測定(テスト)は週に2~3回、全9回行われる。
- 成績優秀者には特別昇給(2号俸昇給)がある。
おわりに
今回は、検察事務官の研修制度の内、中等科研修について説明してきました。
中等科研修からは成績も大事で勉強がメインになってきますので、これから中等科研修に参加する人は是非参考にし、勉学に励んでもらえればと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。