こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今この記事を見ている方は以下のような悩みを抱えているのではないでしょうか。
検察は体育会系って本当かな…
人間関係はどうなんだろう…
仕事は激務って本当かな…
ネット上などでは「検察庁はブラックだ」なんて話を目にすることがありますが、本当に検察庁がブラックなのか、元検察事務官の経験を踏まえて項目ごとに解説していきたいと思います。
なお、私は元市役所職員でもありますので、市役所職員の場合はどうなのかについても比較していきたいと思います。
職場の雰囲気は体育会系なのか
一般的にブラック企業=体育会系のイメージが強いと思いますが、体育会系の特徴としては以下のものがあります。
- 上下関係が厳しい
- 根性論や精神論を重視
- 飲み会やイベントが多い
公務員試験を受験している方の中には体育会系の雰囲気を苦手としている人もいると思いますので、地方検察庁が体育会系の特徴に当てはまるかどうか解説していきます。
上下関係は厳しいのか
まず、上下関係についてですが、厳しいかは別にして検察事務官の世界が縦社会であることは間違いありません。
検察事務官が縦社会の理由は以下にあると思います。
- 職員数、採用人数が少ない。
- 年齢より経験が重視される。
地方検察庁の職員数は市役所や県庁などより少なく、全員と何となく顔見知りになりますので、誰が先輩で誰が後輩かが割とはっきりしています。
そのため、割とアットホームな雰囲気で、特に新規採用職員などの若手職員に対しては他部署の先輩であっても面倒見が良かったです。
ちなみに、私も、エレベーターや廊下で新規採用職員と顔を合わせると積極的に話しかけるようにしていましたね。
- 職員数の多い市役所では、部署が違えば別会社のような対応で、仲間意識が希薄になりがち。
- 市役所には経験者採用試験で30代や40代の職員も入庁し、民間経験も仕事に活かすことができるため、年齢>入庁年度の風潮。
また、検察事務官の仕事は経験がものを言う仕事なので、年齢よりも入庁年度が優先されます。
そのため、年齢が上でも入庁年度が先の人に対しては敬語を使うのが基本でしたね。
逆に、先輩が年上の後輩と接するときはタメ口が多かったですが、中にはお互い敬語同士になるパターンもありましたので、そこは先輩次第かなと思います。
なお、体育会系の民間企業では先輩が自身の仕事や雑用を若手に押し付けたりしますが、検察事務官含む公務員は事務分担が一人一人決まっていますので、先輩に理不尽に仕事を押し付けられるなんてことはないです。
ですので、検察事務官は縦社会なので上下関係はありますが、民間企業みたいな理不尽を押し付けられる上下関係ではないので、ゆるい体育会系をイメージしてもらえればと思います。
ちなみに、特別捜査部は上下関係に厳しいので、バリバリの体育会系になります。
- 地方検察庁の雰囲気はゆるい体育会系で,若手職員に対して面倒見がいい。
- 先輩後輩の上下関係はあるが、民間企業みたいな理不尽さはない。
- 特別捜査部は例外。
根性論や精神論を重視するのか
体育会系では根性論や精神論を重視する風潮がありますが、地方検察庁ではほぼありません。
公務員の仕事は法令などの根拠に基づいて行われますし、民間企業みたいにノルマが無いので、根性論とか精神論とかで頑張る仕事ではないからです。
ですので、検察事務官は暑苦しく仕事をすることはなく、淡々と仕事をこなしていく感じになります。
ちなみに、警察などの一次捜査機関では地道な捜査が求められるので根性論や精神論が重視されますので、検察庁独自捜査事件を扱う特別捜査部においても根性論や精神論などの精神的タフさは必要かと思います。
- 一般的な公務員の仕事に根性論や精神論を挟み込む余地はない。
- 特別捜査部は例外。
飲み会やイベントは多いのか
体育会系といえば飲み会やイベントが多い印象ですが、検察事務官も先に述べたように緩い体育会系なので、一般的な公務員の中では多いほうだと思います。
自治体職員だと別部署の人と飲みに行く機会はあまりないでしょうが、地方検察庁だとほとんどの職員と顔見知りになるので、自然と飲み会の頻度は多くなります。
また、立会事務官になると担当検察官や他の検察官ペアとの飲み会や、事件の打ち上げで担当刑事との飲み会なんかもあります。
刑事や国税局査察部との飲み会はめちゃくちゃ激しかったですが検察事務官の飲み会はそこまで激しくはありませんし、お酒の強要もありませんでしたので、お酒が飲めない人も特に心配しなくていいかなと思います。
- 地方検察庁は職員数が少なくほぼ顔見知りみたいになるので、自然と飲みの機会は多くなる。
- 立会事務官は、担当検察官・他のペア・刑事などとの飲みの機会がある。
また、地方検察庁は部活動が盛んなので、休日に練習や合宿があったり他高検管内の職員と練習試合や全国大会もあったりします。
もちろん部活は強制ではありませんので入っていない人も多いですが、若手の内は部活に入って顔見知りを増やすと仕事もやりやすくなりますね。
- 地方検察庁は部活動が盛んで、休日に練習やイベントもある。
- 全国各地の地方検察庁と部活を通して交流がある。
以上のことから、地方検察庁の職場の雰囲気はどちらかというと体育会系になりますが、私個人の意見としては、体育会系の悪い面があるわけではないので、世間一般にイメージされるブラックには当たらないと思います。
では、次に、職場の人間関係が特殊なのかどうかについて見ていきたいと思います。
職場の人間関係は特殊なのか
職場の人間関係についてですが、ネット上では以下のような意見を目にすることがあります。
- 検察事務官は検察官に奴隷のように扱われる。
- 地方検察庁では高卒採用者が幅を利かせている。
元々、地方検察庁の内部の話はあまり表に出てこないので、一目でも上記のような意見を目にすると不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
そこで、元検察事務官として検察官とも高卒採用者とも一緒に働いてきた私の経験を基に、それぞれの実情を紹介していきたいと思います。
検察官は偉そうにしているのか
まず、検察官についてですが、地方検察庁には主に二種類の検察官がいます。
- 司法試験に合格して任官した検察官検事
- 内部試験に合格して任官した検察官副検事
私の印象としては、年配の検察官よりも若手の方が立会事務官に対して礼儀正しかったです。
というのも、何十年も昔は割とパワハラも多かったと聞きますが、昨今では新任検事や新任副検事に対して立会事務官との接し方の指導も行っているとのことなので、パワハラをする検察官が少なくなっているのだと思います。
なお、パワハラする検察官もゼロではないのですが、検察事務官側もペアとする立会事務官をベテラン職員にしたり、若手立会事務官が耐えられなくなった場合はつぶれる前にペアを変えるなど柔軟な対応を取っています。
検察官と立会事務官のペアを決めるのは事件管理などの現場の検察事務官で、人事異動で決定するわけではないため、いつでも柔軟にペアを変えることができる。
ちなみに、検察事務官のパワハラもゼロではありませんが、ヤバい人は一人で軽微な事件の捜査をする検取(けんとり)に配置されがちなので、あまり問題にならない印象でした。
そもそも検察事務官の採用人数が少ないので、人格的にヤバい人は採用段階である程度排除できていると思います。
市役所の場合、パワハラ上司が問題になっても、双方や周りからの聴き取りや仕事・人員調整などに時間がかかり、迅速に対応してもらえないという印象。
また、検事と副検事の違いですが、私個人の意見としては副検事の方がヤバい人が多かった印象があります。
副検事には、検察事務官として優秀だった人と検察事務官として優秀ではなかった人の2パターンありますが、検察事務官として優秀ではなく副検事になった人は年配者に多く、総じてコミュニケーション能力に難がある感じでした。
検事は司法修習で人間性に難があると採用されないのに対し、副検事は試験にさえ受かれば人間性は考慮されずに任官できるという点に違いがあると思います。
ただ、先にも述べたように若手検察官は礼儀正しい人が増えていますし、どうしても耐えられないならペアの変更もしてもらえますので、それほど心配することではないかなと思います。
- 検察官はパートナーである立会事務官を尊重するように指導されている。
- ヤバい検察官の立会になっても、ヤバいときは迅速にペアを交代してもらえる。
高卒採用が幅を利かせているのか
次に、高卒採用者についてですが、高卒採用者が幅を利かせているなんて事実はないと断言できます。
先にも述べたように検察事務官は入庁年度>年齢の傾向がありますので、先輩後輩の人間関係上では先に入庁した高卒採用者の方が立場は上になりますが、出世などの関係において高卒採用者が大卒採用者に優先するなんてことは一切ありません。
そもそも大卒採用者の数の方が高卒採用者より断然多いので、大卒採用者が肩身が狭い思いをするなんてことはないので安心してもらえればと思います。
- 高卒採用者が大卒採用者より出世などで優遇されることはない。
- 職員数も大卒採用者の方が高卒採用者より多いので、高卒採用者が幅を利かせるというのは現実的ではない。
以上のことから、地方検察庁には職場内に検察官がいるという特殊事情がありますが、検察事務官との関係性は年々良くなっていますので、ブラックかどうかの心配は大丈夫かと思います。
では、最後に、仕事は激務なのかどうかについて見ていきたいと思います。
仕事は激務なのか
まず、検察事務官の仕事は激務なのかについてですが、以下の項目ごとに見ていきたいと思います。
- 残業・休日出勤は多いのか。
- 心理的負荷のかかる仕事は多いのか。
- クレーム対応はあるのか。
残業・休日出勤は多いのか
検察事務官は公安職であるため、残業・休日出勤が多いイメージを持っている人もいると思いますので、それぞれ見ていきたいと思います。
残業
残業の多寡については部署や期間によって異なりますので一概に説明しづらいですが、比較的、以下の部署は残業が多めになります。
- 立会事務官(捜査・公判)
- 令状担当(検務)
- 下見担当(事件管理)
- 事務局部門
残業が多めといっても毎日22時や23時まで残業なんてことはなく、年間通して平均したら毎日1~2時間程度の残業くらいになると思います。
私は、上記部署の中では立会事務官と事務局部門を経験しましたが、立会事務官では担当事件数にもよるのでほぼ残業がない期間もありましたし、事務局では繁忙期が決まっていたので、繁忙期以外は毎日定時帰りでしたね。
令状担当は勾留状などが発付されるまで帰れませんが、当番制なので毎日残業というわけではなく、下見担当は事件処理件数の多い12月や3月が繁忙期となります。
市役所はそもそもの仕事量が多く、住民対応・議員対応・災害対応など突発的に仕事が舞い込んでくることが多々あるため、激務部署が多い。
ちなみに、特別捜査部の応援勤務のときは、1か月間、毎日終電帰りで、土日も休日出勤でしたので、事件に着手しているときの特別捜査部はめちゃくちゃ激務でしたね。
- 立会事務官の残業は事件件数による(特別捜査部は激務)。
- 年間通じて残業が多い部署は少ない(繁忙期や当番など)。
休日出勤
地方検察庁は捜査機関ということもあり、検察事務官は休日出勤が多いのではと思っている方も多いと思いますが、休日出勤するパターンはほとんど決まっています。
- 日直勤務の場合
- 立会事務官で休日取調べに立会う場合
- 本部係の立会事務官で重大事件発生時に現場臨場する場合
まず、日直勤務ですが、地方検察庁は身柄事件の勾留請求手続きのため365日開庁していますので、検察事務官は当番制で土・日・祝日に日直勤務をしています。
当番が回ってくる頻度は職員数にもよりますが、大体1か月~2か月に1回程度で、振替休日も取れるので、特に苦痛に感じるということはありませんでした。
ちなみに、当番表は2か月~3か月前に回ってきますが、予定が入っている日に当番が当たっても別の人に交代してもらうことができますので、プライベートを優先することもできますよ。
- 日直勤務は勾留請求手続きの仕事で、当番は1か月~2か月に1回程度の頻度。
- 予定が入っていても別の人と交代してもらえる。
次に立会事務官の休日取調べ立会いですが、平日に来庁できない参考人の取調べのために休日出勤することがあります。
被疑者取調べは基本的に必ず平日の勤務時間内ですが、平日の日中に来庁できない参考人の場合、まずは平日の定時後に来庁できるか調整し、休日対応するのは最終手段となります。
また、取調べ時間はだいたい1時間くらいなので、4時間の休日出勤を申請し、午前か午後のどちらかで取調べ立会して終わったら帰るという感じでしたので、特に苦痛に感じるということはありませんでしたね。
この休日取調べの立会も、どうしても外せない用事が入っている場合は、同期や先輩・後輩などの別の立会事務官に交代してもらうこともできますので、立会事務官でもプライベートを犠牲にするなんてことはないです。
- 市役所勤務だと,地震・台風・大雨などの災害時に突発的に呼び出され,避難所設営などの勤務を行わなければならない。
- 災害対応以外にも、選挙事務やイベント運営などで休日出勤する場合も多い。
ただ、立会事務官でも、本部係検事の立会と特別捜査部の立会は例外となります。
本部係検事は各地検に1名で、大きい地検では補助が付きますが、本部係検事と立会は強盗殺人や無差別殺人などの重大事件が発生した際、夜間・休日問わず現場に急行することとなっています。
休日対応の運用は各地検によって異なると思いますが、本部係の立会になるとプライベートはある程度制限されてしまいます。
また、特別捜査部では事件着手中は毎日取調べがあるので、特別捜査部の立会は休日出勤がめちゃくちゃ多いです。
ですので、プライベートを犠牲にできないと特別捜査部勤務は難しいですね。
- 立会事務官が休日出勤するのは基本的に参考人の取調べ対応の場合のみ。
- 本部係と特別捜査部の立会事務官は例外。
心理的負荷の高い仕事は多いのか
検察事務官の仕事には、以下のような心理的負荷の高い仕事があります。
- 司法解剖の立会い
- 事件現場への臨場
- 事件記録の閲覧
司法解剖立会
検察事務官の仕事の中で一番心理的負荷の高い仕事は司法解剖の立会いになると思います。
どれくらいの頻度で司法解剖に立会うかは事件次第なので何とも言えませんが、私の場合、立会1年目は0件、2年目は1件、3年目は3件でした。
司法解剖に立会うかどうかの判断は死因が争点になりそうな場合なので、件数はそんなに多くはなく、人によっては一度も司法解剖に立会うこともなく定年を迎える人もいるみたいです。
ちなみに、司法解剖で立会事務官が何をするのかというと基本的には立ってるだけなので、気分が悪くなれば解剖室の外に出ることもできますね。
市役所勤務でも、部署によってはご遺体に遭遇することがある。
※ケースワーカーや公営住宅担当など
司法解剖立会の詳細については下記記事で紹介していますので、参考にしてもらえればと思います。

現場臨場
心理的負荷の高い仕事として、事件現場への臨場を思い浮かべる人もいると思います。
しかし、検察庁の捜査の基本は取調べなので、ドラマみたいに頻繁に現場に行くということはありません。
ただ、検察官が現場に行くと言えば立会は有無を言わず付いていかなくてはならないので、例えば血だらけの殺人現場に行く可能性もあります。
ちなみに、私の場合、立会3年間で3件ほど血まみれの殺人現場に入ったことがありますが、血液は乾いて黒くなっていましたし、それほど苦痛には感じませんでしたね。
市役所勤務でも、部署によってはごみ屋敷や人が亡くなった事故物件に立ち入ることもある。
※ケースワーカーや公営住宅担当など
事件記録の閲覧
事件記録の中には、検視や司法解剖の写真が掲載されている報告書などもあり、立会事務官はもちろん、事件記録を確認する検務部門でも目にする機会はあります。
司法解剖の写真には臓器一つ一つの写真も含まれていますので、苦手な人はきついと思います。
ただ、立会事務官や検務部門の仕事で司法解剖などの写真を事細かく見る必要はなく、慣れてくれば該当箇所を飛ばすことも可能ですし、人によってはクリップで挟んで物理的に見ないようにしていました。
- 司法解剖の立会いの頻度は人によるが、そんなに頻繁にあるわけではない。
- 検察庁の捜査の基本は取調べのため、ドラマみたいに頻繁に現場臨場しない。
- 事件記録中の解剖写真などは見なくても仕事に支障はない。
クレーム対応はあるのか
一般的に公務員に対してはクレームが激しいと認識している人も多いと思いますが、実は、地方検察庁ではほぼクレーム対応がありません。
検察庁への電話は基本的に警察・裁判所などの関係機関がほとんどで、個人で電話をするのは弁護士か事件の関係者になります。
ですので、急に一般市民からクレーム電話が入ることも、窓口に殴り込みに来ることもありません。
ちなみに、唯一クレーム対応があるのは告訴を受ける特別捜査部の直告(ちょっこく)担当くらいですが、ここには告訴狂のヤバい人からの電話が多いので、ベテラン職員が配置されています。
- 市役所では市民からのクレームは日常茶飯事であるが、クレーマー市民でも無下にできないため、市役所職員のストレスは半端ない。
- 税金泥棒などと罵しられることも日常茶飯事。
検察事務官が被疑者や罰金未納者と直接話す機会もありますが、基本的にクレームを言われることはなく、言われてとしても相手は犯罪の嫌疑がかかっている人や罰金を支払っていない人であるため、毅然とした対応を取ることができます。
- 市役所の場合、クレーマー市民が議員に泣きついて無理やり言い分を通そうとしてくることもある。
- 市民税や保険料等の滞納者に対しては銀行口座等の差押えくらいしかできないが、そもそもお金がなければ何もできず、滞納者のごね得になることも多い。
在宅被疑者で呼出しに応じない人には逮捕することになると伝えたり、罰金未納者には労役場に収容することになると伝えたりって感じです。
当然、地方検察庁に議員が圧力をかけるなんてことは一切ありません。
そのため、被疑者等から何か言われて傷つくなんてことは一切ありませんでしたね。
- 地方検察庁では基本的にクレーム対応はない。
- 被疑者等に何か言われても毅然とした対応を取ることができる。
以上のように検察事務官の仕事内容について見てきましたが、クレーマー対応が無いというだけでも検察事務官はブラックでは無いと言い切れます。
地方自治体職員はクレーマー市民だけでなく、議員や活動家から無茶な要求をされることが当たり前なので、クレーマー対応したくない人には検察事務官を強くお勧めします。
おわりに
地方検察庁がブラックかどうかについて長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
私は民間・市役所職員・検察事務官と経験してきましたが、検察事務官が一番ブラックではないと断言できますので、心配されていた方は安心して検察事務官を目指してもらえればと思います。
市役所職員を併願している方は下記記事も是非参考にしてもらえればと思います。
