こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,検察庁で実際に働いていた経験から考える「検察事務官に向いている能力や長所」について,紹介したいと思います。
官庁訪問や面接で答える「自身の長所」を考える際の参考にしてもらえればと思います。
ちなみに,仕事の内容として,検察官とペアになって事件捜査を行う立会事務官の仕事を前提にしていますので,立会事務官の仕事内容については下記記事でご確認ください。



対人能力について
まず,対人能力についてですが,立会事務官には「調整力」,「気配り」が必要となります。
では,これらの能力が仕事でどのように必要になってくるのか,それぞれ見ていきたいと思います。
調整力
立会事務官の仕事は,検察庁内のほぼ全ての部署とやり取りが必要であり,外部では警察や各関係機関ともやり取りが必要になります。
時には,検察官と検務部門の間で板挟みになったり,検察官と警察の間で板挟みになったりすることもあるので,そういった場合に仕事が円滑に進むよう,話をしっかり聴き取り,調整を図らなければなりません。
要は,何か問題があったときに丸く収める能力ってことです。
この調整力は,立会事務官に関わらず,公務員全般に求められる能力になりますので,別の官庁や市役所志望の方も参考にしてみてください。
- 検察庁でどのように活かせるか
様々な関係者と協力しながら刑事手続きを行う検察庁での仕事に活かせる。
気配り
立会事務官の仕事は,検察官の捜査を補助しなければならないため,ある意味,秘書的に仕事をしなければなりません。
ですので,検察官が仕事をしやすいように前もって前もって色々と用意をする気配りが大事になってきます。
例えば,検察官から指示をされなくても,取調べに使うであろう証拠品を借りておいたり,起訴状の叩き台を事前に作っておくといったことです。
検察官の話や同僚だった事務官の話を聞くと,この気配りができる人とできない人に分かれるので,気配りができると事務官としての評価が上がります。
この気配りは,言い換えると,相手の立場になって考える力になりますね。
- 検察庁でどのように活かせるか
立会事務官の仕事では,検察官の立場になって考え,能動的に動くことで,検察官が捜査に集中できるようにサポートすることができる。
事務処理能力について
次に,事務処理能力についてですが,立会事務官は「事務官」ですので,捜査に目が行きがちですが事務処理が仕事のメインとなります。
では,事務処理能力の中で,特にどういった能力が求められるかについて見ていきたいと思います。
正確性
立会事務官の仕事は刑事手続きに関わる事柄になりますので,ミスは絶対に許されません。
ですので,事件を処理する場合など,何重にもチェックが行われます。
では,勾留されている被疑者を起訴する場合のチェックの流れを見てみたいと思います。
- 検察官が決裁をもらう。
- 立会事務官が起訴状等の体裁を整える。
- 事件管理の下見担当が起訴状等をチェック。
- 令状担当が起訴状等をチェック。
- 事件担当が起訴状等をチェック。
このように何重にもチェックが行われ,刑事訴訟法や各事務規定などに問題がないか確認されます。
そのため,事務処理を行うにあたり,ミスを起こさない正確性が求められます。
この正確性を高めるためには,まず根拠は何かを確認することと,事後的に確認することを徹底することが大事になりますね。
- 検察庁でどのように活かせるか
検察事務官の仕事は,一つのミスが人権侵害につながる厳格な仕事なので,一つ一つに正確性を求める自身の性格が合っている。
読解力
検察事務官は,仕事上,事件記録を山ほど見る事務手続きの根拠は何かを確認する際,どうしても条文で確認しなければなりませんので,条文を読み解く力も必要になります。
ですので,文字を見るのが嫌いって人は,検察事務官自体に向いていないですね。
まぁそんな人はそもそも公務員に向いていないですが。
- 検察庁でどのように活かせるか
検察事務官の仕事は,常に法令などの根拠に基づいて仕事をしなければならない仕事であるため,文章を読み込み,書かれていることを正確に理解できる自分は検察事務に向いている。
捜査能力について
次に,捜査能力ですが,立会事務官には「論理的思考力」,「探求心」,「粘り強さ」が必要となります。
では,これらの能力が仕事でどのように必要になってくるのか,それぞれ見ていきたいと思います。
傾聴力
検察庁での捜査の中心は,被疑者や参考人からの取調べが中心となりますので,相手の話を聞く傾聴力は非常に重要となってきます。
もちろん取調べは検察官が行いますが,立会事務官も取調べ対象者の話に耳を傾け,何か気になる点がある場合などは,直接か間接的に質問することもあります。
- 検察官によって,立会事務官も取調べに参加しても大丈夫かどうか分かれるため,ペアを組んだ最初に確認しておく必要がある。
- 間接的な質問方法は,検察官と共有しているモニターにタイピングして検察官に知らせる。
検察官によっては,取調べ後に検察官から取調べ対象者の話をどう思ったかなど意見を求めるなど,立会事務官を捜査のパートナーとして頼っているため,それに応えるべく,取調べ対象者の話を聞くということは非常に大事になってきます。
また,徴収担当における罰金未納者の折衝であったり,執行担当におけるとん刑者(※)の聞き込み調査などでも,傾聴力は活かせますね。
※実刑判決が言い渡されているが逃亡している者
- 傾聴力はあまりにも捜査に特化した能力であるため,特捜部に入りたいとか,副検事になりたいとか話さない限り,面接で言う長所にはお勧めしない。
- 傾聴力を調整力などの手段としてアピールする場合は問題ない。
論理的思考力
捜査とは真実が何かを明らかにすることなので,論理的思考力というのは非常に大事になってきます。
例えば,供述が防犯カメラなどの客観証拠と矛盾していないかや,以前の供述と矛盾していないかなどを論理的に考える必要があります。
立会事務官も全ての証拠に目を通し,論理的思考をもって捜査に当たることで,検察官のよきパートナーになることができます。
- 論理的思考力があることを具体的エピソードから裏付けることは難しいため,面接で言う長所にはお勧めしない。
探求心
検察庁には,日々,数えきれな事件が送られてきますが,一つとして同じ事件はありません。
そのため,事件の背景を理解するための前提知識が異なってきます。
例えば,不動産詐欺だと不動産取引の知識が必要ですし,生活保護費の不正受給だと生活保護制度の知識が必要になります。
これらの知識は事件処理をするうえで必須になるため,検察官は当然に知識取得に励まなければなりませが,立会事務官も検察官のパートナーですので,積極的に知識取得に励む姿勢が大事になります。
- 探求心があることを具体的エピソードから裏付けることは難しいため,面接で言う長所にはお勧めしない。
粘り強さ
事件捜査で,証拠品を精査するブツ読みという作業があるが,警察だけではなく立会事務官もブツ読みをやる場合がある。
特別捜査部の立会事務官は当然にブツ読み作業があるが,刑事部などの立会事務官も,例えば押収したスマホに保存されたラインのやり取りを一から調べたり,怪しいお金の流れを一から追ったりすることもあります。
このブツ読み作業は,物によっては長時間,淡々と調べる作業を要するため,粘り強く仕事をする必要があります。
- 検察庁でどのように活かせるか
検察庁の仕事は,真実を明らかにするために,時にはハードな仕事をしなければならないときもあるかと思うが,粘り強く仕事に取り組むことができる。
おわりに
今回は,私の検察事務官の経験から,検察事務官に向いている能力や調書について紹介しました。
中には面接では話しにくいものもありましたが,自身の面接で話す長所を考える際の参考にしてもらえればと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。