こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,検察庁の官庁訪問や面接で想定される質問と回答例について,検察事務官として働いた経験を基に考えてみようと思います。
もちろん質問に対する回答に100%の正解はありませんが,元検察事務官の視点は必ず皆さんの官庁訪問・面接対策の参考になると思いますので,是非最後まで読んでみてください。
志望度に関する質問
まずは,志望度に関する質問ですが,以下のものが想定されます。
- 志望動機について
- 検察庁でやりたい仕事について
- 併願先について
- 他の検察庁について
- 転居を伴う異動について
- 最近気になるニュースについて
では,それぞれの質問について詳しく見ていきたいと思います。
志望動機について
検察庁の官庁訪問や面接で必ず聞かれることは,志望動機です。
この志望動機によって,検察庁への志望度と,検察庁の仕事の理解度が見られますので,一番作りこむ必要があります。
志望動機の詳細については下記記事をご確認ください。

志望動機によっては,以下のような質問をされることも想定されます。
- 司法試験は目指さなかったのか?
- 警察には興味がなかったのか?
まず,司法試験については,以下のような三つのパターンがあります。
- 司法試験を実際に受験した後にあきらめた場合
- 司法試験を考えたことがあったが受験しなかった場合
- 司法試験を一切考えたことがなかった場合
この三つのパターンの中だと,③が大多数を占めるかと思いますが,回答例を以下にあげておきますので,参考にしてみてください。
- 司法試験に挑戦していて,残念ながら合格することができませんでしたが,検察官への憧れを捨てきれず,検察庁を志望するようになりました。
- 司法試験を目指すかどうか迷っていたが,大学卒業後に早期に社会に出たかったため,公務員になることに決めました。公務員の中でも検察事務官だと刑事手続きの実務を学びながら副検事を目指せるので,検察庁を志望します。
- 元々公務員志望であったため,司法試験は考えていませんでしたが,○○という経験から検察庁の仕事に興味を持つようになりました。
では次に,警察についてですが,これは警察との仕事の違いを説明すれば大丈夫ですので,回答例を以下にあげておきます。
是非参考にしてもらえればと思います。
- 検察庁は唯一被疑者を起訴でき,適正な科刑を求めることができる機関であるため,一次捜査機関である警察よりも検察庁を志望します。
- 検察庁では,被疑者の逮捕から判決の執行まで一連の刑事手続きに関わることができるため,警察より検察庁を志望します。
検察庁でやりたい仕事について
検察庁でやりたい仕事についてですが,この質問も高確率で聞かれる質問になります。
ですので,人によっては志望動機の中で予め答えてもいいかと思います。
この質問によっても,検察庁の仕事の理解度が見られますので,より具体的に答える必要があります。
検察庁の官庁訪問や面接では,一般的に,捜査がやりたいと言う受験生が多いと思いますが,その場合の悪い例と良い例を見たいと思います。
- 検察官と共に捜査を行う立会事務官になりたいです。
- 立会事務官になって様々な事件捜査に関わりたいです。
この回答だと,捜査がやりたいっていうだけで具体性に欠け,ミーハー感が出てしまいます。
他の受験生と差別化するには,プラスアルファが必要になります。
では,どういったことを加えればいいか,よい例を見てみたいと思います。
- 検察官と共に捜査を行う立会事務官となり,一つでも多くの事件の真相を明らかにするとともに,犯罪被害に遭った方々に寄り添うことができる検察事務官になりたいです。
※犯罪被害者保護についての理解が必要 - ○○といった経験から,○○部の立会事務官となり,○○事件の捜査に関わりたいと思っています。
※そのように思うようになった具体的エピソードが必要
この二つの良い例は,ただ捜査をやりたいと言うのではなく,検察事務官としてどのようになりたいかや具体的にどのような事件をやりたいかについて踏み込んで答えています。
そのため,検察庁の仕事への理解度のアピールにつながると共に,志望度の高さもうかがうことができます。
他の受験生に差をつけるチャンスですので,より具体的に答えてもらえればと思います。
併願先について
公務員試験の併願先については,官庁訪問カードにも大抵書きますし,高確率で聞かれます。
併願先については,特に不利になることはないですので,正直に答えて大丈夫です。
また,併願先の中での志望順序も聞かれると思いますが,これに対する回答は,正直に答えず,戦略的に回答することをお勧めします。
例えば,以下の二つの志望順序を比較してみてください。
- 検察庁→市役所→国税庁→裁判所
- 検察庁→国税庁→裁判所→市役所
①と②を比べると,②の方が国家公務員を志望していることが伝わるかと思います。
実際は,検察庁以外の国家公務員に興味がないから検察庁に落ちたら市役所に行きたいと思っている人もいるかと思いますが,正直にそのように答えると,検察事務官になりたいという志望度も弱く思われていしまいます。
ですので,志望順はより検察庁に近しいところを高めに伝える方がいいです。
ちなみに,国税庁も裁判所も受けていない人は,法務省の出先機関・外局や,他省庁の犯罪捜査に関わる機関に官庁訪問してみてください。
- 法務省の出先機関
刑務所・法務局・更生保護委員会 - 法務省の外局
出入国管理局・公安調査庁 - 犯罪捜査に関わる機関
税関・厚生局麻薬取締部など
検察庁の仕事に近しい機関に官庁訪問をしていることで,検察庁への志望度をうかがうことができます。
ちなみに,これらの機関を志望する理由の一例として以下のようなものがありますので,参考にしてみてください。
- 法務省内組織間人事交流によって検察庁へ出向することができるため
- 副検事試験の受験資格を得ることができるため
併願先を上記のような視点で考えていると伝えることで,検察庁への志望度の高さをアピールすることができるので,参考にしてもらえればと思います。
副検事試験の受験資格については以下の記事でご確認ください。

法務省内組織間人事交流については以下の記事でご確認ください。

他の検察庁について
検察庁志望者の方は,高検管内の他の検察庁にも官庁訪問に行っていることが多いため,必ず聞かれる質問になります。
全ての検察庁で「ここが第一志望です」と答えることが正しいと思いがちですが,これは絶対的にお勧めしません。
なぜかというと,高検管内の人事課職員同士で情報共有しているからです。
私がいた高検管内では,人事課職員同士で毎年親睦会を開催していましたし,ある地検で落とした受験生を他の地検に推薦したという話も聞きますので,まず間違いなく情報共有しています。
ですので,訪問している検察庁の志望順序は正直に答えることをお勧めします。
第二志望以下の検察庁における回答例としては以下のようなものが考えられますので,参考にしてもらえればと思います。
- 第一志望は○○という理由で○○検察庁だが,御庁は非部制庁であり,職員一人で担当できる仕事が部制庁より広く,より経験を積めるため,御庁にも魅力を感じている。
- 検察事務官になることが私の志望であるため,どの検察庁も志望している。検察庁の中であえて順位をつけるなら,地元である○○検察庁の志望度が高くなるが,○○という理由で御庁にも魅力を感じている。
このように,第一志望はどこか決めた上で,第二志望以下に対しては第一志望先との比較をしたうえで魅力に感じる点を答えられれば,良い評価につながると思います。
ちなみに,私は3つの検察庁に官庁訪問に行き,それぞれ第一志望から第三志望まで正直に答えましたが,いずれも次の官庁訪問に呼ばれないということはありませんでしたね。
転居を伴う異動について
転居を伴う異動については,本庁が都市部にあり,支部も通える範囲にある検察庁ではあまり聞かれないと思いますが,支部が遠方にある検察庁では高確率で聞かれるかと思います。
これに対する回答は一択で,「大丈夫です」と答えましょう。
本当は嫌な場合でも,官庁訪問や面接ではとりあえず大丈夫ですと答えておいて,採用された後の意向調査で「希望しない」にチェックしても問題ありません。
ちなみに,本当に転居を伴う異動が大丈夫な人は,この質問を利用し,以下のように答えて積極的にやる気をアピールする手もあります。
法務省への異動や,法務省組織間人事交流による出向に行き,自身の知見を広げたいです。
ただ,転居を伴う異動は大丈夫ですと答えるより,上記のように答えることでやる気が伝わるかと思いますので,是非検討してみてください。
最近気になるニュースについて
最近気になるニュースについては,聞かれるかどうかは志望動機次第かと思います。
例えば,「私は正義感が強く」などと言っていれば高確率で聞かれるかと思います。
この質問に対しては,以下の二つの視点で回答することをお勧めします。
- 官庁訪問先の検察庁で担当した重大事件
- 検察庁でやりたい仕事に関わる事件
このように,まず大前提としてニュースになっている刑事事件であり,かつ①②に当てはまる事件を答えることにより,検察庁への志望度を補強することができます。
刑事事件以外のニュース,例えば「オリンピック」とか「新型コロナ」などのニュースを答えると,マイナスにはならないがプラスにもならないので,刑事事件を答えることを強くお勧めします。
志望度に関する質問は以上となりますので,次に受験生の能力に関する質問について見ていきたいと思います。
受験生の能力に関する質問
では次に,受験生の能力に関する質問ですが,以下のものが想定されます。
- 学生時代に頑張ったことについて
- 頑張った経験から得た能力について
- 自身の性格について
- ストレス耐性について
では,それぞれの質問について詳しく見ていきたいと思います。
学生時代に頑張ったことについて
いわゆる「ガクチカ」というやつですが,これも必ず聞かれる質問になります。
ガクチカは,受験生がどういう人物かや,検察庁でやっていけるかを見るための質問になります。
人によって,サークル活動・部活・アルバイト・ゼミ・ボランティアなど様々あるかと思いますが,エピソードの構成は以下のように作ることをお勧めします。
- 活動の目的・目標
- 苦労した点
- 苦労した点を乗り越えた方法
- 結果・成果
この構成の中の一番のキモは③になります。
苦労した点をどのように乗り越えたかを伝えることで,検察庁の仕事で問題に直面した時にも困難を乗り越えることができるとアピールすることができます。
また,この③は頑張った経験から得た能力に直結しますので,検察庁の仕事の場合にも当てはまるような方法が望ましいですね。
頑張った経験から得た能力について
頑張った経験から得た能力は,検察庁での仕事につながるものが望ましいです。
また,ただ○○という能力を得ましたと答えるよりも,以下のようにより具体的に答えることをお勧めします。
- この経験から○○という能力を得ましたが,この○○は検察庁の○○という仕事に活かすことができます。
このように回答し,具体的に話す検察庁の仕事に本当に役立つ能力を話すことができれば,自身の能力のアピールの他に,検察庁の仕事への理解度もアピールすることができます。
元検察事務官の私が思う検察事務官向けの能力や長所については,下記記事で紹介していますので,是非参考にしてみてください。

自身の性格について
次に,自身の性格についてですが,この質問も,ガクチカ同様,受験生がどういう人物かや,検察庁でやっていけるかを見るための質問になります。
質問のされ方としては,以下のようなものが考えられます。
- 自身の性格はどのようなものですか
- 長所は何ですか
- 短所は何ですか
この質問への答え方も,自身の性格が検察庁の仕事につながるかどうかの視点で答えた方がいいので,「頑張った経験から得た能力について」への回答と同様の考え方で回答を用意してもらえればと思います。
ただ,短所については,短所をそのまま答えてもマイナスになるため,長所の裏返しの形で答えることをお勧めします。
- 私の短所は,正確性を求めるあまり慎重になりすぎることです。
- 私の短所は,周りとの協調を重んじすぎる結果,自分の意見を押し殺してしまうところです。
このように,長所ととらえることができることを「~しすぎる」と言い換えることで,短所への回答で自身の能力をアピールすることができます。
ですので,短所も検察庁の仕事につながるかどうかの視点で考えた方がいいですね。
ストレス耐性について
ストレス耐性についての質問ですが,検察庁の仕事が人によってはストレス耐性が必要な仕事ですので,高確率で聞かれる質問になります。
質問のされ方としては,以下のようなものが考えられます。
- 司法解剖や現場検証など過激な仕事は大丈夫か
- ストレス解消法は何か
まず,過激な仕事についてですが,これは検察庁を志望するなら「大丈夫」と答えるしかないですね。
特に具体的エピソードも必要ないので,元気よく大丈夫と答えてください。
次にストレス解消法ですが,これは何でも大丈夫です。
検察庁が体育会系よりな組織であるため,運動系のことを話すと話が盛り上がるかもしれないですね。
ちなみに,検察庁の仕事はストレス耐性が必要と思われがちですが,市役所の方がよっぽどストレス耐性が必要ですよ。
ストレスに関しては,下記の記事を参考にしてみてください。


では,最後に逆質問について見ていきたいと思います。
逆質問について
官庁訪問や面接の最後に,「最後に何か質問はありますか?」と聞かれることがあります。
この質問への回答によって,検察庁への志望度が図られるかと思いますが,私の場合は,面接官と1対1で割とフランクな官庁訪問の際によく聞かれていました。
この質問に対する回答に答えはありませんが,検察事務官の福利厚生などを聞くことはマイナスかと思います。
私の場合は,以下のような質問をしていました。
- どういったときに検察事務官の仕事のやりがいを感じますか?
- 逆にどういったときにつらい思いを感じますか?
大体は,「被疑者を起訴できたとき」や「起訴できなかったとき」などの回答でしたので,以下のように答えて質問を終えてましたね。
- 実際に検察事務官として働かれている方の貴重なご意見を聞けて大変参考になりました。
- より一層,検察事務官になりたいと思うことができました。
この逆質問は,仕事に関することなら何を聞いても大丈夫かと思いますので,是非気になること聞いてみてください。
ただ,検察庁のホームページとかに書いてあることを聞くのは,事前に調べてきていないことが浮き彫りになるため,事前に調べて質問を用意してくださいね。
ちなみに,捜査への興味をアピールする質問として,一つ良い例がありますので,良かったら聞いてみてください。
若手検察事務官を対象に,実際に事件を配点し,取調べから事件処理までやらせてもらえる研修があると聞いたことがありますが,御庁でもやっていますか?
この研修は,副検事の志望者が少ないことから,若手検察事務官に捜査に興味を持ってもらうべく始めた取組みになります。
捜査に興味があるアピールにつながるかと思いますので,是非検討してもらえればと思います。
- 大阪地検で7~8年前に開始。
- 研修の名称は,「お試し研修」や「エストライ」など検察庁によって様々。
おわりに
今回は,検察庁の官庁訪問や面接で聞かれる質問と回答例について説明してきました。
皆さん,官庁訪問対策で志望動機やガクチカなどを作る上で,想定質問と回答例を作っていっているところかと思いますが,その参考になれれば幸いに思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。