こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今この記事を見ている方は以下のような悩みを抱えているのではないでしょうか。
市役所と地検どっちにしよう…
市役所の方が無難なのかな…
市役所ってクレーム多いのかな…
ネットやTwitter上では現職や元市役所職員の病んだ現状を目にすることがありますが、市役所と地方検察庁の両方で勤務した私の経験を基に、死ぬほどブラックな市役所職員の実態を紹介していきたいと思います。
なお、私は元検察事務官でもありますので、検察事務官の場合はどうなのかについても比較していきたいと思います。
クレーマー対応がヤバい
市役所職員として働いている中で一番ヤバかったストレスは、クレーマー対応になります。
クレーマーの代表的な主体は以下の人たちとなりますので、それぞれについて見ていきたいと思います。
- 市民
- 市外在住者
- 議員
市民のクレーム対応
クレーマーとして圧倒的に多いのは市民ですが、その理由としては行政が社会のセーフティーネットであり、いわゆる社会的弱者と呼ばれる人達を多く相手にしなければならないからです。
私の体感として9割方の市民は善良な市民ですが、残り1割のクレーマー市民のおかげで市役所職員は精神を疲弊させられるという現状があります。
クレーマーが多い部署として活保護担当課などはイメージしやすいと思いますが、国民健康保険担当課や公営住宅担当課などもクレーマーが多い部署になります。
ちなみに、クレーマーの吐く暴言としては以下のようなものがあります。
- この税金泥棒が!
- お役所仕事で融通が利かないな!
- 議員やマスコミに言いつけるぞ!
上記の暴言例は実際に私も言われたことがあるフレーズですが、いちゃもんつけてごねたら自身の要求が通ると思っているのか、断られたときに暴言を吐かれますね。
暴言を吐かれたときの市役所職員の対応としては、こちらが悪くなくても平謝りして穏便にことを収めるしかできないですね。
私は民間企業等での社会人経験があったので、クレーマー市民の対応に精神を病まずに済みましたが、新卒で市役所職員になってたらおそらく精神を病んでたと思います。
- 検察庁ではクレーム対応がほぼない。
※告訴を受理する直告担当は例外 - 暴言を吐かれたとしても毅然とした対応を取れる。
→罰金未納者は労役場に収容。
→呼び出しに応じない者は逮捕。
市外在住者のクレーム対応
次に、市外在住者についてですが、市民じゃないのにわざわざクレームしてくるのかと疑問に思った方もいると思いますが、市外在住者もめちゃくちゃクレームしてきます。
市外在住者がわざわざクレームしてくるのは以下の場合に起こります。
市役所での不祥事や住民との争いが全国ネット番組や全国紙に取り上げられたとき。
私自身も経験しましたが、全く関係がない市の話でも、叩けると思ったらわざわざ電話をかけて罵声を浴びせるクレーマーは全国にたくさんいます。
少し前の話になりますが、某市長が金メダルを噛んで問題になった際も全国各地から苦情の電話とFAXが押し寄せて、市役所職員が対応に追われたなんてこともありましたしね。
市外在住者は住民税を払っているわけでもないので本来相手にしなくてもいいんですが、さらなるクレームに発展しないように市役所職員はただただ謝るしかできないのが実情です。
検察庁には一般人からの電話はほぼかかってこない。
議員のクレーム対応
最後に、議員についてですが、私の経験上、議員は市役所職員のことを奴隷のように扱ってきますので、なまじ権力がある分、クレーマー市民よりやっかいな存在です。
特定の政党を悪く言うつもりはありませんが、弱者救済をうたっている政党所属の議員なんかは、クレーマー市民の後ろ盾になるなんてことはよくあります。
私が滞納整理業務をしていたときも、悪質な滞納者に対して次の対応に進もうとしたときに、議員から課長に要請があり、ストップがかかったということもありましたしね。
検察庁の捜査に国会議員等が圧力をかけることはできない。
※官邸からの圧力はあるかも…
また、昨今では、粗雑な議員立法によりNPO法人等が地方自治体から必要以上の公金をせしめる「公金チューチュー」なるスキームが問題となっています。
NPO法人等には議員や政党がバックについていますし、そもそも市長や知事自体がその政党に所属している場合もあるので、担当レベルではどうしようもできません。
ですので、担当者となると自身も公金チューチュースキームの片棒を担いでしまう可能性も十分あります。
この公金チューチュースキームについては、現在、東京都の若年被害女性等支援事情において問題視され、一般人により住民訴訟も提起されていますので、気になる方は「WBPC問題」や「Colobo問題」で調べてみてください。
- 市役所職員には敵(市民・議員など)が多い。
- 暴言にも耐えなければならない。
- 自身が公金チューチュースキームの片棒を担ぐ可能性もある。
では、次に、市役所職員の仕事量の多さについて見ていきたいと思います
仕事量が多すぎてヤバい
市役所職員は定時で帰れるというイメージを未だに持っている人も多いと思いますが、私の経験上、仕事量が多すぎて定時で帰れる人のほうが少ないと思います。
市役所職員の仕事量が多い理由としては以下のものがありますので、それぞれ見ていきたいと思います。
- 担当する業務の幅が広い
- 仕事が属人化している
- 突発的な仕事が多い
担当する業務の幅が広い
検察事務官から市役所職員になって驚いたことは、一人一人が担当する業務の幅が広いことです。
区役所の窓口業務や市役所内部向けの部署には必ずしも当てはまりませんが、事業を所管している部署には当てはまります。
例えば以下のような事業を行う場合、様々な分野の仕事をしなくてはならないです。
市民に対し帳票(住民税納付書など)を発送する業務の場合
- 各種業者との契約業務
→帳票作成業者・帳票印刷業者・郵便局などとの契約(見積合わせ・契約書類の作成など) - 帳票レイアウトの作成
→法令等の改正点や文言などを調べ、前年度レイアウトを修正 - 帳票に印字するデータの作成
→システムベンダーへのデータ抽出依頼・自身でのデータ加工など - 各区役所との調整
→個別対応する住人の帳票抜き取りなど - 各種業者への支払い業務
→完了検査・支出命令書の作成など
このように、一つの事業を行うにしても、契約・会計・システム・文書発送・調整業務などと幅広い分野の仕事をしなければなりません。
この業務は年に1回の季節業務になりますが、並行して日常業務もこなさなければなりませんので、住民対応や他の業務も当然担当することになります。
国家公務員は仕事内容によって部署が編成されているのに対し、地方公務員は事業ごとに部署が編成されていますので、市役所職員は事業に関わるあらゆる仕事を担当しなければならないです。
ちなみに、異動の度に蓄積した経験はリセットされるので、市役所職員の仕事はめちゃくちゃ大変ですね。
検察庁では担当業務が各課に厳密に分かれている。
- 会計・契約業務→会計課
- 文書関係業務→総務課
- 照会・回答業務→企画調査課
- システム関係業務→情報システム管理課
仕事が属人化している
検察事務官から市役所職員になって、公務員としてはあってはならないんですが、仕事が属人化していることにも驚きました。
区役所の窓口業務や市役所内部向けの部署には必ずしも当てはまりませんが、事業を所管している部署には当てはまります。
属人化とは、特定の仕事について特定の担当者しか分からない状態を指しますが、属人化には以下のようなデメリットがあります。
- 担当者の負担が重い
- 問題が可視化されにくい
仕事が属人化していると、自分以外に代わりに業務を行える人がいないので満足に有休をとることもできず、担当者の負担は大きくなります。
市役所の全ての部署がというわけではありませんが、私の最後の部署も仕事が属人化していましたので、有休を全然取れず、退職時にも有休消化することができませんでした。
また、前の担当者が業務のミスや問題点を意図的に隠して引き継ぐこともできてしまうので、爆弾ゲームのように責任を後任者に押し付けるなんてことも起きてしまいます。
実際に、私が担当のときに、何年も前から起こっていたシステムの問題が明るみになり、住民対応や記者発表対応でものすごく疲弊させられましたね。
検察庁では業務内容が法令等で明確に決まっているため、誰であっても同じ仕事ができる状態になっている。
→気軽に有休休暇を取れる。
→休職者や育休者が出てもすぐに人員補充される。
突発的な仕事が多い
市役所職員になると、様々な事情で突発的な仕事が降ってきます。
先に述べたクレーム対応も突発的な仕事の内ですが、他にも以下のような事情で突発的な仕事が降ってきますので、それぞれ見ていきたいと思います。
- 災害対応
- イベント対応(選挙含む)
- 国策対応
災害対応
最近、地震・台風・大雨などの自然災害のニュースを目にする機会が多いと思いますが、市役所職員などの基礎自治体職員は職場に緊急招集され、避難所を開設して避難住民の対応をしなければなりません。
緊急招集の基準は自治体によって異なるかもしれませんが、大雨や台風では特別警報、地震は震度5度以上が対象になると思います。
避難所設営などは避難住民のために仕方がない仕事ですが、自身や家族が被災者でも避難住民を優先しなければならない事態もありますので、市役所職員などの基礎自治体職員になる人はある程度の覚悟は必要になります。
ちなみに、配属されている部署によっては罹災者に対する減免などの措置を取らなければならないので、当日の対応だけでなく災害後の事務仕事も増える可能性はありますね。
検察事務官が自然災害で出勤しなければならない場合は、大震災で被疑者の釈放手続きを取らざるを得ない場合(例:東日本大震災)に限られるため、ほとんど起こり得ない。
イベント対応(選挙含む)
市役所などの基礎自治体では住民向けのイベントを休日に行う場合がありますが、その際は職員がボランティアとして駆り出されます。
ボランティアと言いつつ各課で何人みたいに決められている場合が多いので、実際は強制参加となります。
また、定期的に国政選挙や地方選挙もあるので、市役所職員は意外と休日出勤が多くなります。
- 採用活動を除き、検察事務官がイベント(選挙)などの対応のために休日出勤することはない。
- 日直勤務はあるが、当番制で2か月に1回程度で、仕事も定型的な業務である。
国策対応
市役所などの基礎自治体は住民との窓口になるため、国の政策によって仕事を無茶ぶりされる場合があります。
最近ではマイナンバーカードの交付や保険証との一体化、コロナ禍における給付金やワクチン接種などが挙げられます。
ニュースなどを見ていると分かると思いますが、基本的には現場である基礎自治体に丸投げで現場は混乱しますし、ミスが発生すると現場である基礎自治体のせいにされてしまいます。
ちなみに、並行して通常業務もこなさなければなりませんので、職員の負担はとんでもないことになりますね。
検察庁は準司法機関であるため、国策で突発的に仕事を振られることはない。
- 市役所職員は、災害時に自身の家族より被災住民を優先しなければならない場合がある。
- 町内会のイベントに駆り出されるなど、休日出勤が多い。
- 市役所などの基礎自治体は住民の窓口になるため、国の政策により仕事を無茶ぶりされる。
では最後に、市役所職員のキャリア選択の少なさについて見ていきたいと思います。
キャリアの選択肢が少ない
市役所職員は地方公務員になりますので、国家公務員と比べてキャリアの選択肢は少なくなります。
では、どのようにキャリアの選択肢が少ないかについて、出世と出向の2点について見ていきたいと思います。
出世は一本道しかない
市役所職員を含む地方自治体職員の出世は、所属する組織内で昇格していくしかありません。
主事→主任→係長・主査→課長・主幹→部長→次長→局長
※副市長は市長が指名し議会で選任
市役所職員のキャリアハイは局長(小規模市役所では部長)となりますが、局長になれるのはほんの一握りで、多くの市役所職員は課長にまでなれたら御の字となります。
市役所HPにアップされている「級別職員数」などのデータを見ることで、役職別の人数・全職員に占める割合などが分かります。
※私がいた政令市の課長級以上の割合は10%未満
役所内で出世していくためには、3~5年のスパンで異動を繰り返す中で着実に成果を積み上げていく必要があります。
ですので、どこかのタイミングでパワハラ上司にメンタルをやられたり、長年放置されていた問題が自分が担当のときに爆発したりすると、出世街道から外れてしまいます。
市役所職員の出世は一本道しかありませんので、出世していくためには運も必要になりますね。
検察事務官は、検察事務官としての出世(事務局長など)を目指す道の他に、副検事試験に合格して検察官を目指す道があり、最終的に弁護士資格を得ることもできる。
自治体外への出向がほとんどない
市役所職員の出向先として国・県・民間企業がありますが、ほとんどの職員は出向に行くことはなく、自治体内の勤務だけで役所人生を終えます。
元々、地方公務員になる人の多くが転勤とかしたくない人なので、この点をデメリットと感じないかもしれません。
しかし、実際に出向を希望するしないは別にして、選択肢自体が少ないということは大きなデメリットだと思いますので、キャリアの選択肢を求めるなら地方公務員より国家公務員の方が望ましいですね。
検察事務官は、法務省内人事交流(例:法務局)や他省庁間人事交流(例:国税局・在外公館)により様々な出向先がある。
おわりに
市役所職員がいかにブラックかについて長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
検察事務官を経験していたからこそ市役所職員の大変さが身に染みて分かりましたので、公務員受験生の皆さんが進路を決める上で是非参考にしてもらえればと思います。
検察事務官もブラックなんじゃないの?と思われる方もいると思いますので、是非下記記事を参考にしてもらえればと思います。