こんにちは。元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,公務員受験生にあまり知られていない副検事という職種について,詳しく説明していきます。
少し長いですが,法務省や他のブログに載っていない情報が盛沢山ですので,是非最後まで読んでみてください。
副検事とは
まずは副検事がどういった職種であるかについて説明していきます。
身分
まず,検察官の種類は5種類あり,副検事は検察官の一種になります。
- 検事総長
- 次長検事
- 検事長
- 検事
- 副検事
そのため,一定の場合を除いて,原則として,その意思に反してその官を失い,職務を停止され,又は俸給を減額されることがない裁判官に準じた高い身分保障を受けます。
では,副検事とそれ以外の検察官で何が違うのか。
それは,検事は超難関国家試験である司法試験に合格しなければいけないのに対し,副検事は法務省の内部試験である副検事試験に合格することでなれるということです。
定年
検察官の定年は検察庁法第22条で規定されていますが,63歳の誕生日の前日限りをもって定年となります。
現行の国家公務員法だと検察事務官の定年が60歳であるため,副検事となることで,検察事務官より3年多く働くことができ,その分,生涯賃金が上がることになります。
任地
副検事の任地は,地方検察庁に併置されている区検察庁に配属されます。
初任地は,原則的に,所属庁(原庁)のある高検管内以外の区検察庁に配属され,2年か3年後に原庁がある高検管内に戻ることとなります。
すなわち,原庁が東京地検の場合は,初任地は例えば大阪区検で,2~3年後に東京区検に戻り,その後は東京高検管内の異動になるということです。
ちなみに,初任地については意向調査があり,第一希望から第三希望まで希望することができますが,希望が通るかどうかは人事次第となります。
主な職務
副検事は検察官であるため,事件の捜査・公判に従事します。
副検事は区検察庁に配属されるため,基本的には簡易裁判所管轄の事件の捜査・公判に従事しますが,地方検察庁検察官事務取扱として,詐欺,強盗,過失運転致死といった地方裁判所管轄事件の捜査・公判にも従事します。
そのため,優秀な副検事は,裁判員裁判といった重大事件を担当することもあります。
ちなみに,簡易裁判所管轄の事件とは,罰金以下の刑に当たる罪や,窃盗・横領といった比較的軽微な罪の刑事事件になります。
副検事試験について
次に,副検事になるための副検事試験について詳しく説明していきます。
選考方法
副検事の選考は,年1回行われます。
試験は,まず7月上旬に各高等検察庁で筆記試験(一次試験)が行われ,筆記試験合格者に対して10月上旬に法務省で口述試験(二次試験)が行われます。
そして,口述試験に合格することで,翌年4月から副検事に任官することとなります。
ちなみに,各試験日ですが,職務免除とはならないため,有休を取得して受験しなければならず,交通費も自費になるみたいですね。
受験資格
副検事試験の受験資格は,検察庁法第18条第2項と検察庁法施行令第2条で規定されています。
司法試験に合格した者
任官予定日現在で3年以上次に掲げる公務員等の経験を有する者
- 公安職(二)3級以上等の検察事務官
※公安職(二)2級で検察官事務取扱の発令を受けている検察事務官を含む
- 行政職(一)3級以上,公安職(一)4級以上,公安職(二)3級以上の法務事務官又は法務教官
- 地方更生保護委員会の委員
- 行政職(一)3級以上の入国審査官
- 公安職(一)4級以上の入国警備官
- 裁判所調査官
- 行政職(一)3級以上の裁判所事務官,裁判所書記官,家庭裁判所調査官,司法研修所教官,裁判所職員総合研修所教官等
- 警部以上の警察官
- 行政職(一)3級以上,公安職(一)4級以上,公安職(二)3級以上又はこれらに準ずる職務の級の司法警察員(皇宮護衛官,労働基準監督官,船員労務官,海上保安官,麻薬取締官,漁業監督官等)
- 刑務官たる三尉以上の自衛官
- 行政職(一)3級以上の公正取引委員会の審査専門官
- 税務職3級以上の国税査察官
- 行政職(一)3級以上の証券取引特別調査官及び統括特別調査官
- 行政職(一)3級以上の税関の審査官及び犯則調査官
この受験資格を貰える職種のパターンとしては四つあります。
- 法務省の出先機関・外局
検察庁・法務局・保護観察所・出入国在留管理局・矯正管区・公安調査庁 - 裁判所
- 司法警察員・特別司法警察員
警察・麻薬取締部・自衛隊など - 検察庁に告発等を行う機関
国税局・金融庁・税関など
検察庁以外の併願先を決める際,副検事試験の受験資格を得られるかどうかという視点で考えることも,選択肢の一つになりますね。
- 事務官で3級になれるのは早くても30代前半のため,受験資格を得るのは30代半ば頃。
- 法務局・矯正官署,保護官署,入管官署・公安調査庁,裁判所,警察,海上保安庁,自衛隊,厚生労働省,税関などに所属する検察庁以外の公務員も副検事試験を受験できる。
試験科目
試験科目は,筆記・口述試験とも,憲法・民法・刑法・刑事訴訟法・検察庁法の5科目で,筆記試験は司法試験のような論文式試験,口述試験は,事前に紙で問題文を読んで考察し,試験管から尋ねられたことを口頭で答えるという試験になります。
筆記試験でどのような問題が出題されるか気になる方は,下記PDFで確認できます。
【参考】令和2年度副検事選考筆記試験問題(PDF)
なお,いずれの試験についても,六法全書(有斐閣)が貸与されるため,六法全書を確認しながら論述及び口述することができます。
合格発表
合格発表ですが,筆記試験(一次試験)は9月,口述試験(二次試験)は11月に発表されます。
そして,意向調査を経て,1月下旬に初任地の内示が出て,4月から副検事に任官することとなります。
副検事の給与について
ここでは,皆さんが気になる副検事の給与について説明していきます。
俸給月額
検察事務官の俸給表は公安職俸給表(二)でしたが,副検事に任官すると,俸給表が「検察官俸給表(副検事)」へと変わります。
※「検察官の俸給等に関する法律別表(第二条関係)」で規定。
号俸 | 俸給月額 |
副検事 特号 | 634,000円 |
副検事 1号 | 574,000円 |
副検事 2号 | 516,000円 |
副検事 3号 | 438,900円 |
副検事 4号 | 421,500円 |
副検事 5号 | 387,800円 |
副検事 6号 | 364,900円 |
副検事 7号 | 341,600円 |
副検事 8号 | 319,800円 |
副検事 9号 | 304,700円 |
副検事10号 | 287,500円 |
副検事11号~17号 | 省略 |
原則として,副検事の初任給は,副検事任命前の給与月額の直近上位の号に格付けされます。
副検事任官前の俸給額が35万円の場合
→副検事任官時の俸給は副検事6号
俸給月額364,900円
その後は,概ね2年半~3年毎に1号昇格していきますが,特号は決裁官など選ばれた副検事しかなれないため,多くの副検事は1級で退官することとなります。
ちなみに,どんなに捜査能力のない副検事でも,年次を重ねることで必ず1級になれます。
【例】35歳で副検事6号に任官
- 37歳で副検事5号に昇格
- 40歳で副検事4号に昇格
- 43歳で副検事3号に昇格
- 46歳で副検事2号に昇格
- 49歳で副検事1号に昇格
手当
手当についてですが,副検事も国家公務員であるため,一般の国家公務員と同様に,以下の手当が支給されます。
- 扶養手当
- 地域手当
- 広域移動手当
- 住居手当
- 通勤手当
- 単身赴任手当
- 特地勤務手当
- 寒冷地手当
これらの手当の内,扶養手当と住居手当については,副検事特号~2号になると,指定職相当のため,支給されなくなります。
手当について検察事務官と違う点は,超過勤務手当と俸給の特別調整額の支給がないところです。
すなわち,残業代と管理職手当がもらえないということです。
しかし,副検事になると国家公務員のボーナスに当たる期末・勤勉手当額がめちゃくちゃ上がりますので,どれくらい上がるか具体的に見てみたいと思います。
期末・勤勉手当
期末・勤勉手当についてですが,計算方法は一般の国家公務員と一緒になります。
※令和2年度の国家公務員の期末・勤勉手当の支給月数は4.45か月分。
しかし,副検事となることで,役職段階別加算と管理職加算でもらえる割合が大幅に増加します。
役職段階別加算
区分 | 割合 |
副検事 特号~ 7号 | 20% |
副検事 8号~11号 | 15% |
副検事12号,13号 | 10% |
副検事14号~16号 | 5% |
管理職加算
区分 | 割合 |
副検事 特号~ 5号 | 20% |
副検事 6号, 7号 | 15% |
期末・勤勉手当額例(副検事5号の場合)
- 役職段階別加算
387,800(基本給)×20%
=77,560円 - 管理職加算
387,800(基本給)×25%
=96,950円 - 期末・勤勉手当
(387,800+77,560+96,950)
×4.45=2,502,279円
※支給月数4.45か月,地域手当なしで計算。
※地域手当がある場合は,基本給と役職段階別加算に加算。
年間の支給月数をそのまま乗じる簡易的な計算で期末・勤勉手当額を算出していますが,実際の計算方法は若干異なります。
国家公務員の期末・勤勉手当の詳細については,下記記事でご確認いただけます。

副検事の年収例
副検事の年収を地域手当が20%となしの場合で計算したものを載せます。
※手当については,地域手当と期末・勤勉手当以外は考慮しない。
※期末・勤勉手当の支給月数は4.45か月分で計算。
区分 | 地域手当20% | 地域手当0% |
副検事特号 | 13,897,597円 | 11,698,885円 |
副検事1号 | 12,582,367円 | 10,591,735円 |
副検事2号 | 11,310,978円 | 9,521,490円 |
副検事3号 | 9,620,907円 | 8,098,802円 |
副検事4号 | 9,239,491円 | 7,777,729円 |
副検事5号 | 8,500,770円 | 7,155,880円 |
副検事6号 | 7,836,410円 | 6,570,937円 |
副検事7号 | 7,336,031円 | 6,151,362円 |
上記俸給月額のところでも述べましたが,副検事になると必ず副検事1号まで昇格するため,地域手当がない地域でも,必ず年収は1,000万円を超えることができます。
ちなみに,検察事務官における一番の出世は最高検察庁の事務局長で,指定職2号になるため,副検事特号より俸給は高くなりますが,定年間際にしかなれないため,生涯年収は圧倒的に副検事が上になります。
- 副検事になれば,必ず年収1,000万円以上になる。
- 検察事務官の最高峰である最高検察庁事務局長より生涯年収は上。
【参考】特任検事について
参考までに,副検事を3年経験した者は,「検察官特別考試」を受験することができ,合格すると特任検事になれます。
特任検事とは,副検事とは違い,司法試験を合格した検察官と全く同じ待遇となります。
また,特任検事を5年間経験することで,弁護士資格認定制度に申請することができ,認定されれば弁護士にもなることができます。
検察官特別考試や特任検事の待遇等については,また別の記事で詳しく紹介したいと思います。
おわりに
今回は副検事という職種について,なり方や給与等について説明してきました。
この記事を読んで副検事に興味を持った公務員受験生の方は,是非,検察事務官を志望してもらえればと思います。