全国一斉考試

【平成25年度】検察事務官等全国一斉考試の問題・解答・解説

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憲法・検察庁法

第1問

表現の自由に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 憲法21条の保障する「言論,出版その他一切の表現の自由」は,人の内心における精神作用(思想)を外部に発表する精神活動の自由を意味するので,事実の伝達を基本とする「報道の自由」は,同条の表現の自由の保障の下にはない。しかし,「報道の自由」は,憲法上の人権として保障する必要があるので,包括的基本権を定めた憲法13条によって保障される。

解答・解説

(×) 判例は,「報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき,重要な判断の資料を提供し,国民の『知る権利』に奉仕するものである。したがって,(中略)事実の報道の自由は,表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにある。」としている(博多フィルム提出命令事件,最大判昭44.11.26刑集23・11・1490,研修教材・五訂憲法112,113ページ)。

⑵ 憲法21条2項前段は,「検閲は,これをしてはならない。」と規定している。しかし,わいせつ文書図画の検閲は,頒布等の犯罪を防止するためのものであるのおで,公共の福祉による制約として許される。

解答・解説

(×) 物理的力を内包する集団行動による表現は別として,言論・出版等による表現は,たとえその結果善良の風俗に反すると認められるものであっても,検閲によって事前に規制することは許されない。しかし,表現の事後において司法権による規制が認められるのは当然である(研修教材・五訂憲法122ページ)。

⑶ 結社の自由の保障には,団体を結成し又は結成しないことにつき公権力の干渉を受けないことも含まれるが,犯罪を行うことを目的とする結社は,その保障の対象とはならない。

解答・解説

() 研修教材・五訂憲法112ページ

⑷ 集会の自由は,民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されなければならない。しかし,集会が公共の施設で行われる場合には,集会を開く集団と他の一般利用者等との利益を較量する必要がある。このような場合の規制は,公共的施設の利用という公共的・政策的目的の規制であるので,立法府の採った手段が裁量権を逸脱し,著しく不合理であることが明白な場合に限り,憲法上許されないことになる。

解答・解説

(×) 判例は,「集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受けることがある。」とし,「右の制限が必要かつ合理的なものとして首肯できるかどうかは,基本的には,基本的人権としての集会の自由の重要性と,当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである。」,「その危険性の程度としては,(中略)単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず,明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である。」としている(泉佐野市民会館事件,最判平7.3.7民集49・3・687,研修教材・五訂憲法109,110ページ)。

⑸ 「通信の秘密」とは,手紙,はがき,電報,電話など全ての方法による通信の秘密をいうが,通信の秘密の保障は絶対的なものではなく,犯罪捜査のために電話傍受を実施することは,一定の要件の下では,捜査の手段として憲法上許される。

解答・解説

() 最判平11.12.16刑集53・9・1327,研修教材・五訂憲法126ページ

第2問

参政権に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 憲法15条1項は,「公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。」と規定しているが,この規定は,公務員の任免権の源が国民にあることを示したものであり,国民が全ての公務員を選定したり,罷免したりすることを意味するものではない。

解答・解説

() 研修教材・五訂憲法178ページ

⑵ 国民が公務員を直接選定する場合として憲法が規定しているのは,国会議員の選挙,地方公共団体の長及び議会の議員の選挙であり,国民が直接罷免する場合として憲法が規定しているのは,最高裁判所裁判官の国民審査のみである。

解答・解説

() 研修教材・五訂憲法178,179ページ

⑶ 憲法15条1項は,「公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有の権利である。」と規定しているが,この規定は,立候補の自由をも保障している。

解答・解説

() 最判昭43.12.4刑集22・13・1425,研修教材・五訂憲法179,180ページ

⑷ 憲法15条4項の投票の秘密に関する保障は,選挙権のない者を保護するものではなく,かつ,選挙権のない者の投票は,当選人の当選の結果に影響を及ぼす可能性があるので,地方議会議員の当選の効力を定める訴訟において,選挙権のない者の投票が誰に投じられたかを証拠調べによって明らかにすることは許される。

解答・解説

(×) 判例は,「(選挙権を持たない者又はいわゆる代理投票をした者の投票についても)その投票が何人に対してなされたかは,議員の当選の効力を定める手続において取り調べてはならない。」と判示している(最判昭25.11.9民集4・11・523,研修教材・五訂憲法182ページ)。

⑸ 公務員の選挙における選挙人の資格について,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により差別することは憲法14条1項に反して許されないが,収入,財産,納税の有無によって制限することは,著しく合理性を欠き,明らかに裁量の逸脱と見ざるを得ないような場合を除き,立法政策の問題として許される。

解答・解説

(×) 公務員の選挙について,成年者による普通選挙(15条3項)が保障されており,普通選挙とは,選挙人の資格を,人種・信条・性別・社会的身分・門地・教育・財産・収入・納税等によって制限しないで,国民又は住民に対し一般的に選挙権を与える選挙をいう。なお,憲法44条では,「両議院の議員及びその選挙人の資格は,法律でこれを定める。但し,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収入によって差別してはならない。」と規定している(研修教材・五訂憲法181ページ)。

第3問

内閣総理大臣に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 明治憲法においては,内閣総理大臣は,国務大臣を任免する権限を有するなど,内閣の「首長」とされていたが,日本国憲法は,内閣総理大臣を他の国務大臣と同格・平等の「同輩中の首席」としており,自己の自由な裁量によって国務大臣を罷免することはできない。

解答・解説

(×) 明治憲法下にあっては,内閣も内閣総理大臣も憲法上の制度ではなく,内閣官制により,内閣総理大臣は「各大臣ノ首班」として,内閣の統一を図り,それを代表する地位が認められたが,その「首班」とはいわゆる「同輩中の首席」たる意味にすぎず,他の国務大臣と同格のものとされた。これに対して,日本国憲法は,内閣総理大臣をもって「内閣の首長」と定め(66条1項),内閣を組織し,主宰しかつ代表する強い地位・権能を与えている(研修教材・五訂憲法230ページ)。憲法68条2項は,「内閣総理大臣は,任意に国務大臣を罷免することができる。」と規定しており,ここに「任意に」とは,別段の法律的制限を受けずに,の意味であり,すなわち自由な裁量によって,の意味であると解されている(全訂日本国憲法529ページ)。

⑵ 内閣総理大臣は,国会議員の中から国会の議決で指名され,これに基づき天皇が任命する。

解答・解説

() 憲法67条,6条1項

⑶ 内閣総理大臣は,内閣を代表して議案を国会に提出する権限を有する。この議案には,条約の締結についての承認を求める議案,予算案及び法律案が含まれる。

解答・解説

() 憲法72条,研修教材・五訂憲法231ページ

⑷ 内閣総理大臣が死亡した場合,内閣は,総辞職をしなければならないが,総辞職をした内閣は,新たに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行うことができるので,国会は,必ずしも他の全ての案件に先立って新たな内閣総理大臣を指名しなくてもよい。

解答・解説

(×) 憲法71条,67条。前半は正しい。しかし,後半が誤り。内閣総理大臣の指名は,「他のすべての案件に先だって,これを行ふ。」(67条)べきことになる。

⑸ 内閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を監督し得るにとどまらず,内閣の明示の意思に反しない限り,行政各部に対し,随時,その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導,助言等の指示を与える権限を有する。

解答・解説

() ロッキード事件丸紅ルート上告審(最大判平7.2.22刑集49・2・1,研修教材・五訂憲法232ページ)

第4問

財政に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 予見し難い予算の不足に充てるため,内閣は,予備費を歳入歳出予算に計上して国会の議決を求め,内閣の責任で支出することができるが,予備費の支出については,事後に国会の承諾を得ることが必要であって,国会の承諾を得られない場合には,既に行われた予備費の支出は遡って無効となる。

解答・解説

(×) 憲法87条2項は,予備費の支出については,事後に国会の承諾を得なければならないと規定しているが,この「国会の承諾」は,内閣が行った予備費の支出についての責任を解除するものに過ぎず,国会が承諾しない場合でも,この不承諾は,内閣の予備費支出を不当としてその責任を問う意思表示であって,既に行われた予備費支出の法的効果には影響を及ぼさない(研修教材・五訂憲法279,280ページ。)

⑵ 予算について,参議院で衆議院と異なった議決をし,両院協議会を開いたにもかかわらず,意見が一致しないときは,衆議院の議決が国会の議決となる。

解答・解説

() そのとおり(憲法60条2項,研修教材・五訂憲法277ページ)。

⑶ 憲法84条は,租税法律主義の原則を明らかにしたものであるが,同条は,租税の種類のみならず,課税対象・課税標準・税率・納税義務者等の課税要件及び租税の賦課・徴収の手続を法律によって定めなければならないことを意味するものである。

解答・解説

() そのとおり(研修教材・五訂憲法275ページ)。

⑷ 憲法上,予算と法律は別個に議決されることになっているので,予算と法律の不一致が生じる場合があり得る。

解答・解説

() 憲法上,予算と法律は別個に議決されるため,予算と法律の不一致が生ずる場合がある。予算の法的性格につき予算法律説を採れば,予算と法律の不一致は,いわゆる後法優位の原則で解決し得るが,通説である予算法形式説によれば,不一致を避けることは困難であり,実際に不一致が生じた場合には,そのままでは,予算の裏付けのない法律を執行することも,法律に根拠のない予算を執行することもできないことになる(研修教材・五訂憲法278ページ)。

⑸ 会計年度が始まったにもかかわらず,予算が成立していない場合について,憲法は,新予算が成立するまでは,暫定的に前年度の予算を執行することとしている。

解答・解説

(×) 新会計年度が開始するまでに予算が成立しない場合の措置について,明治憲法は前年度予算の施行を認めていたが,日本国憲法には何ら規定はなく,財政法により,内閣は,一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し国会に提出することができ,新予算が成立したときに失効するものとされている(財政法30条,研修教材・五訂憲法279ページ)。

第5問

検察庁法に関する次の記述のうち,正しいものには〇の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 検察庁法4条の「公訴を行」う権限には,検察官が犯罪について捜査することも含まれる。

解答・解説

() 検察庁法4条,5条,6条の配列や,14条に「第4条及び第6条に規定する検察官の事務」と規定されているところをみると,捜査権は4条の検察事務とは別個の権限のようにもみえるが,犯罪の捜査は,4条にいわゆる「公訴を行う」ことの必然的な前提であるので,「公訴を行う」権限の中に捜査権は当然予定されていると解されており,6条はそれを確認するとともに,5条の事物管轄の制限を解いているものと解するのが相当であるとされている(研修教材・六訂検察庁法13,14ページ)。

⑵ 裁判所の支部がないのに,検察庁の支部だけを設けることは許されないが,逆に,裁判所の支部が設けられた場合に検察庁の支部を設けないことは許される。

解答・解説

() 検察庁法2条4項,研修教材・六訂検察庁法52ページ

⑶ 検察権は行政権の一部であるので,その行使について国の正しい行政意思が統一的に反映される必要があるとともに,検察権の行使は,国民の基本的権利義務に関するものであるので,全国的に均斉になされることが重要である。検察官同一体の原則は,このような要請に応えるものである。

解答・解説

() 研修教材・六訂検察庁法26~29ページ

⑷ 殺人事件について,区検察庁で受理し捜査することはできない。

解答・解説

(×) 検察官は,捜査に関して事物管轄の制限を受けないから,検察官事務取扱検察事務官が,区検察庁で,区検察庁検察官事務取扱検察事務官の資格において,いわゆる地方事件について弁解録取書を作成したり,告訴を受理したりすることは許される。しかし,地方検察庁で受理した事件については,区検察庁の職員がその資格において地方検察庁の事務を取り扱うことはできない(研修教材・六訂検察庁法86ページ)。

⑸ 検察事務官は,検察官の指揮下において捜査する限り,被疑者その他の者を取り調べ,供述調書を作成する権限を有する。

解答・解説

() 検察庁法27条3項後段,研修教材・六訂検察庁法83~88ページ

民法(総則・物権)

第6問

代理に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 代理行為は,その法律効果を本人に帰属させるというものであり,代理人においても,民法の一般原則どおり,行為能力者であることが必要である。

解答・解説

(×) 代理人は,行為能力者であることを要しない(民法102条)(研修教材・七訂民法I(総則)127ページ)。

⑵ かつてAから代理権ないし基本権限を与えられたことが全くないBが,盗難防止のため保管を依頼されていたAの印章を利用し,Aの代理人として振るまって,Aの土地をCに売却する契約を締結した場合,たとえCがBに代理権があると信ずべき正当な理由があっても,民法110条は適用できない。

解答・解説

() 全く代理権のない者の行為については,たとえ代理権ありと信ずべき正当な事由があっても,民法110条を適用することはできない。例えば,本肢のように,何らの権限もない者が,他人の白紙委任状や印鑑を無断使用した場合には,表見代理にはならない(研修教材・七訂民法I(総則)135ページ)。

⑶ 代理権を有しない者が代理人として締結した契約について,その相手方は,本人に対し,相当な期間を定めて追認をするかどうかを確答するよう催告することができるが,本人がその期間内に確恋しない場合は,追認をしたものとみなされる。

解答・解説

(×) 民法114条ただし書は,相手方が催告したのに対し,「本人がその期間内に確答をしないときは,追認を拒絶したものとみなす」とする(研修教材・七訂民法I(総則)141ページ)。

⑷ 無権代理人が本人を単独相続した場合,無権代理人は,無権代理行為であることを主張することは許されない。

解答・解説

() 最判昭40.6.18民集19・4・986,研修教材・七訂民法I(総則)144ページ

⑸ 代理権消滅後の代理行為については,民法112条の表見代理が成立し,その法律効果が本人に帰属するので,相手方から代理権の消滅を主張することはできない。

解答・解説

(×) 相手方の側から代理権の消滅を主張することは妨げない(研修教材・七訂民法I(総則)138ページ)。

第7問

時効に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 取得時効は,他人の物の占有につき原始取得を認める制度であるが,自己の物についても,その所有権の取得を立証するために,取得時効を援用することができる。

解答・解説

() 取得時効は,「他人の物」の占有であることが原則であるが,自己の物の所有権の立証を時効の援用によって行うことは,証拠保全の困難を救済するという時効制度の趣旨に合致することから,「自己の物」についても,過去の所有権取得の事実を立証できないときなどには,時効取得を主張することもできる(最判昭42.7.21民集21・6・1643,研修教材・七訂民法I(総則)176ページ)。

⑵ A所有名義の不動産をBが時効取得した後,AがCに当該不動産を譲渡した場合,Cは無権利者であるAから譲り受けたのであるから,たとえ登記をしたとしても,Bに対し,所有権取得を主張することはできない。

解答・解説

(×) 乙による時効完成後に,所有者甲が丙に当該不動産を譲渡した場合,甲から乙への時効による所有権移転と,甲から西への譲渡による所有権移転とは対抗関係にあり,登記の有無によって優劣が決まるとするのが判例の立場である(大判大14.7.8民集4・412,研修教材・七訂民法I(総則)178,179ページ)。

⑶ 債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は,本来の債務の履行を請求し得る時から進行する。

解答・解説

() そのとおり(最判平10.4.24判時1661・66,研修教材・七訂民法I(総則)181ページ)。

⑷ 時効の利益の放棄は,債務者において時効完成の事実を知ってこれをすることを要するので,消滅時効の完成後に時効完成の事実を知らずに債務の承認をした場合は,その後に,時効の援用をすることは許される。

解答・解説

(×) 判例は,「(時効の利益の)放棄は,債務者において時効完成の事実を知ってこれをなしたことを要し,時効完成後に債務の承認をしたからといって直ちに時効の完成を知ってしたものと推定することはできないが,いったん債務の承認をした以上,相手方において債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから,たとえ時効完成の事実を知らなくても,あとから,時効の援用をするのは信義則に反し許されない。」としている(最大判昭41.4.20民集20・4・702,研修教材・七訂民法I(総則)171ページ)

⑸ 時効の援用権者が数人いる場合,そのうちの一人が時効を援用せずに時効の利益を放棄した場合,その効果は他の援用権者には及ばないが,一人が援用すれば,その効果は他の援用権者にも及ぶ。

解答・解説

(×) 時効の援用の効果は,援用した者についてのみその効果が発生し,他の援用「権者には影響を及ぼさない。したがって,時効の援用権者が数人いる場合,そのうちの一人が時効を援用しても,その効果は他の援用権者には及ばない。また,そのうちの一人が時効の利益を放棄しても,その効果は他の援用権者には及ばない(研修教材・七訂民法I(総則)170ページ)。

第8問

物権変動に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 民法177条の「第三者」とは,登記の欠缺を主張する正当の利益を有する第三者をいい,その善意,悪意を問わないので,いかなる悪意者に対しても,登記をしなければ不動産の物権変動を対抗することができない。

解答・解説

(×) 民法177条の「第三者」は,善意,悪意を問わないのが原則であるが,判例は,単なる悪意者であるにとどまらず,およそ信義則に反するような特別な悪性事情がある者を「背信的悪意者」と指称して,このような者は,登記の欠缺を主張する正当な利益を有しないとして,同条の「第三者」から排除するものと解している(最判昭43.8.2民集22・8・1571等,研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)44~49ページ)。

⑵ AがBに土地を譲渡し,その登記がなされないうちに,Aが死亡した場合,Bは,Aの相続人Cと対抗関係に立つので,登記をしなければ,Cに対し,所有者であることを主張できない。

解答・解説

(×) 相続は,被相続人の地位が包括的に相続人に移転する包括承継であるから,相続人であるCは,原則として被相続人Aと一体とみられ,Bのために移転登記をする義務がある(研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)34ページ,研修741号74ページ)。

⑶ AからB,BからCと土地が譲渡され,いずれも未登記の場合,Cは,Aと対抗関係に立つので,登記をしなければ,Aに対し,所有者であることを主張できない。

解答・解説

(×) 不動産が転々譲渡された場合の前主は,民法177条の「第三者」には当たらず,CはAに対し登記なしに対抗できる(研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)45ページ)。

⑷ Aは,Bから土地の譲渡を受けたが,同土地上には,Cが何ら権限なく小屋を建てて生活していた。この場合,Aは,登記なくして,Cに対し,同土地の明渡しを請求することができる。

解答・解説

() 不法行為者,不法占拠者は,民法177条の「第三者」には当たらず,登記なしに対抗できる(大判大9.4.19民録26・542,研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)46ページ)。

⑸ AがBに賃貸していた建物をCに譲渡した場合,Bは民法177条の「第三者」に該当するので,Cは,同建物につき登記をしなければ,Bに対し,所有権の取得を対抗できず,賃貸人たる地位も主張することができない。

解答・解説

() 最判昭和49.3.19民集28・2・325,研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)44ページ。

第9問

抵当権に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 抵当権は,被担保債権に附従する性質を有するので,抵当権を被担保債権から分離して処分することは,いかなる場合であっても許されない。

解答・解説

(×) 抵当権は,特定の債権を担保するもので,債権から離れた抵当権は原則として認められない。したがって,抵当権を被担保債権から分離して処分することは,原則として許されない。しかし,民法は大幅な例外を認め,抵当権又はその順位を譲渡することができるし,抵当権のみを再び他の債権の担保に供すること(転抵当)を認めている(民法374条1項,376条1項,研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)163,164ページ)。

⑵ Aは,債権者Bのため,自己の所有する土地(更地)に抵当権を設定し,その後,同土地上に建物を建設した。この場合,同土地が競落されると,同建物のために地上権の設定があったものとみなされ,競落人Cは,同土地所有権につき地上権の制限を受けることになる。

解答・解説

(×) 法定地上権が成立するには,抵当権設定当時,土地上に建物があることが必要である。更地と借地権のある土地とでは評価が異なり,更地として抵当権を「設定した後に,後日築造された建物のために法定地上権が認められると抵当権者が害されるため,本事案では,法定地上権は成立しない(研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)178ページ)。

⑶ 抵当権は,不動産の交換価値から他の債権者に優先して弁済を受ける権利であるので,抵当権者は,不動産の利用について干渉できない。したがって,抵当権者は,不法占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求をすることはできない。

解答・解説

(×) 判例は,抵当権について「不動産の交換価値から他の債権者に優先して弁済を受ける権利であり,抵当権者は原則として,不動産の使用について干渉できない」との原則を確認した上で,不法占有によって「適正な価格よりも売却価格が下落するおそれがあるなど,抵当権者の弁済請求権の行使が困難になるときは抵当権侵害にあたる」と述べ,「民法423条の法意に従い,所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができると解するのが相当」と判示した。また.なお書きで,「抵当権に基づく妨害排除請求として,抵当権者が右状態の排除を求めることも許される」と,抵当権者自身への明渡し請求をも認めた(最判平11.11.24民集53・8・1899,研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)186ページ)。

⑷ 建物に設定した抵当権の効力は,特約がない限り,抵当権設定時に備え付けられていた畳や建具に及ぶ。

解答・解説

() 判例は,抵当権設定当時の従物には民法87条2項により抵当権の効力が及ぶとする(大連判大8.3.15民録25・473,最判昭44.3.28民集23・3・699判時555・43,研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)169ページ)。

⑸ 抵当権者は,債務者又は第三者が債務の担保に供した不動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができるが,そのためには,抵当権設定登記をしていなければならない。

解答・解説

() 研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)176ページ

第10問

即時取得に関する次の記述のうち,正しいものには〇の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 即時取得が認められるためには,目的物が動産であることを要するので,無記名債権については,即時取得の適用はない。

解答・解説

(×) 無記名債権は動産とみなされる(民法86条3項)が,そのうち,乗車券や劇場観覧券のように有価証券化されていないものについては,一般の動産と同じく民法上の即時取得が適用される(研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)59ページ)。

⑵ Aは,Bから借りて使用している自転車を,自己の所有物であると偽ってCに売却した。その際,Cは,Aから現実に引渡しを受けず,そのままAに貸与することにした。この場合,Cは,同自転車を即時取得することはできない。

解答・解説

() 判例は,即時取得の成立を認めるのは,一般外観上従来の占有事実の状態に変更を生じた場合に限られ,占有改定で足りるとすることはかえって一般取引の安全を害するおそれがあるとして,これを否定する(最判昭32.12.27民集11・14・2485判時138・20,最判昭35.2.11民集14・2・168判時214・21,研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)61ページ,研修743号99ページ,785号63,64ページ)。

⑶ 自動車は,道路運送車両法による登録制度があるので,登録されている自動車は,即時取得の目的物にはなり得ない。

解答・解説

() 自動車は,登録が対抗要件とされており(道路運送車両法5条1項),登録がなされた場合,即時取得の目的物にならない(研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)58ページ)。

⑷ AがB所有の山林を自己の所有と思い違いをして,その山林の草木を伐採した場合,伐採した草木は動産となるので,Aは,その草木を即時取得することができる。

解答・解説

(×) 即時取得によって保護されるのは,「取引行為によって」,「占有を始めた者」である(民法192条,研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)60ページ,研修743号96,97ページ,785号62,63ページ)。

⑸ Aは,自己所有の腕時計を勤務先の机の引き出しに保管中,同僚Bにこれを窃取された。その後,Bは,事情を知らない知人Cにこれを売却し,Cはこれを即時した。この場合,Aは,Cに対し,同腕時計の返還を請求することができない。

解答・解説

(×) Aは,民法193条の要件を満たす場合,腕時計の回復を請求することができる(研修教材・七訂民法Ⅱ(物権・担保物権)63,64ページ,研修785号65ページ)。

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刑法

第11問

責任に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 「14歳に満たない者の行為は,罰しない。」と規定している刑法41条は,14歳未満の者を一律に責任無能力者として扱う規定である。したがって,成人であっても,知能の程度が14歳未満の者と同程度の者は,一律に責任無能力者となる。

解答・解説

(×) 刑法は,心神喪失者(刑法39条1項)と刑事未成年者(刑法41条)を責任無能力者としているが,刑事未成年者についての刑法41条の規定は,14歳未満という年齢にある者について,その年齢に着目し,その具体的な精神的・知能的発育の程度を問わず,常に責任無能力者として扱ってその行為を処罰しないとするものであるので(研修教材・六訂刑法総論173ページ),知能の程度が14歳未満の者と同程度であっても,その者が成人であれば,刑法41条の適用は問題とならず,刑法39条1項,2項の心神喪失者,心神耗弱者に該当するかが問題となるだけである。したがって,この場合には,刑法39条1項及び2項についての判断基準に従って判断する必要がある。

⑵ 責任とは,違法な行為を行ったことに対する非難可能性のことである。故意犯としての非難を加えるためには,自分が行っている行為が違法であると分かった上であえてその行為をしたという心理状態にあることが必要であるので,違法性の意識がなければならない。

解答・解説

(×) 判例は,大審院以来,違法性の意識不要説に立っているとされている(研修教材・六訂刑法総論208ページ以下)。

⑶ 結果発生の危険性が非常に高い行為を行う場合,行為者には結果発生を防止すべき高度な義務が課せられるので,場合によっては,結果発生の予見可能性がないときでも過失が認められることがある。

解答・解説

(×) 過失が認められるためには,それが不注意によるものであること,すなわち,注意義務に違反することが必要である。注意義務は,結果予見義務と結果回避義務に分析されているが,法は不可能を強いるものではないので,注意義務が認められる前提として,予見可能性・回避可能性がなければならない(研修教材・六訂刑法総論217ページ以下)。

⑷ わいせつ文書頒布罪の故意が認められるためには,客体である文書が同罪にいう「わいせつな文書」に該当するとの認識が必要である。

解答・解説

(×) 構成要件要素のうち,それに該当する事実の存否の認定に当たって,裁判官の規範的・評価的な判断を要する要素を規範的構成要件要素といい,わいせつ文書頒布罪での「わいせつ」などがこれに当たる。規範的構成要件要素については,故意が認められるためにどの程度の認識が必要となるかが問題となる。最高裁は,「問題となる記載(注:客観的にわいせつと評価される記載)の存在の認識とこれを頒布販売することの認識があれば足り,かかる記載のある文書が同条所定のわいせつ性を具備するかどうかの認識まで必要としているものではない」旨判示している(最判昭32.3.13刑集11・3・997)。したがって,故意が認められるために,「わいせつな文書」に該当するとの認識までは 必要ではない。なお,この判例は,一般人であればわいせつと思うであろう記載部分の意味の認識まで不要と判示したものではないと解されている(研修教材・六訂刑法総論69ページ以下,183ページ以下)。

⑸ 故意が認められるためには,行為者が犯罪事実を認識・認容していることが必要である。したがって,刑法110条1項の放火罪の故意が認められるためには,火を放って同条所定の物を焼損することと,焼損の結果公共の危険を発生させることの認識・認容が必要である。

解答・解説

(×) 前半は正しいが,判例は,「刑法110条1項の放火罪が成立するためには,火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが,焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はないものと解すべきである」として,刑法110条1項の放火罪の故意を認めるためには,公共の危険発生の認識は不要としている(最判昭60.3.28刑集39・2・75)。「公共の危険」発生は結果責任であるから,その認識は不要とされているのである(研修教材・改訂刑法各論(その2)18,20ページ)。

第12問

共犯に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 教唆とは,犯罪の実行をまだ決意していない他人を唆して犯罪実行を決意させることをいう。したがって,AがBに対してCを殺害するよう唆す行為を行った場合において,既にBがC殺害を決意していたときは,その後,BがCを殺害したとしても,Aには殺人教唆罪は成立しない。

解答・解説

() 教唆とは,まだその犯罪に対する実行の決意をしていない他人を唆して,犯罪実行の決意を生じさせることをいう(研修教材・六訂刑法総論286ページ)ので,この場合は教唆犯とはならない。

⑵ 幇助犯が成立するためには,幇助行為によって正犯の実行行為が容易になることは必要であるが,幇助者と正犯との間の意思の連絡は,必ずしも必要でない。

解答・解説

() 幇助犯の場合に,幇助者と被幇助者との間の意思の連絡を必要とするかについて,判例は,幇助者に幇助の故意があれば,被幇助者において他人から幇助を受けていることを認識していなくとも,幇助者について幇助犯が成立するとしている(研修教材・六訂刑法総論292ページ)。

⑶ 身分犯の共犯について規定した刑法65条1項にいう「共犯」とは,狭義の共犯である教唆犯と幇助犯を意味するので,共同正犯については,刑法65条1項は適用されない。

解答・解説

(×) 判例は,65条1項の「共犯」は,教唆犯・幇助犯に加え,共同正犯も含まれるとしている(大判昭9.11.20刑集13・1514,研修教材・六訂刑法総論298ページ)。

⑷ 幇助犯における幇助行為の態様は作為・不作為を問わないので,正犯の実行行為を阻止すべき法的作為義務のある者が意図的に阻止しないことにより正犯の実行行為を容易にさせた場合には,不作為による幇助行為となる。

解答・解説

() 幇助とは,実行行為以外の行為をもって正犯を援助し,その実行行為を容易にすることであり,正犯の実行行為を阻止すべき法的作為義務のある者が,その義務に違反して故意に阻止しないことにより,正犯の実行行為を容易にさせる場合には,当該不作為は幇助行為となる(研修教材・六訂刑法総論289ページ)。

⑸ AとBがCに対してDを殺害するよう教唆することを共謀した上で,BのみがCに対してDを殺害するよう唆す行為を行い,CがDを殺害した場合には,Bのみならず,Aにも殺人教唆罪が成立する。

解答・解説

() 数人共謀の上,その一部の者が他人を教唆して犯罪を実行させたときは,直接教唆行為に携わらなかった者も教唆犯として処罰し得るとするのが判例である(最判昭23.10.23刑集2・11・1386,研修教材・六訂刑法総論287ページ)。

第13問

国家的法益に対する罪に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 公務執行妨害罪における暴行・脅迫は,職務執行の妨害となるべき程度のものであることを要するが,暴行・脅迫によって現実に職務の執行が妨害されることは要しない。

解答・解説

() 公務執行妨害罪(刑法95条1項)では,妨害の結果の発生は要件とされておらず,本罪の暴行・脅迫は,職務執行の妨害となるべき程度のものでなければならないが,それによって現実に職務の執行が妨害されたことを必要としない(研修教材・改訂刑法各論(その2)165ページ)。

⑵ 税金の滞納処分としての差押えを免れるために財産を隠匿する行為は,強制執行不正免脱罪とはならない。

解答・解説

() 刑法96条の2にいう「強制執行」とは,民事執行法に定める民事執行及び民事保全法に定める保全執行並びにこれらに準じる手続を意味し,同条の「強制執行」には,国税徴収法及び地方税法による滞納処分も含まれると考えられている。しかし,国税徴収法及び地方税法による滞納処分に対する妨害行為については,それぞれ独自の罰則が設けられており(国税徴収法187条,地方税法50条等),税金の滞納処分としての差押えを免れるために財産を隠匿する行為に対しては特別法であるそれらの罰則が適用され,本条の適用は排除されると考えられているので,税金の滞納処分としての差押えを免れるために財産を隠匿する行為は強制執行不正免脱罪とはならない。なお,この点に関し,最決昭29.4.28(刑集8・4・596)は,「刑法第96条ノ2にいう『強制執行』とは,民事訴訟法による強制執行又は民事訴訟法を準用する強制執行を指称するもので,国税徴収法に基づく滞納処分たる差押はこれを含まないものと解すべきである。」と判示しているが,この最高裁決定の判示の前提は,平成23年法律第74号による本条の改正によって変わったものと評価し得ると考えられている(検察資料[282]「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律の解説」38ページ,44ページ,研修教材・改訂刑法各論(その2)174ページ)。

⑶ Aは,現行犯逮捕され,送致のため検察庁に護送中の者である。この場合,A自身が護送担当の警察官Bに対して暴行を加えて逃走しても,Aには加重逃走罪(刑法98条)は成立しない。これに対し,第三者Cが警察官Bに対して暴行を加えてCAを逃走させたときは,Cには逃走援助罪(刑法100条2項)が成立する。

解答・解説

() Aは,現行犯逮捕されて送致するために検察庁に護送中の者であるため,加重逃走罪(刑法98条)の主体である「裁判の執行により拘禁された未決の者」(刑法97条)や「勾引状の執行を受けた者」には含まれないが,逃走援助罪(100条)の客体である「法令により拘禁された者」には該当する(研修教材・改訂刑法各論(その2)185~188ページ)。

⑷ 罰金以上の刑に当たる罪を犯したAが逮捕・勾留されている場合には,Aの身柄は既に官憲によって確保されているので,Aが第三者Bを自己の身代わりとして警察に出頭させたとしても,Aには犯人隠避教唆罪は成立しない。

解答・解説

(×) 犯人隠避罪(刑法103条)の「隠避させ」る行為とは,蔵匿,すなわち,犯人に場所を提供してかくまってやること以外の方法によって官憲による逮捕・発見を免れさせる一切の行為のことをいい(研修教材・改訂刑法各論(その2)192ページ),本犯が既に逮捕・勾留された後であっても,身代わり犯人を警察に出頭させる行為は,「隠避させ」る行為にあたる(最決平元.5.1刑集43・5・405)。

⑸ 犯行を目撃していないAが,宣誓した上,あたかも犯行を目撃したかのように犯行状況を証言した場合には,たとえ証言内容が客観的な犯行状況と一致していたとしても,Aには偽証罪が成立する。

解答・解説

() 偽証罪(刑法169条)にいう「虚偽の陳述」の意義につき,通説・判例は,「自己の記憶に反することの陳述が虚偽の陳述であり,客観的には誤りであっても記憶に忠実に述べさえすれば偽証罪は成立しない反面,記憶に反する陳述がたまたま客観的真実に合致しても本罪を構成するとする主観説を採っている(研修教材・改訂刑法各論(その2)203ページ)。

第14問

私生活の平穏に対する罪に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 住居とは,人の起臥寝食に使用される場所をいうが,そのためには,ある程度の設備は必要であるので,その設備のない野外の土管の中や橋桁の下は,たとえそこを人が起臥寝食に用いていても,住居とはいえない。

解答・解説

() 研修教材・改訂刑法各論(その1)117ページ

⑵ 一時的に起臥寝食に使用される旅館やホテルの客室は,住居とはなり得ない。

解答・解説

(×) 住居としての使用は,一時的なものでも構わないとするのが通説であり,旅館やホテルなどの客室も,起臥寝食に使用されるものである限り,その利用が短時間であっても,その滞在客にとっては住居となり得る(研修教材・改訂刑法各論(その1)117ページ)。

⑶ 借家人が賃貸借契約終了後も立ち退かずに引き続き不適法に家屋に居住している場合でも,家主が同家屋内に無断で立ち入れば,住居侵入罪が成立する。

解答・解説

() 住居は必ずしも適法に占有されたものであることを要せず,不適法な占有であっても,それが事実として成立している以上,その住居の平穏は保護されるべきである。したがって,借家人が賃貸借契約終了後も引き続いて家屋に居住している場合に,家主が無断でこれに侵入すれば,本罪が成立する。(研修教材・改訂刑法各論(その1)119ページ)。

⑷ 父母と暮らしていたAは,父母に無断で家出をしたが,半年後,生活に窮したことから,深夜,父母宅に強盗目的で侵入した。この場合,住居侵入罪が成立する。

解答・解説

() 人の住居とは,他人の住居,すなわち,自己がそこで日常生活を営んでいない住居を意味する。それゆえ,行為者自身が単独で居住する住居や,他の者と共同生活を営んでいる住居は,人の住居とはいえない。しかし,共同生活を営んでいた場所から離脱した後は,その場所は人の住居となる(研修教材・改訂刑法各論(その1)119ページ)。

⑸ 不法にA宅内に立ち入ったBは,Aに見つかり,退去を求められたが,退去しなかった。この場合,Bに不退去罪が成立する。

解答・解説

(×) 不退去罪は,真正不作為犯であり,最初は適法に又は故意なくして人の住居等に立ち入った者が,住居者等から退去を要求されたのに退去しない場合に成立する。したがって,最初から不法に侵入して退去しない場合は,侵入した時点で住居侵入罪が成立するだけであり,侵入後退去せずにいても,不退去罪は成立しないとするのが通説・判例である(研修教材・改訂刑法各論(その1)126ページ)。

第15問

財産犯に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ Aは,Bになりすまして銀行の現金自動預払機コーナーに赴き,不正に入手したBのキャッシュカードを用いて現金自動預払機から現金を引き出した。この場合,Aには,詐欺罪ではなく,窃盗罪が成立する。

解答・解説

() 詐欺罪が成立するためには,人を欺く行為が必要であり,磁石を用いてパチンコ玉を当たり穴に誘導して不正に玉を流出させたり,他人のキャッシュカードを拾得した者がこれを用いて現金自動預払機から現金を引き出したりしても,人を欺く行為がないので,詐欺罪ではなく,窃盗罪が成立する(研修教材・改訂刑法各論(その1)224ページ)。

⑵ Aは,店員Bに対し,「店の外に誰かが倒れていますよ。」とうそを言い,Bが様子を見に店舗の外に出た隙に,商品を自己の上着のポケット内に隠し入れて立ち去った。この場合,Aには,詐欺罪ではなく,窃盗罪が成立する。

解答・解説

() 詐欺罪において,「財産を交付させる」とは,欺く行為により錯誤に陥った相手方の財産的処分行為に基づいて財物の占有を取得することをいう。したがって,詐欺罪における欺く行為は,財産的処分行為に向けられたものでなくてはならず,たとえ欺く手段を用いて財物を取得したとしても,それが相手方の錯誤に基づく処分行為としてなされたものでなければ,その行為は詐欺罪を構成しない。本問では,確かに人を欺いて錯誤に陥れる行為はあるが,それは相手方の財産的処分行為に向けられたものではなく,単に相手方の注意を他にそらすためのものにすぎず,かつその錯誤に基づく相手方の処分行為が存在しないから,詐欺罪ではなく窃盗罪が成立する(研修教材・改訂刑法各論(その1)228ページ)。

⑶ Aは,販売価格2000円の商品を買うため,財布から5千円札1枚を出して店員Bに渡したところ,Bは,Aが1万円札1枚を出したものと勘違いしてAに8000円のお釣りを渡そうとした。Aは,そのとき,Bが勘違いしていることに気付いたが,そのままBから8000円のお釣りを受け取って立ち去った。この場合,Aに詐欺罪は成立しない。

解答・解説

(×) 人を欺く行為は,作為によるもののほか,真実を告知すべき法律上の義務を負う者が故意にこの義務を怠って告知せず,相手方が既に錯誤に陥っている状態を継続させ,又はこれを利用する場合のように,不作為によっても行われ得る。不作為による欺く行為といえるためには,法律上真実を告知すべき義務がなければならず,その義務は法令の規定によって認められている場合はもちろん,慣習上・条理上・契約上認められるものであっても構わないとされている(研修教材・改訂刑法各論(その1)225ページ)。

⑷ 恐喝罪における恐喝行為は,一般に人を畏怖させるような害悪の告知として行われることを要するが,この害悪の内容は,脅迫罪におけるそれのように相手方本人又はその親族に対する加害の通知に限らず,その友人・縁故者などに対する加害の通知であっても構わない。

解答・解説

() 研修教材・改訂刑法各論(その1)244ページ

⑸ 恐喝罪における恐喝行為は,違法な内容の害悪の告知として行われることを要するので,他人の犯罪事実を知る者が,捜査機関にその事実を申告する旨告知して金員を提供させても,恐喝罪は成立しない。

解答・解説

(×) 研修教材・改訂刑法各論(その1)244ページ

刑事訴訟法

第16問

逮捕・勾留に関する次の記述のうち,正しいものには〇の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 逮捕状の請求権者は,検察官と司法警察員(警察官については警部以上の者)に限られる。したがって,検察事務官あるいは司法巡査は,緊急逮捕に係る逮捕状を請求することはできない。

解答・解説

(×) 逮捕状の請求権者は,検察官及び司法警察員であるが(刑事訴訟法199条2項),緊急逮捕に係る逮捕状は,検察事務官及び司法巡査も請求することができる(刑事訴訟法210条,研修教材七訂・刑事訴訟法I(捜査)123ページ)。

⑵ 現行犯逮捕をしようとする場合において,現行犯人から抵抗を受けたときは,逮捕をしようとする者は,警察官であると私人であるとを問わず,その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され,たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても,刑法35条により,罰せられない。

解答・解説

() 現行犯人を逮捕すべく追跡中の者から依頼を受け,被追跡者が特定の犯罪の現行犯人であると知って追跡し逮捕する場合も,現行犯逮捕に当たる。逮捕までに相当時間を要した場合につき,最判昭50.4.3は,あわびの密漁犯人を現行犯逮捕するため約30分間密漁船を追跡した者の依頼により約3時間にわたり同船追跡を継続した行為は,適法な現行犯逮捕の行為といえるとした上で,「右のように現行犯逮捕をしようとする場合において,現行犯人から抵抗を受けたときは,逮捕をしようとする者は,警察官であると私人であるとをとわず,その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され,たとえその実力の行使が刑罰法令に触れることがあるとしても,刑法35条により罰せられないものと解すべきである。」と判示している(研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)125,126ページ)。

⑶ 緊急逮捕の要件の有無は,緊急逮捕当時に存在した資料によって判断され,逮捕後の被疑者の自白等逮捕後に生じた事情を疎明資料とすることは許されない。

解答・解説

() そのとおり(最判昭25.6.20刑集4・6・1025,研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)123ページ)。

⑷ 被疑者の勾留請求が却下された場合,準抗告を申し立てるとともに裁判の執行停止を求めて身柄の拘束を継続することができるが,勾留延長請求を却下する裁判がなされた場合には,準抗告を申し立てたとしても,勾留期間が満了すれば,被疑者を釈放しなければならない。

解答・解説

() 勾留期間延長請求が却下された場合,勾留期間満了前に準抗告をしても10日間を超えて勾留することはできず,勾留請求却下の場合のように,準抗告申立てとともに勾留請求却下の裁判の執行停止を求めて身柄拘束を継続することはできない(研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)142ページ)。

⑸ 被告人の勾留については,検察官には請求する権限はなく,事実上,裁判所又は裁判官に対し,職権発動を求めることができるにとどまる。

解答・解説

() そのとおり(刑訴法60条,研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)138ページ)。

第17問

捜索・差押えに関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 捜索差押許可状を請求するためには,犯罪の嫌疑があることが必要であるが,その程度は,逮捕状の請求とは異なり,「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」までは要求されていない。

解答・解説

() 捜索差押許可状請求の要件としては,被疑者が罪を犯したと思料される状況があることが必要であるが,捜索等は比較的捜査の初期の段階で行われることが多いことから,犯罪の嫌疑の程度は,逮捕状請求の場合と異なり,「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」までは要求されないと解されている(刑訴規則156条1項,研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)163ページ)。

⑵ 逮捕状の請求の場合とは異なり,捜索・差押えは,人権侵害の程度が軽微であり,また,迅速な対応が要求されることから,捜索差押許可状の請求を受けた裁判官は,捜索・差押えの必要性を審査することはできない。

解答・解説

(×) 捜索・差押えは,被処分者の権利・利益の重大な制約をもたらすものであることや,裁判官による審査を経ることを要求する令状主義の趣旨からは,裁判官は捜索・差押えの必要性を審査できると解される(研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)165ページ)。

⑶ 令状により差し押さえようとするパソコン,フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において,そのような情報が実際に記録されていることをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊するおそれがあるときは,内容を確認することなく同パソコン,フロッピーディスク等を差し押さえることが許される。

解答・解説

() 最決平10.5.1刑集52・4・275(研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)177ページ)。

⑷ 被疑者を逮捕する場合,逮捕の現場において,令状なくして捜索・差押えをすることが許されるが,刑訴法220条1項にいう「逮捕する場合において」とは,単なる時点より幅のある概念であり,逮捕との時間的接着を必要とするものの,逮捕と捜索の前後関係を問わない。

解答・解説

() そのとおり(最判昭36.6.7刑集15・6・915,研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)188ページ)。

⑸ 捜索・差押えは,捜査の初期の段階で行われることが多く,差し押さえるべき物を明示することが困難なこともあるので,捜索差押許可状を請求するに際し,差し押さえるべき物をある程度概括的・抽象的に記載することもやむを得ず,単に「本件に関係のある一切の物件」と記載することも許される。

解答・解説

(×) 差し押さえるべき物の特定は,差押権限が及ぶ範囲を捜査機関に明示し,受忍義務の範囲を被処分者に示すことによって,不当な差押えが行われないようにするために必要とされているから,差し押さえるべき物の表示についても,合理的に解釈してその物件を特定し得る程度に記載することが必要であって,単に「本件に関係のある一切の物件」という記載では特定しているとは言えない(研修教材・七訂刑事訴訟法I(捜査)166,167ページ)。

第18問

訴因変更に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 本位的訴因と併合罪の関係にある事実を予備的訴因として訴因の追加をすることは許されない。

解答・解説

() 訴因変更は無制限に許されるのではなく,「公訴事実の同一性を害しない限度」においてのみ許される(刑事訴訟法312条1項)。併合罪の関係にある事実については,公訴事実の同一性(単一性)がないから,訴因変更手続ではなく,別起訴の手続によらなければならない(研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)141ページ)。

⑵ 本位的訴因と予備的訴因がある場合,裁判所は,予備的訴因について有罪を認定したときは,必ずしも本位的訴因について判断を示さなくてよい。

解答・解説

() 裁判所は,予備的訴因について有罪を認定したときは,本位的訴因について判断を示すことは必ずしも必要でない(最決昭29.3.23刑集8・3・305,研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)138ページ)。

⑶ 過失犯の構成要件は,いわゆる「開かれた構成要件」であるので,裁判所は,犯行日時場所,被害者及び結果が同一である限り,訴因変更をすることなく,公訴事実で示された過失の態様と異なる過失の態様を認定することができる。

解答・解説

(×) 過失犯は,本来過失の態様ごとに別個の構成要件となるものであるから,過失の態様が全く異なる場合には,被告人の防御に不利益を生じ,訴因の変更を要する(研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)148ページ)。

⑷ 同一の日時場所における無免許運転の事実と,その運転中の過失により人を死亡させた自動車運転過失致死の事実とは,公訴事実としては別個の事実であるので,公訴事実の同一性は認められず,無免許運転の事実を自動車運転過失致死の事実に訴因変更することはできない。

解答・解説

() 同一の日時場所における無免許運転の事実と,これにより発生した自動車運転過失致死との事実とは,公訴事実としては別個の事実であり,事実の同一性はないから,訴因変更はできないと解されている(最決昭33.3.17刑集12・4・581,研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)145ページ)。

⑸ 検察官は,第一審の第1回公判期日の前であっても,公訴事実の同一性を害しない限度において,起訴状に記載された訴因の追加,撤回又は変更を裁判所に請求することができる。

解答・解説

() 訴因変更の時期については,制限がなく,第一審であれば,公訴提起から結審に至るまでの間いつでもできる(研修教材・六訂刑事訴訟法Ⅲ(公判)153ページ)。

第19問

自白に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 任意性のない自白に証拠能力を認める余地はなく,たとえ刑事訴訟法326条の同意があったとしても,これに証拠能力を認めることはできない。

解答・解説

() 憲法38条2項,刑事訴訟法319条1項は,不任意自白について,「これを証拠とすることができない」と定めている。このことから,不任意自白の証拠能力の否定は絶対的なものと解されている(研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)98ページ)。

⑵ 自白の任意性に関して争いが生じ,検察官がその立証を尽くしたにもかかわらず,任意性の存否がいずれとも不明である場合には,任意性がないものとされる。

解答・解説

() 任意性の存在は,自白の証拠能力の要件であるから,その挙証責任は,当該自白の証拠調べを請求する当事者にある。そして,自白を証拠として提出するのは検察官であるから,自白の任意性の挙証責任は,検察官にある(研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)96ページ)。

⑶ 刑事訴訟法301条により,自白は,犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後でなければ,その取調べを請求することができないので,冒頭手続における被告人の陳述(同法291条3項)は,自白として扱うことはできない。

解答・解説

(×) 公判廷における自白については,刑事訴訟法301条の自白の取調べ時期の制限はなく,公判廷ではいつでも被告人に発問してその供述を求めることができる(刑事訴訟法311条)。したがって,冒頭手続における認否の段階(刑事訴訟法291条2項)での被告人の陳述も自白として証拠となる(最判昭25.12.5刑集4・12・2486,研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)103ページ)。

⑷ 無免許運転における無免許の事実を認定するには,自白以外に補強証拠が必要である。

解答・解説

() 無免許運転の場合の無免許の事実については,自白以外に補強証拠が必要と解されている(最判昭42.12.21刑集21・10・1476,研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)108ページ)。

⑸ 自白の補強証拠は,本人の供述以外の証拠でなければならないので,捜査機関に対する自白をもって,公判廷における自白の補強証拠とすることはできない。

解答・解説

() 研修教材・七訂刑事訴訟法Ⅱ(証拠法)104ページ

第20問

保釈に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 裁判員裁判対象事件は,刑事訴訟法89条1号の「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」に該当するので,保釈は認められない。

解答・解説

(×) 裁判員裁判対象事件は,権利保釈の除外事由を定めた刑事訴訟法89条のうちの1号に当たる。しかし,同法90条の裁量保釈を許すことは可能である。

⑵ 被告人勾留に関する規定は,被疑者勾留にも準用されているので,被疑者についても保釈は認められる。

解答・解説

(×) 保釈は,被告人になってからの権利である(刑事訴訟法88条,207条1項ただし書)。

⑶ 保釈が許可されても,保証金(又はこれに代えることを許された有価証券,保証書)が納付されなければ,被告人は釈放されない。

解答・解説

() 刑事訴訟法94条1項,3項

⑷ 裁判所は,保釈された被告人が召喚を受けた公判期日に正当な理由なく出廷しないときは,保釈を取り消さなければならない。

解答・解説

(×) 刑事訴訟法96条1項1号

⑸ 裁判所は,犯罪の性質や情状によっては,保証金額を定めることなく,保釈を許可することができる。

解答・解説

(×) 刑事訴訟法93条1項

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徴収事務

第21問

徴収金に関する次の記述のうち,正しいものには〇の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 徴収金は,刑罰ないし制裁的要素を内容とするもの又は弁償金的性格を有するものであり,全て債権発生の原因が裁判に由来する。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説2ページ。

⑵ 徴収金に係る裁判の執行にも,一身専属の原則が適用されるが,例外として第三者による納付(いわゆる「代納」)が認められているので,第三者が納付義務者の意思に反して納付を申し出た場合でも,収納しなければならない。

解答・解説

(×) 第三者による納付については,納付義務者の意思に反して第三者から納付させることはできない(特別研修資料・八訂徴収事務解説4ページ,徴収事務規程19条1項後段)。徴収金が刑その他これに類するものである点に鑑み,納付義務者の不知の間に執行が終了することを防止する趣旨である(昭和31.3.27刑事6748号刑事局長事務代理通達(例規集1209ページ))。

⑶ 罰金又は科料に係る裁判について, 未決勾留日数を算入又は通算すべきときは,検察総合情報管理システム上の調定情報の「種別及び金額」欄には,裁判で言い渡された金額を入力し,備考欄に算入又は通算すべき金額を控除した金額を入力する。

解答・解説

(×) 罰金又は科料に係る裁判について,未決勾留日数を算入又は通算すべきときは,調定情報の「種別及び金額」欄には,算入又は通算すべき金額を控除した金額を入力する(平25.3.19刑総408号刑事局長通達別添「検察総合情報管理システムによる徴収事務取扱要領」第2,6,(2)),研修誌784号徴収事務(3)。)

⑷ 自由刑と罰金刑とが併科され,自由刑について執行猶予の言渡しがなされている場合において,未決勾留日数の法定通算があるときは,その未決勾留日数を直ちに罰金刑に通算する。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説44ページ。

⑸ 仮納付金について,督促,一部納付,納付延期及び関係機関に対する照会等を行う場合の手続については,全て一般の徴収金についての事務手続が準用される。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説137ページ。徴収事務規程43条。

第22問

徴収金の時効に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 罰金の時効の停止は,一定期間時効を進行させないことであり,既に経過した時効期間の効果は失われず,停止事由が終了するまで時効の進行が停止され,停止事由が終了すればその続きから時効が進行する。

解答・解説

() 研修780号44ページ。

⑵ 訴訟費用の時効の起算日は,その負担を命ずる本案の裁判の確定後,これに対する執行免除の申立期間の最終日の翌日であるが,同期間内に執行免除の申立てがあったときは,その申立てに対する裁判の確定した日又はその取下げがあった日である。

解答・解説

(×) 執行免除の申立期間内にその申立てがあったときは,その申立てに対する裁判の確定した日又はその取下げのあった日の翌日である(特別研修資料・八訂「徴収事務解説19ページ。)。

⑶ 債権に対する強制執行による時効が中断するためには,執行裁判所に差押命令の申請をし,その後差押命令が第三債務者に送達されることを要するが,この場合,執行裁判所に差押命令の申請をした日に時効が中断する。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説 16ページ。

⑷ 労役場留置の執行中は,刑事訴訟法505条により刑の執行に関する規定が準用されるので,同法480条又は482条各号に規定する事由があるとして検察官において職権で労役場留置の執行停止がなされた場合,罰金又は科料の時効は停止する。

解答・解説

(×) 労役場留置の執行中に,刑訴法480条又は482条各号に規定する事由があるとして検察官において職権で労役場留置の執行停止がなされた場合でも,罰金又は科料の時効は停止されない(特別研修資料・八訂徴収事務解説15ページ)。労役場留置の執行は,刑の執行に関する規定を準用する(刑訴法505条)とされているが,言い渡された刑が労役場留置という自由刑に変更されたわけでなく,あくまでも罰金や科料に係る裁判の執行方法の一つにすぎないのであって,労役場留置の執行が停止されたとしても,原則どおり,現金等で納付させることは可能である(研修780号45ページ)。

⑸ 過料の時効期間は,期間の末日の終了をもって満了するが,その期間の末日が日曜日,国民の祝日に関する法律(昭和23年法律178号)に規定する休日その他の休日に当たる場合は,その翌日が満了日となる。

解答・解説

() 研修780号46ページ。昭34検務実務家会同徴収事務関係1問答(例規集1359ページ)。

第23問

労役場留置に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 刑法18条5項の定める期間内であっても,納付義務者の承諾があれば,労役場留置の執行をすることができるが,この承諾は,納付義務者から必ずしも書面を徴する必要はなく,口頭でも差し支えない。

解答・解説

(×) 刑法18条5項の定める期間内に執行を指揮するときは,納付義務者から労役場留置承諾書を徴し,労役場留置執行指揮書にこれを添付する(特別研修資料・八訂徴収事務解説114ページ。徴収事務規程29条1項。)

⑵ 労役場留置を執行する場所は,法務大臣が指定する刑事施設に附置されている労役場であり,警察署等に設置されている留置施設で執行することは,いかなる場合においても許されない。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説117ページ。刑事収容施設法287条。

⑶ 自由刑について仮釈放となった後,引き続き労役場留置の執行をすることはできるが,この場合には,その期間は,仮釈放の期間と併進する。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説115ページ。

⑷ 労役場留置の執行については,刑事訴訟法505条の規定によって刑の執行に関する規定が準用されるので,検察官は,徴収事務規程32条による収容状の発布に際しては,刑事訴訟法485条後段により,司法警察員をして収容状を発せしめることができる。

解答・解説

(×) 刑事訴訟法第485条後段の司法警察員をして収容状を発せしめることについては,運用上これを差し控えるという趣旨で,特に規程から除外されている(特別研修資料・八訂徴収事務解説118ページ)。

⑸ 労役場留置の留置期間には,勾留期間の場合と異なり,釈放当日は留置日数に入らない。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説116ページ。

第24問

訴訟費用に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 訴訟費用の執行免除申立期間の起算日は,訴訟費用の負担を命ずる本案の裁判が自然確定した場合には確定日,上訴の放棄,上訴の取下げ等によりそれが確定した場合には確定日の翌日がそれぞれ起算日となる。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説57ページ。

⑵ (取消)

解答・解説

削除

⑶ (取消)

解答・解説

削除

⑷ 訴訟費用の連帯負担者の一人につき執行免除の決定があった場合,その他の連帯負担者は,その免除の決定を受けた者の負担部分の範囲について執行を免除される。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説63ページ(昭25.11.6検務34177号検務局長通達(例規集1262ページ))。

⑸ 訴訟費用の連帯負担を命じられた者の一人が死亡した場合,他の連帯負担者は,死亡した者の負担部分の範囲について執行を免除される。

解答・解説

(×) 訴訟費用の連帯負担者の一人が死亡した場合は,他の連帯負担者については,死亡した者の負担部分について免除されない(特別研修資料・八訂徴収事務解説63ページ,昭33.4.28刑事6699号刑事局長回答(例規集1261の2))。

第25問

徴収停止又は徴収不能決定に関する次の記述のうち,正しいものには○の欄に,誤っているものには×の欄に印を付けなさい。

⑴ 罰金又は科料に係る徴収金については,納付義務者が所在不明である場合,徴収停止の処分をすることはできない。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説127ページ。

⑵ 徴収停止は,事実上収納の見込みのない徴収金について,検察官がその裁量によって行う処分であるので,その徴収金について時効の進行を中断し,又は停止する効力を有しない。

解答・解説

() 特別研修資料・八訂徴収事務解説126,128ページ。

⑶ 徴収不能決定は,法律上又は事実上執行することが不能である徴収金について検察官が行う処分であるので,一旦徴収不能の処分をすれば,これを取り消すことはできない。

解答・解説

(×) 徴収不能決定は,検察庁の内部手続として行われるものであり,一旦徴収不能決定をした徴収金についても,その後の事情によっては,これを取り消し,いわゆる再調定の上徴収することもできる性質のものである(特別研修資料・八訂徴収事務解説131ページ)。

⑷ 納付義務者が死亡した場合には,一身専属の原則により,例外なく執行不能決定の処分を行わなければならない。

解答・解説

(×) 納付義務者が死亡した場合には,一身専属の原則により,当然その執行は不能となる。ただし,その例外として,納付義務者の相続財産に対して執行することができる場合がある(刑訴法491条。昭33.11.24刑事19772号刑事局長通達(例規集1282ページ),特別研修資料・八訂徴収事務解説132ページ)。

⑸ 納付義務者が解散した法人である場合において,その法人が無資力であるときは,執行不能決定の処分を行うこととなるが,この法人には,いわゆる事実上解散状態にある法人も含まれる。

解答・解説

(×) 解散した法人とは,法律上の解散手続をとったものをいうのであって,単に業務を停止し,いわゆる事実上解散状態にあるような場合までは含まれない(特別研修資料・八訂徴収事務解説133ページ)。

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