こんにちは。
元検察事務官の検察辞太郎(やめたろう)(@moto_jimukan)です。
今回は,私が検察事務官として実際に働いていた経験から,検察事務官の給料や各種手当などの福利厚生について,詳しく紹介していきたいと思います。
ちなみに,私のプロフィールの詳細については下記記事でご確認いただけますので,是非チェックしてみてください。

- 本記事で説明する内容は令和3年4月時点のものとなります。
検察事務官の俸給
検察事務官は国家公務員の一種になりますが,国家公務員の給料のことを「俸給」と言います。
では,具体的にどれくらい俸給が貰えるのかというと,適用される俸給表と職務の級・号俸によって決まりますので,それぞれ説明していきたいと思います。
適用俸給表
国家公務員の俸給月額については法律によって定められている俸給表で決まりますが,俸給表にも以下のように種類があり,所属する組織や職種に応じて適用される俸給表が異なります。
- 行政職俸給表
- 専門行政職俸給表
- 税務職俸給表
- 公安職俸給表
- 海事職俸給表
- 教育職俸給表
- 研究職俸給表
- 医療職俸給表
- 福祉職俸給表
- 専門スタッフ職俸給表
- 指定職俸給表
一般の国家公務員が適用されるのは行政職俸給表(一)となりますが,検察事務官も初めは行政職俸給表(一)が適用されます。
しかし,職務の特殊性から,一定年数経過後(大卒2年目・高卒6年目)から公安職俸給表(二)が適用されるようになります。
公安職俸給表(二)は行政職俸給表(一)に比べて俸給月額が約15%高くなっていますので,公安職俸給表(二)が適用されるということも検察事務官の魅力の一つとなります。
検察事務官の初任給や公安職俸給表(二)適用後の俸給月額については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

職務の級・号俸
俸給月額は適用される俸給表中に職務の級・号俸別に具体的に定められています。
例えば,検察事務官が採用されたときの俸給月額は以下のようになっています。
- 大卒程度
行政職俸給表(一)1級25号俸:182,200円 - 高卒程度
行政職俸給表(一)1級 5号俸:150,600円
職務の級と号俸は毎年の人事評価によって変わっていきますが,級が上がることを昇格,号俸が上がることを昇給と言います。
号俸については基本的に毎年昇給していき,人事評価が普通であれば4号俸ずつ昇給していきますが,職務の級については役職に応じて昇格していきますので,毎年自動的に上がっていくというものではありません。
職務の級と役職の関係については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

では,次に,検察事務官の各種手当について見ていきたいと思います。
検察事務官の各種手当
検察事務官の各種手当についてですが,国家公務員である検察事務官には様々な手当があります。
手当の種類は大きく分けて以下の6種類があります。
では,上記手当に具体的にどのような手当があるのかについて,それぞれ見ていきたいと思います。
生活補助給的手当
まず,生活補助給的手当についてですが,生活費を補助するために支給される手当のことで,以下の手当があります。
- 扶養手当
- 住居手当
- 通勤手当
- 単身赴任手当
これらの手当の内,受給する可能性の高い手当は扶養手当・住居手当・通勤手当になります。
扶養手当
扶養手当とは,配偶者・子・父母等の扶養親族のある職員に支給される手当で,支給額は以下となっています。
- 配偶者:月額 6,500円
- 子 :月額10,000円
- 父母等:月額 6,500円
この扶養手当は,後に説明する地域手当や期末手当の算定の基礎額にも用いられるため,支給対象となると月額×12か月分以上の収入増となることができます。
ですので,配偶者や子のパートやアルバイトの頑張り過ぎなどで扶養手当の支給対象外となることは避けなければなりませんね。
扶養手当の詳細については改めて別の記事で紹介予定ですので,また参考にしてもらえればと思います。
住居手当
住居手当とは,借家・借間に居住する職員及び単身赴任手当受給者であって配偶者等が借家・借間に居住する職員に支給される手当で,支給額は以下となっています。
- 借家・借間居住職員:
最高28,000円 - 配偶者等が借家・借間に居住する単身赴任手当受給職員:
最高14,000円
住居手当を受給するには,月額16,000円を超える家賃を支払っていることが必要で,家賃額に応じて住居手当の支給額は上がっていきます。
ちなみに,最高金額である28,000円を受給するためには家賃月額が61,000円以上であることが必要となります。
住居手当の受給条件や届出方法などの詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

通勤手当
通勤手当とは,通勤のため,交通機関等を利用又は自動車等を使用することを常例とする職員に支給される手当で,支給額は以下となっています。
- 交通機関等の利用者:
6か月定期券等の価格により一括支給
※1か月当たり55,000円が支給限度額 - 自動車等の交通用具使用者:
通勤距離に応じた月額(2,000円~31,600円)を毎月支給
多くの職員は通勤で交通機関等を利用することになると思いますが,通勤手当の支給額が認定される経路は最も経済的で合理的なルートで設定されます。
そのため,認定された通勤経路と実際に使用したい通勤経路が異なるケースもでてきますが,自身で差額を出して使用したい通勤経路を使用しても特に問題はありません。
ただ,念のため人事課職員に事前に相談はしておいた方がいいかもしれませんね。
地域給的手当
次に,地域給的手当についてですが,勤務地の地域の特性によって支給される手当のことで,以下の手当があります。
- 地域手当
- 広域異動手当
- 特地勤務手当
- 寒冷地手当
これらの手当の内,受給する可能性の高い手当は地域手当・広域異動手当になります。
地域手当
地域手当とは,主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給される手当で,支給額は以下となっています。
- (俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額×支給割合
支給割合については,主な支給地域別に以下の表の通りとなっています。
給地 | 主な支給地域 | 支給割合 |
1級地 | 東京都特別区 | 20% |
2級地 | 大阪市,横浜市 | 16% |
3級地 | さいたま市,千葉市,名古屋市 | 15% |
4級地 | 神戸市 | 12% |
5級地 | 水戸市,大津市,京都市,奈良市,広島市,福岡市 | 10% |
6級地 | 仙台市,宇都宮市,甲府市,岐阜市,静岡市,津市,和歌山市,高松市 | 6% |
7級地 | 札幌市,前橋市,新潟市,富山市,金沢市,福井市,長野市,岡山市,徳島市,長崎市 | 3% |
この地域手当は,毎月の俸給月額だけでなく,後に説明する期末・勤勉手当の算定の基礎額に用いられるため,地域手当の支給割合によって年収額は大きく変わってきます。
検察事務官の仕事内容はどこの地方検察庁でも概ね同じですので,給料をより重視する方は東京地検や大阪地検などの支給割合の多い地方検察庁を志望することがお勧めですね。
地方検察庁や支部毎の支給割合などの詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

広域異動手当
広域異動手当とは,官署間の距離等が60㎞以上の広域的な異動等を行った職員に対し、官署間の距離に応じ、異動等の日から3年間支給される手当のことで,支給額は以下となります。
- (俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額×支給割合
距離 区分 |
300㎞以上 | 60㎞以上 300㎞未満 |
支給 割合 |
10% | 5% |
検察事務官は基本的に採用庁内での勤務となりますが,高検・最高検・法務省などへの異動に伴い広域異動する場合がありますので,広域異動手当を受給する場合が出てきます。
ただ,地域手当が支給される場合は地域手当額を減じた割合しか広域異動手当は支給されません。
この地域手当と広域異動手当との関係についての詳細は下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

職務の特殊性に基づく手当
次に,職務の特殊性に基づく手当についてですが,役職や特殊な勤務に応じて支給される手当のことで,以下の手当があります。
- 俸給の特別調整額
- 管理職員特別勤務手当
- 特殊勤務手当
これらの手当の内,受給する可能性の高い手当は俸給の特別調整額・特殊勤務手当になります。
俸給の特別調整額
俸給の特別調整額とは,管理又は監督の地位にある職員に支給される手当で,支給額は以下となっています。
- 俸給表別,職務の級別,俸給の特別調整額の区分別に定められた額を支給
検察事務官は公安職(二)俸給表が適用されますが,公安職(二)俸給表の支給額は以下の表の通りとなります。
職務の級 | 区分 | 支給額 |
10級 | 一種 | 139,300円 |
9級 |
一種 | 130,300円 |
二種 | 104,200円 | |
8級 |
一種 | 119,100円 |
二種 | 95,700円 | |
三種 | 83,800円 | |
7級 |
二種 | 90,900円 |
三種 | 79,500円 | |
四種 | 68,100円 | |
6級 |
三種 | 78,200円 |
四種 | 67,100円 | |
五種 | 55,900円 | |
5級 |
四種 | 64,600円 |
五種 | 53,800円 | |
4級 |
四種 | 61,000円 |
五種 | 50,800円 |
俸給の特別調整額とは民間で言う管理職手当のことなので,課長級以上の職員が支給対象となります。
ちなみに,俸給の特別調整額が支給されると超過勤務手当が支給されなくなりますので,残業をすればするほど損ということになりますね。
俸給の特別調整額の支給対象者の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

特殊勤務手当
特殊勤務手当とは,著しく危険、不快、困難等著しく特殊な勤務に従事する職員に支給される手当で,支給額は従事する勤務内容によって異なります。
検察事務官が従事する可能性がある特殊勤務は,死体処理と犯則取締等の二つになりますが,支給額は以下となっています。
- 死体処理手当:
1,000円(死体の収容等)
1,600円(検視) - 犯則取締等手当:550円
特殊勤務の内容等の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

時間外勤務等に対して支給する手当
次に,時間外勤務等に対して支給する手当についてですが,名前のとおり勤務時間外に勤務した場合に支給される手当のことで,以下の手当があります。
- 超過勤務手当
- 休日給
- 夜勤手当
- 宿日直手当
これらの手当の内,受給する可能性の高い手当は超過勤務手当・宿日直手当になります。
超過勤務手当
超過勤務手当とは,正規の勤務時間を超えて勤務した職員に支給される手当のことで,支給額は以下となります。
- 勤務1時間当たりの給与額×支給割合×勤務時間数
支給割合については,平日か否か,深夜か否か,月60時間を超えているか否かによって以下のように変わります。
- 正規の勤務時間が割り振られた日における勤務
→125% - 上記における勤務以外の勤務
→135% - 午後10時~午前5時の間(深夜)の勤務
→上記+25% - 月60時間を超えた分
→150%(深夜170%)
超過勤務手当額の算定方法の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

宿日直手当
宿日直手当とは,宿日直勤務を行った職員に支給される手当で,勤務の態様応じて支給額は異なりますが,検察事務官の宿直勤務の場合の支給額は1回につき7,400円となります。
この宿直勤務については廃止していっている地方検察庁が多いですが,規模の大きい東京地検や大阪地検などは宿直勤務がありますので,説明会などで宿直勤務があるかどうか確認してみるのもいいかもしれないですね。
宿直勤務の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

賞与等に相当する手当
次に,賞与等に相当する手当についてですが,いわゆるボーナスに相当する手当のことで,期末手当と勤勉手当がありますので,それぞれ見ていきたいと思います。
期末手当
期末手当とは,民間における賞与等のうち一定率(額)分に相当する手当として6月1日及び12月1日に在職する職員等に支給する手当で,支給額は以下の計算式で算定されます。
- {(俸給+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額+役職段階別加算額+管理職加算額}×(期別支給割合)×(在職期間別割合)
期末手当の具体的な算定方法などの詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

勤勉手当
勤勉手当とは,民間における賞与等のうち考課査定分に相当する手当として6月1日及び 12月1日に在職する職員等に勤務成績に応じて支給する手当で,支給額は以下の計算式で算定されます。
- {(俸給+専門スタッフ職調整手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額+役職段階別加算額+管理職加算額}×(期間率)×(成績率)
勤勉手当の具体的な算定方法などの詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

その他の手当
最後に,その他の手当についてですが,以下の手当があります。
- 本府省業務調整手当
- 初任給調整手当
- 専門スタッフ職調整手当
- 研究員調整手当
- 【参考】旅費
これらの手当の内,受給する可能性の高い手当は本府省業務調整手当になります。
また,国家公務員の手当に含まれるかは微妙ですが,参考に旅費についても見ていきたいと思います。
本府省業務調整手当
本府省業務調整手当とは,本府省の業務に従事する職員(俸給の特別調整額が支給される職員を除く。)に支給される手当のことで,検察事務官の支給額は以下となります。
- 7級以上:41,800円
- 6級 :39,200円
- 5級 :37,400円
- 4級 :22,100円
- 3級 :17,500円
- 2級 : 8,800円
- 1級 : 7,200円
検察事務官の場合だと,法務省本省と最高検察庁に所属することで本府省業務調整手当が支給されることになります。
法務省本省や最高検への異動の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

【参考】旅費
旅費とは,出張や赴任の際の交通費や宿泊料等を補填するために支給される手当になります。
交通費などは実際に職員が支払った費用の実費支給になりますが,宿泊料などは職務の級などに応じて定額支給となります。
新規採用の配属時や広域異動時には赴任旅費(引越代など)が支給されますが,詳細については下記記事にまとめていますので是非参考にしてもらえればと思います。

また,職務で遠方に出張に行くこともありますが,その際に支給される出張旅費の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

では,次に,検察事務官の年収例について見ていきたいと思います。
検察事務官の年収例
検察事務官の年収についてですが,上記で説明した俸給に支給される各種手当を加えると1年間に支給される年収額となります。
人事院からは毎年「国家公務員給与等実態調査の結果」という資料が公表されていますが,適用俸給表別の全職員の平均額などしか記載されておらず,いまいち何年目でどれくらいの年収になるのかは見えてきません。
そこで,元検察事務官である私の経験から職務の級・地域手当の支給割合毎に年収例を算定し下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。



※4級以降については随時更新予定。
では,最後に,検察事務官の休暇制度について見ていきたいと思います。
検察事務官の休暇制度
検察事務官の休暇制度についてですが,国家公務員である検察事務官にはいろんな種類の休暇があり,休暇の種類は以下となっています。
- 年次休暇
- 振替休日・代休
- 病気休暇
- 特別休暇
- 介護休暇
- 介護時間
これらの休暇の内,多くの職員が受給するのが年次休暇,振替休日・代休,特別休暇となります。
年次休暇
年次休暇とは,毎年1月1日に20日間付与される休暇のことで,事由を問わず取得することができます。
ちなみに,新規採用職員で4月1日付着任の場合は,年次休暇は15日付与されることになります。
年次休暇は省庁によってなかなか取得できないところもありますが,検察事務官は割と自由に年次休暇を取ることができますので,プライベートを重視する人にとっても検察事務官はお勧めかなと思います。
年次休暇の取得のしやすさ等の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

振替休日・代休
振替休日・代休についてですが,土日や祝日に勤務した場合に別の勤務日を休日出勤の代わりに休むことができるという休暇制度になります。
振替休日・代休は休日出勤後8週間以内に取得することができるので,土日にくっつけて3連休を作るなどし,旅行を楽しむこともできますね。
ちなみに,検察事務官で休日出勤する場合としては,日直勤務や立会事務官の休日の取調べ対応などがあります。
立会事務官の休日出勤の内容や振替休日・代休の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

特別休暇
特別休暇についてですが,事由によって以下の種類の特別休暇に分かれます。
- 結婚休暇
- 産前産後休暇
- 忌引休暇
- 夏季休暇
など
特別休暇の内,夏季休暇に関しては毎年必ず取得することになりますが,国家公務員の場合は7月から9月の間に3日間連続して夏季休暇を取得することができます。
たった3日だけかと思われたかもしれませんが,検察事務官の場合は夏季休暇に年次休暇も合わせて長期で休む慣習がありますので,立会事務官とかだと最大で3週間も夏休みを取ることが可能となります。
ですので,毎年海外旅行に行きたい人や長期で休みたい人にとっては検察事務官はお勧めですね。
夏季休暇の詳細については下記記事にまとめていますので,是非参考にしてもらえればと思います。

おわりに
今回は,検察事務官の福利厚生(給料・各種手当・休暇制度)について紹介してきました。
給料や休暇制度などの福利厚生は進路を決めるうええ重要な判断材料の一つになると思いますので,検察事務官志望の方は是非参考にして,自身のライフプランを思い描いてもらえればと思います。
今回も最後まで見ていただいてありがとうございました。